破れた夢/2005年3月 [第22章 絶望の連続篇]
深夜まで会社で働く彼を待って、夜中の六本木で会った。
「どうせ、食えないでいるんだろう?」と、居酒屋で御馳走してくれた。そこで僕がひたすら食べていると、彼はこんな話をした。
「学生時代。俺のまわりにいる友達は皆、夢を持っていたよ。写真家になりたい。俳優になりたい。小説家になりたい。ギターリストになりたい。
結局、みな夢破れて行った。結局、誰も夢を実現できなかった・・。それでも、俺から見ると羨ましかった・・。
追う夢があるだけで凄いと思ってた。俺は特になりたいものはなかったから、平凡な会社員になった。
でも、サラリーマンも楽じゃない。嫌なことがいっぱいある。そんな日常を送っていると、何かをなくしていくような気がするんだ。
夢なんてなかったけど 、若いころは何か熱い思いがあった。何かできるはずだという気持ちがあった・・。
けど、毎日、同じ仕事を繰り返していると、そんな熱さをどんどん忘れて行く。大切なものをなくして行く気がする・・」
<つづく>