地元で俳優探し(7)北野武監督のキャスティング法 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
そんなふうに見た目だけでなく、その人の雰囲気が「いかに他の役に影響するか?」もキャスティングでは大切な要素だ。
以前の作品で、若いプロデュサーが言う。
「●●という俳優が、この役に合うと思うんですよ!」
何度も推薦して来たことがある。が、いずれもプロフィールの写真を見ると、見たまんま!という俳優ばかり。全部却下した。第三の選択肢である「他のキャラへの影響」を全く考えていない。
そんな目先のことしか考えないキャスティングをすると、ドラマの奥行きや広がりがなくなる。
「ソナチネ」「HANA-BI」等で、今や「世界のキタノ」と呼ばれる北野武監督。
彼がヤクザの組員をキャスティングするときの話。
「ヤクザ10人!」というと、助監督は見るからして、いかにもヤクザ!という俳優を10人連れて来た。
そこで北野監督。次からは、こう言った。
「サラリーマン10人!」
俳優が集まってから、俳優にこう言う。
「君たちはヤクザの組員の役です!」
助監督は驚いたらしい。
「今時、いかにもヤクザらしい格好をしたヤクザなんて、数少ない。なのに映画界では未だにヤクザというと、見た目分かり易いタイプを集めてしまう!」
北野監督はそういう。
非常によく分かる話。先の若いプロデュサーもそうだったが、不良というといかにも不良。先生というといかにも真面目。
そんなステレオタイプのみでキャスティングしたがる。が、それではドラマに奥行きも広がりも出ない。
演出は俳優選びからスタートしている。今回もそれに注意して選ぶ。
<つづく>
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