紀伊田辺へⅤ/理沙の夕陽 2003年7月中旬 [第6章 和歌山営業篇]
探し続けた夕陽を田辺で見つける。僕が行ったことのない場所だった。なのに、シナリオに描いたイメージ通り。夕方になると、太陽が海にまっすぐ沈む。
泣けるほど、美しい夕陽を見られるところだった。
地元の人は見慣れているせいか、立ち止まって見る人はない。が、僕は一人で、堤防に座って、1時間ほど、夕陽が沈み切るまで、見つめていた。
そんなとき、耳元で囁く声が聞こえる・・。
「これが私の夕陽だよ。悲しいとき、悔しいとき、見つめていた夕陽だよ・・」
理沙がそう言った気がした。涙が溢れる。そうか、これが理沙の夕陽だったんだ・・ずっと、ずっと、探していた。でも、ここだったんだね。
そう言いたくて振り返ったが、そこには誰もいなかった・・。
実際そんな声が聞こえた訳ではない。でも、そんな気がした。僕がロケ地を決めるのではなく、理沙が「ここだよ」と教えてくれたような思いだった。
この街で撮れる。いや、「ストロベリーフィールズ」は、この町でないと撮れない・・・・。(つづく)
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