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第二二章 涙の本読み篇 ブログトップ
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東亜優の到着!(下)2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 東亜優は現在14歳の中学生。和歌山県内の中学に通う。

 映画出演どころか、演技は初挑戦。メインキャラの1人を演じる。

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 が、この日の東は「嬉しい!」とか「不安・・・」という気持ちも実感できないようで、「ただただ呆然・・・」という感じ。まだ、自分のこととは思えないようだ。

 しかし、東の役割は本当に重要。おまけに新人。なのに、本読みに間に合わなかった。このことは非常に不安。

 これが他の3人も同じレベルなら、まだ一緒にがんばっていける。が、先の本読みは白熱。

 皆、キャラクター作りもすでに出来ていて、本読みどころか本番さながらなの感動的な芝居となった。

 もの凄く高いレベル。その辺の10代の女優とは明らかに違う。そこに新人の東が入って大丈夫なのか? 

 1人だけレベルが違うことで、全体が崩れることもある。でも、僕が感じている東の秘められた力を信じたい。

 今、本人は実感なく、なんで自分がここにいるのか?よく分からずキョロキョロしている東だが、やがて、秘めた力を発揮してくれるはず。

 ただ、それをどうやって引き出すかである・・・。

(つづく)



*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!


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東亜優の到着!(上)2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 美香役の東亜優が到着したのは、本読みが終わってからだった・・・。

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 前の仕事がかなり押したらしい。凄く疲れた顔でやって来た。

 シナリオも今日もらったばかり、読んでいないという。

 が、まず、お祝い。

 「おめでとう! 映画『ストロベリーフィールズ』の美香役は東さん。あなたになりました!」(自分で選んでおいて、ヘンないい方だけど・・)

 でも、まだ、実感はないようなので、キョトンとしている。さらにこう言った。

 「大阪でオーディションしたとき、駄目だと思ったでしょう?」

 そういうと、ようやく実感を持ったようだ。

 「私だけ台詞を2度読まされるし、学級委員の経験はないし。絶対にダメだと思ってましたよ~!」

 そう笑顔で答えた。そのあと衣裳合わせをし、宿題ビデオと梅干を渡し、とにかくシナリオを読むようにと伝えた。

 が・・・。


(つづく)



*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!


タグ:東亜優
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涙の本読み(20ー終)恐るべき子供たち    2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 谷村美月たちは、片方では観客として物語に感動。片方では俳優として、最後まで演じ続けようとした・・。

 本当に凄い子たちだと、感じる。

 波岡一喜君は、少女たちの暴走(?)に少々驚いたようだ。普通の本読みはここまでしない。

 「でも、そんな暴走少女たちをサポートし、引っ張って行くのがオレの使命やろなあ・・」

 と理解してくれたようだ。さすが!「パッチギ」

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 僕にすれば、実は佐津川たちは演技者でありながら、最初の観客でもある。

 その役に成り切るとき、そこで悲しみや感動を感じなければならない。それができなければ、この物語は失敗だ。

 多くの大人たちは「今時の10代はこんなじゃない!」と言っていた。が、肝心なのはオヤジたちの意見ではなく、今の10代が泣けるということ。

 それが今回、見事に証明された。

 「ストロベリーフィールズ」と言う物語を読み、感受性豊な少女たちが号泣。

 「これは映画として絶対に行ける!」という喜びと、

 「この素晴らしい少女たちと、撮影をし、一緒に映画を作って行ける」ことの嬉しさでいっぱいだった。

 佐津川愛美、谷村美月、芳賀優里亜、そして本読みには、間に合わなかった東亜優。そして少女たちの優しき兄貴分・波岡一喜! このメンバーで田辺ロケに行く!

 (つづく)



*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!



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涙の本読み(19)涙・・・2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]


 「さあ、みんな。どうだったかな?」

 僕がそう聞くと、谷村美月が涙を拭きながら、一番に答えた。

 「・・・自分で・・やりながら・・・泣いてしまったぁ~」

 とまた涙を流す。その泣き顔は、とってもとっても素敵だった。

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 次に聞いたのが芳賀優里亜。もう、言葉も出ないと言う感じ。だが、何とか答える。

 「・・・・・友達って・・・いいですね・・・・」
 
 そして、佐津川愛美。赤い目で答える。

 「・・・・・感動しました・・・」

 芳賀も、佐津川も、素敵な子だと思えた。そして、この子たちはちゃんとテーマを理解し、それを受け止めていた。

 それぞれの見せ場、理沙の夕陽。高台のマキ。それを見送る夏美。

 みんな自分の立場を理解し、それぞれと戦いながら、ドラマを盛り上げた・・・。

(つづく)

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!




