手直しした物語(1)3人バラバラ作戦? 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
考えついたアイディア、チーフに話した。
現在のシナリオ。夏美とマキたち4人は、想い出の場所を訪ねて町を彷徨う。
実家、河原、父の働く工場、海、そして学校。それぞれの場所に、それぞれの想い出がダブる。
全員が一緒に行動。夏美がいないと、幽霊の少女たちは、誰とも話すことができないからだ。
新たなバージョン。マキと理沙のケンカをきっけに、バラバラに行動するという展開に変更する。
それぞれが、1人でそれぞれの想い出の地を訪ねる。
それによりスケジュール問題が、まず解決する。
撮影日が足りないのではないのは、4人が一緒にいるシーンが多いから。
もともと撮影は余裕がある。
上の展開なら、A子がいないときは、B子。B子がいないときは、C子の単独の撮影ができる。4人一緒の撮影日が大幅に減る。
ただ、真面目なチーフは、こう言うだろう。
「また、スケジュールのために言ってんだろう?」
が、そうではない。このあとの展開。我ながら、「よく思いついた!」と感じるものだ。
(つづく)
「スケジュールのためなら、受け入れられない」 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
「チーフ。例のスケジュール問題。解決してないですよね?」
「してない! でも、もう少し考えてみる・・」
「実は、僕も考えたんですが、4人一緒のシーンを直そうと思うんです」
「・・・監督。もしかしたら、スケジュールのこと心配して、無理にシナリオを直そうというんじゃないよね?
それならやめてほしい! こちらで何とか考えるから」
グッと来た。本当に大した人だ。頭が下がる。
「いや、違うんです。もし、スケジュール問題がなくても、直したい部分です」
「・・・・・・・もし、それが本当で、シナリオがよくなることなら、賛成。
でも、スケジュールのために直すなら、受け入れられない・・・」
映画魂のある、そんなチーフに、考えたプランを話した・・。
(つづく)
「してない! でも、もう少し考えてみる・・」
「実は、僕も考えたんですが、4人一緒のシーンを直そうと思うんです」
「・・・監督。もしかしたら、スケジュールのこと心配して、無理にシナリオを直そうというんじゃないよね?
それならやめてほしい! こちらで何とか考えるから」
グッと来た。本当に大した人だ。頭が下がる。
「いや、違うんです。もし、スケジュール問題がなくても、直したい部分です」
「・・・・・・・もし、それが本当で、シナリオがよくなることなら、賛成。
でも、スケジュールのために直すなら、受け入れられない・・・」
映画魂のある、そんなチーフに、考えたプランを話した・・。
(つづく)
降臨? 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
これが「霊が降りて来た」というやつか!
スケジュールの件。バスタブで、お湯に浸かっていたとき。稲妻に打たれたように、思いついた。
映画の各シーンには必ず意味がある。大きなテーマを築いて行く上で、役割がある。
石垣を築くようなもので、たくさんあるからと、1つを抜いてしまうと全てが崩れる。それが物語というもの。
それをもう一度、確認していて、あることに気づいた。
そのアイディアをあらゆる角度から、見つめる。何度も頭から考え、他のシーンとの兼ね合いを検証。
行ける! 風呂に入ったまま、携帯でチーフに電話した!
(つづく)
スケジュールの件。バスタブで、お湯に浸かっていたとき。稲妻に打たれたように、思いついた。
映画の各シーンには必ず意味がある。大きなテーマを築いて行く上で、役割がある。
石垣を築くようなもので、たくさんあるからと、1つを抜いてしまうと全てが崩れる。それが物語というもの。
それをもう一度、確認していて、あることに気づいた。
そのアイディアをあらゆる角度から、見つめる。何度も頭から考え、他のシーンとの兼ね合いを検証。
行ける! 風呂に入ったまま、携帯でチーフに電話した!
