2002年9月28日Ⅱ 責任回避の構図 [第2章 東京・営業篇]
P(プロデュサー)が作品を映画化する際の基準が、もうひとつある。原作もの。それもベストセラー作品。ちょっと考えれば100万部売れた本を映画にしたからと、100万人の客は来ない。
でも、その100万という数字だけを受け入れる。さらに小説としておもしろいからと言って、それを映像に置き代えておもしろいとは限らない。
なのに、原作ものだと企画が通りやすい。なぜ、人気タレントやベストセラー原作が必要とされるのか? そこに日本映画界の問題がある。
日本のPはほとんどが正社員。サラリーマンだ。ヒット作を出しても印税はもらえず、作家やタレントのように億万長者になることはない。
経済的成功を夢見ることはできない彼らにとって、大切なのは映画でヒットを飛ばすことより、作品の不入りで赤字を出さないことなのである。
赤字を出せば配置転換。下手すればクビ。リスクを背負ってヒットを狙っても得るものは少ない、せめて赤字を出さないようにする。そして赤字を出したときの理由を考えておく。
責任を追求されないように考える。だから、人気タレントやベストセラー原作にこだわる。
「あのブレイク中の女優が主演で、コケたんだから仕方がない・・」
「100万部売れた小説が原作で、不入りならしょうがない・・」
というのが言い訳。それなら上司から追及されても、逃げられる。だから、その2つは絶対に押さえる。それがPたちの自己防衛手段。
面白い映画を作るより、ヒットする作品を作るより、その方が大切なのである・・・。(つづく)