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涙の本読み(18)青春の輝き 2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 ここで音楽スタート。ラジカセをオン!「青春の輝き」が流れ出す・・・。

 最後のト書きも、僕が読んだ。

 「マキが向こうでシャボン玉をしていたが、手を振り駆けて来る。そして抱き合って喜ぶ。振り向くと今度は美香が駈けて来る。

 手を取り合って喜ぶ。後ろには冷めた笑顔の理沙。イチゴを摘むと歩き出す。

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 美香、8ミリカメラをまわす。理沙、カメラを借りて夏美を撮影。難しいな?という顔。

 風に舞うシャボン玉。マキ、イチゴを摘んで食べる。理沙、髪を掻き上げながら夏美に語りかける。 
 
 夏美は、仲間に囲まれて本当に嬉しそう。広がる青空が四人をいつまでも見守っていた・・・(了)」

 シナリオは最後まで読んだ。

 でも、誰も何も言わない。立ち上がる者もいない。少女たちは、声を上げて泣いている。

 感動がその部屋を包んでいた。素晴らしい芝居を見たとのように、誰も口を聞かす、その余韻に浸っている。

 カーペンターズの「青春の輝き」だけが、優しく流れていた。スタッフも誰も、「さて!」と言い出さず、ティッシュを取り出す。或いは腕を組んで考え込んでいる。

 佐津川愛美は、何度もハンカチで涙を拭う。谷村美月、まるで泣かされた子供のようだ。

 打ちのめされたかのように動かないのは芳賀優里亜、必死に涙を堪えていた。

 波岡一喜、その3人を優しく見つめている・・。

 カーペンターズの歌が終わり、部屋には静寂が訪れた。僕は、3人娘に声をかける・・・。

(つづく)

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!




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涙の本読み(17)涙が溢れる・・ 2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 佐津川愛美も谷村美月も、ボロボロに涙を零しながら、涙声で台詞 を読み続けた。

 いや、もう読んでいるのではない。叫び続けているという感じだ。聞いている方も涙が溢れる・・。

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夏美(佐津川)「(顔を上げる)・・・」

マキ(谷村)「お前は絶対に死ぬなよ! 百歳まで生きるんだぞ!」

夏美(佐津川)「(涙が止まらない)」

マキ(谷村)「私の分もしっかり生きるんだぞーー!美香や理沙の分も想い出を作るんだぞぉーーーーーー!」

夏美(佐津川)「マキーーーーー!」


 芳賀優里亜はすでに台詞がなく、聞く側にまわっていたが、彼女もまた大粒の涙を拭きながら打ちのめされたように動かない。

 男性スタッフも素知らぬ顔で、頬を掻くような振りをして涙を拭く。かくいう僕も必死で涙を堪えていた。そしてエンディング。ト書きを読んだ。
 
 「夏美、草原の中を走って来て立ち止まる。カーペンターズの「青春の輝き」風歌 が流れ出す」

 ここで音楽スタート。ラジカセをオン!「青春の輝き」をかける!

(つづく)

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!




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涙の本読み(16)マキとの別れシーン 2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 そして、クライマックス。マキの母が住む高台。夏美とマキの別れ。

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夏美(佐津川)「マキ。行かないでぇ(と絶望で顔を地面に伏せる)」

死神(助監督)「・・・・・・・・・(躊躇し、止まる。そして振り向く)」

マキ(谷村)「(死神を見つめる)」

死神(助監督)「・・・・・・・・(頷き、マキに夏美の方を向かせる)」

マキ(谷村)「(その意味を理解して、夏美に叫ぶ)夏美―――お前がいてくれてよかったぞーーーー!(涙が溢れて来る)」

 このシーン。壮絶な展開となった・・・・。


(つづく)

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!