(つづく)
誇り高き男 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
数日が経った。スケジュール問題はそのまま。チーフはまだ悩んでいる。
3週間の撮影スケジュール、延ばすことはできない。俳優側の予定も変えられない。
チーフがこう言って来るかも・・。
「悪いんだけど、やっぱりシナリオ。4人一緒のシーンを少し切ってもらえないか?」
でも、そんな連絡はない・・。黙々と考え続ける。あらゆる可能性を検討していた。凄い人だ・・。
映画関係者の中には問題が起こると、努力し解決しようとせず、自分に責任があるのに、安易にシナリオを直させることで済まそうとする輩が多い。
それは結局、作品レベルを落すことになる・・。責任を果たさない上に、作品を歪める。とんでもない話だ。
友人の監督、似たよう経験をした。
プロデュサーが予定した製作費を集められなかった。その尻拭いのため、シナリオを短くしろと命令された。その上に、監督料をゼロにされる。
でも、金を集められなかったP、しっかり興行収益を確保。監督が持つ権利まで持って行こうとした。そんなヤツ、多い。
シナリオに関して今回は、極限まで短くしている。これ以上短縮するのは不可能。あとは、クオリティを落とすどころでは済まない。
物語自体が破綻し、つじつまが合わなくなる。
チーフはそれを理解している。プライドもある。だから、口にしない。強い責任感を持つ、本物のプロだ。
が、何か方法はないか? 僕も考えた。
自宅で仕事をしていた日。朝から風呂で考えた。夏美、マキ、理沙、美香。4人。ロケ地。スケジュール。河原。学校・・・・。
何かを感じる・・・もしかしたら・・。
(つづく)
演出部のプライド 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
解決する方法は、ひとつ・・・。
4人が揃って出演するシーン、減らすこと。
でも、この数ヶ月で、2度もシナリオを短くしている。
1度目は・・・。
「今の製作費で、このシナリオ内容を撮りきれない!」といわれたとき。
「このシナリオで行こう! 予算は***円」と決めてスタート。
なのに、あとになって「この予算では無理!」といい出した人がいた。
そのために大幅にシナリオをカット。短くした。
2度目・・・、
直前にあるスポンサーから、製作費が出なくなったとき。
「製作費が足りない。だから、シナリオを短くしろ!」
尻拭いをシナリオに持って来た。
すでに短くした物語をさらに短くしろという。減量したボクサーに試合直前、もっと痩せろというようなもの!
通常なら物語が破綻。感動するどころか、辻褄の合わない作品になってしまう。
いずれも責任は、別のところにある。それを安易にシナリオを短くすることで、解決しようとしたのだ・・・。
でも、耐えて、断腸の思いで短縮した。
当然、クオリティが下がる。本来のレベルに戻すために、別の形でさまざまな努力。ようやく今に至る。
なのに、今またチーフが、こう言うかと思えた。
「4人のシーンを減らしてくれると、助かるんだけど・・」
一番簡単な解決法。映画人はその方法を取ることが多い。
でも、チーフは口にしなかった。
「もう少し考えてみる・・・」
そういう。その言葉から感じることあった。
「撮影スケジュールを組むのは、俺の仕事。
それがうまく行かないからと、シナリオを直せ! というのは違う。
俺のプライドも許さない。何とか考える!」
演出部チーフの熱い思い、伝わって来た・・。
(つづく)
さまざまな理由・・・ 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
メインの4人。全員が少しずつ、別の仕事が入っているという。
掛け持ちということではないが、前に出演した作品の舞台挨拶とか。どうしても出ねばならないものがあるらしい。
義務教育の子は授業は休んでも、運動会は出ないといけないとか。今は9月。ちょうど、運動会シーズン・・。
それを踏まえてスケジュールを立てると、4人揃っての撮影日がどうしても足りなくなるという。
撮影日が足りないというより、3週間の中では組めない条件となっている。
事実、量的には全てのシーンが撮れる日数があり、休みの日もある。何と連休まであるという。
そんな撮影は珍しい! なのに、入り切らない・・。
「あらゆる角度から考えて、予定を組んでみた。けど、どうしても・・・駄目なんだよなぁ・・」
チーフは、考え込んでしまう。
どうすればいいのか・・・。
(つづく)
スケジュールに入りきれない! 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
演出部チーフは言う。
「撮影スケジュール立ててみたんだけど、どうしても入り切らないんだ・・」
基本的に映画撮影は1ヶ月。それを最近は3週間でやる。2週間という組もある。
幸い、今回は3週間ほど。
連日、徹夜という撮影ではない。
「何でもいいから、撮り切らないと終わらない!」という撮影ではない。
ちゃんと「いい作品」を作ることを目的とした日程だ。
なのに、なぜ、スケジュールが合わないのか?
