絶望Ⅲ /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
ただ・・・・僕は・・・この町の美しさを、日本中に、いや世界中に伝えたかった・・。
「何もない退屈な町や・・・」
そう言って町を出て言った若い人たちに、映画を見せたかった・・・。
「オレの故郷は、こんなに素敵な場所やったんかあ・・」
そう思ってもらいたかった・・・。
でも、そんなこと。誰も望んでいない。生活も限界まで来ている。
しばらくは借金返済に専念。「ストロベリーフィールズ」は他の町で撮影した方がいいようだ・・・。
そう考えながら、泊めてもらっている親類の家を出た・・。
外に出ると、いつものように甍の波が続いていた。蒼い空。木造の家。土塀。その日本の風景は、あまりにも美しい。
子供の頃から見ているのに、やはり素晴らしい・・・。その感動と相反する「悔しさ」と「悲しさ」。泣きそうになる・・。
「・・・・やっぱり・・・・この風景を撮らずに、諦めるのは・・悔しい・・・悔しい過ぎる!! 僕は・・・やはり、この町で・・・映画を撮りたい!」
(つづく)
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