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涙の本読み(15)理沙との別れシーン 2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 完全に「本読み」ではなくなっていた・・。

 まるでラジオ・ドラマを聴いているかのようだ。いや、違う。声だけを聴いているのに、その場面さえも感じられる・・。
 
 スタッフは物音ひとつ立てず、真剣に佐津川愛美たちの声に耳を傾けた。いや、これも違う、耳を傾け、集中して聞かずにはいられない迫力と引き込む力があった。

 佐津川愛美と、谷村美月と、芳賀優里亜の台詞は、まるでジャズのセッションのように交差し、競い合い、盛り上がる。

 1+1+1=3のはずが、1×1×1=10になるかのような勢いだ・・。

 再び、佐津川愛美の台詞!

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夏美(佐津川)「理沙!あなたとは、まだ話したいことがあるの!」

マキ(谷村)「(起き上がってきて、砂時計を取り出す)オレの残り時間を半分、理 沙に上げてくれ!一緒にやりたいことがあるんだ!」

死神(助監督)「・・・(どんどん歩いて行く)・・・・・・」

マキ(谷村)「(すがりつく)頼む!」

死神(助監督)「・・・・・・(マキを振り払う)」

理沙(芳賀)「夏美。あなたがマキを守るのよ! マキに想い出を作らせて上げるのよ!」

 俳優たちを見ると、鼻をすすりながら、溢れる涙を堪えながら台詞を読んでいた。スタッフからも鼻をすする音が聞こえて来る。

 そして、クライマックス。マキの母が住む高台。夏美とマキの別れの場面となる・・。


(つづく)

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涙の本読み(14)美香との別れシーン 2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

 少女たちが死神に連れ去れるシーンは、「スターウォーズ・エピソード2」の「愛のテーマ」を流した。

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 芳賀優里亜の台詞が始まる。

 理沙(芳賀)「私には会いたい人も、行きたい場所もない・・・だから、先に連れてって・・」

 ト書き(太田)「死神、理沙を持ち上げて、壁にぶつける。そして美香を引っ張って行く。マキ、起き上がって、止めようとするが駄目。

美香(助監督)「(引きずられて行く)マキーーー。行きたくない!」

夏美(佐津川)「美香――――――!」

美香(助監督)「みんなと一緒にいたい!(涙が止まらない)・・行きたくない・・・」

マキ(谷村)「美香ーーー!(涙ぐむ)・・・」
 
 「愛のテーマ」がせつなくも、美しく盛り上げるので、台詞読みにも力が入る。もう、この辺から、本読みではなくなっていた。

 佐津川たちは当初「こんな感じかな? これでいいのかな?」という感じで台詞を読んでいたが、もう、越えている。

 夏美そのもの。マキそのもの。理沙そのものである。涙をこらえながら、台詞を読む。それを聞いている方も胸が締め付けられる。

 佐津川愛美や谷村美月は、本読みの声ではない。涙声で叫び続ける。芳賀優里亜もクールな理沙を意識しているが、声が震えていた。

 そして、次のクライマックス。理沙との別れ。夕陽のシーンに来ると、さらなる盛り上がりを見せた!

 (つづく)

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涙の本読み(13)「エピソード2」愛のテーマ 2005/9/9 [第二二章 涙の本読み篇]

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 ト書き以外で、その場にいない俳優さんの台詞は、助監督さんに読んでくれる。

 30代の男の声で、10代の女の子の台詞を読むと、あちこちで笑いを堪える人たちが続出。が、それも次第になくなって行く。

 俳優たちは、キャラを模索したり、物語のあり方を気にすることなく、役になり切っている。 
 
 「本読み」のはずだが、完成された舞台を見ているような気分になる。スタッフもいつしか観客となり、佐津川愛美や谷村美月。そして芳賀優里亜の台詞に聞き入っていた。

 そして、少女たちが死神に連れ去れるシーンは、「スターウォーズ・エピソード2」の「愛のテーマ」を選んだ。

 いよいよ、美香が連れて行かれる。僕はラジカセのボタンを押す。

 ジョン・ウイリアムス指揮によるロンドンフィルハーモニー楽団の演奏による「愛のテーマ」が流れ出した・・。

 悲しくも美しいメロディ、その曲に合わせて芳賀優里亜の台詞が始まる!

(つづく)

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと8日!


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