死神役・オーディション(3)ザ・役者! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
その俳優さんは、沈黙し、考え始めた。急に顔付きが変わる。
それまでは初対面で、他のスタッフにも気を使いながら話していた。
それが日常の仮面を突如、脱ぎ捨てて、いつものザ・役者の顔を見せたように思えた。
その気迫。その集中力。この人は出来る・・・。
空手の達人は日頃、さして強そうに見なくても、空手着を着ると全く雰囲気が変わる。
剣の達人は竹刀を握ると殺気が渦巻く。
ギターリスだってドラマーだって同じ、まだ演奏していないのに、この人は凄いと分かる。 俳優さんは言う。
「5分ほど、時間もらえませんか?」
僕は席を外し、スタッフルームに行って、中断していた打ち合わせを再開する。
クランクインが近づいて来ると監督は、いくつもの仕事を同時にこなさねばならず、回線がショートしそうになる。
ここで先ほどの条件を、もう一度確認しておく。
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!