チーフの説明を聞いた・・・・。
(つづく)
演出部チーフの返答・・ 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
演出部チーフに話した。
「そんな無茶な! 製作費が1億円の映画でも、そんな撮り方はしないよ!」」
といわれるかと思った。そんな答えでも仕方のない提案である。
でも、チーフはこう言う。
「分かった。何とか考えてみる・・・」
あっさり過ぎて、拍子抜け。
そういいながら出来たスケジュールを見ると「順撮り」どころか、超まとめ撮りになってるかも?
不安だった。が、いざ、仮スケジュールを見ると、限りなく順撮りに近い予定が立てられていたのである。
感謝!!!!!!!
だが、ひとつ、大きな問題があるという。いや、致命的な問題があるというのだ!
(つづく)
「そんな無茶な! 製作費が1億円の映画でも、そんな撮り方はしないよ!」」
といわれるかと思った。そんな答えでも仕方のない提案である。
でも、チーフはこう言う。
「分かった。何とか考えてみる・・・」
あっさり過ぎて、拍子抜け。
そういいながら出来たスケジュールを見ると「順撮り」どころか、超まとめ撮りになってるかも?
不安だった。が、いざ、仮スケジュールを見ると、限りなく順撮りに近い予定が立てられていたのである。
感謝!!!!!!!
だが、ひとつ、大きな問題があるという。いや、致命的な問題があるというのだ!
(つづく)
撮影スケジュールは順撮りで行きたい! 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
オープニングの夏美と、エンディングの夏美の顔は・・・違っていてほしい。
「ひと夏の物語」を経験し、成長した夏美であってほしい。
それは演技だけでは出せないものであり、そこまで引き出してこそ「ストロベリーフィールズ」の物語は、リアリティを持ち感動できる作品になると考える。
また、メインの出演者は皆10代。物語の時間が行ったり来たりする中で演じるより、時間順に芝居が出来た方がやりやすいはず。
特に東亜優は新人であり、芝居は初めて。いや、佐津川、谷村も、これまでに2〜3本のドラマしか経験していない。
だから、よりよい環境で、やりやすい状況で撮影に臨ませたい。
そのこと、演出部チーフに話した・・・・。
(つづく)
「ひと夏の物語」を経験し、成長した夏美であってほしい。
それは演技だけでは出せないものであり、そこまで引き出してこそ「ストロベリーフィールズ」の物語は、リアリティを持ち感動できる作品になると考える。
また、メインの出演者は皆10代。物語の時間が行ったり来たりする中で演じるより、時間順に芝居が出来た方がやりやすいはず。
特に東亜優は新人であり、芝居は初めて。いや、佐津川、谷村も、これまでに2〜3本のドラマしか経験していない。
だから、よりよい環境で、やりやすい状況で撮影に臨ませたい。
そのこと、演出部チーフに話した・・・・。
(つづく)
「順撮り」とは何か? 2005/9 [第二四章 撮影スケジュール]
だから、排水口のシーンはまとめず、シナリオ順に撮影して、3回に分けて撮影に訪れるという形にしたい。
映画の世界では「順撮り」という。俳優は精神的な展開を時間順に、体現できるので非常にやりやすくなる。
ただ、製作的には大変なこと。
経済的、時間的に非常に手間と負担のかかるものとなり、あまり行われない。
北野武監督はこの「順撮り」を実践するが、伊丹十三監督はやっていない。ハリウッド映画でも少ない。
しかし、この方法論を実践することが、10代の佐津川愛美たちがより演技に集中できて、「気持ち」表現しやすくなるはず。
役柄と同じように物語を体験し、成長してくれるはずだ!
(つづく)