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撮影4日目(五)夏美の家 ブログトップ
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父と娘の別れ場面(4)2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 台詞はないが、小西博之さんはこう呟く。

 「元気でな・・」
 
 娘・春美役の三船美佳さん。それに答えるように言う。

 「お父さん・・・・」

 そして、さっきのカットで泣いたばかりなのに、また涙をこぼす・・。

 三船さんは背中しか写っていない。が、小西さんの名演技。いや、演技を超えた演技に胸打たれて、それに応えてしまったのだ。

 見ている方も同じ気持ちだ。その小西さんの笑顔。

 本当にこの世を去り、二度と戻らぬ父親の優しさ溢れる顔。

 小西博之さんでなければ出来ない。素晴らしい笑顔だった・・。

(つづく)


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父と娘の別れ場面(3)2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]


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 カメラがまわった。

 再び、娘の春美役。三船美佳さんが階段を上がって来て父(小西博之)を見つける。

 見つめ合う。このカット。カメラは小西さん向き。

 小西さん。何ともいえない表情で三船さんを見つめる。

 それはもう、あの世に行かねばならない男が、残した娘を見つめているという以外にない、優しく、切ない顔だった・・。

 (つづく)


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父と娘の別れ場面(2)2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 小西さん。先ほどまでの顔とは違う。

 「欽ちゃん」番組のような場面とは全く違う、厳しい顔で家の前に立つ。

 台詞はひとつもない。動きもない。

 ただ、立ったまま、娘役の三船さんと見つめ会うだけ。

 むずかしい芝居である。
 
 リハーサルをせずに、いきなり本番。

 小西さんの希望通りに、何の演出もしないで本番だ。

 小西さんから数メートル離れて三船さんが立つ。カメラはその後ろ。

 僕はいつもとは違い、小さな声でこう言う。

 「はい。本番・・・よーい。スタート・・」

(つづく)

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父と娘の別れ場面(1)2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 日が暮れて、いよいよ父(小西博之)と娘の別れの場面の撮影。

 まず、長女の春美(三船美佳)が実家に帰ってくるところから。

 階段をとぼとぼと春美が上がる。このときはまだ事故の前なので洋服。そして両足で歩く。

 階段を上がり切ると、目の前にいる父に気づく。

 これは映画の最後の方で明らかになるのだが、幽霊を見る能力は夏美(佐津川愛美)だけではなく、姉の春美も持っている。

 父が死に、幽霊になって帰ってきたことを理解。

 だが、すでに時間が来ていて、消えて行く父。

 春美は泣きながら、父を見送る。

 まず、春美側を撮影。三船さん。問題なくこなす。

 では、カメラを切り返して、父役の小西さんの芝居である。

(つづく)


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父・博史を演じる小西博之さん(6ー終) 2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 小西博之さんの熱い思い、胸に突き刺さった。

 古里を思う気持ち。僕も強いものがある。

 いや、それ以上に熱い、小西さんの思いを感じた。

 そんな大変だった背景も知らずに、出演をお願いしていた。

 でも、今回お願いした役。

 小西さん以上に、演じれる人はいないだろう。

 役への思いも、映画と舞台となる古里への思いも、小西さん以上の人はいない。

 全て一任。演じてもらうことにした。

 そして、その撮影の日が訪れたのである。

(つづく)

小西博之さんについて=>http://t-ota.blog.so-net.ne.jp/2008-03-08-8

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父・博史を演じる小西博之さん(5) 2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 小西博之さんの話、続く。

 「で、お願いがあります・・。

 依頼してもらった役・・。娘たちのこと、故郷のことを思いながら死んで行く父親の役。

 ひとつ間違えたら、僕もそうなってました。

 だから、この父親の気持ち。もの凄く分かります。

 今、生きていることの素晴らしさ感じています。

 だから・・・・・そんな気持ちで・・この役・・・演じたいんです・・・」


(つづく)


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父・博史を演じる小西博之さん(4) 2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 東京での打ち合わせのとき、小西さんはこう言った。

 「監督。僕は本当に、死んでたかもしれない。

 田辺に戻ったとき。本当に最後かもしれんと思ってたんです。

 でも、手術はうまく行った。そして仕事に復帰したとたんに来たのが、今回の『ストロベリーフィールズ』の出演依頼。

 うれしかったですよ。

 生きて田辺に帰れるだけでなく、復帰最初の仕事が古里の仕事。

 ほんまにうれしいです! 

 で、お願いがあります・・・」

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(つづく)

小西博之さんについて=>http://t-ota.blog.so-net.ne.jp/2008-03-08-8

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父・博史を演じる小西博之さん(3) 2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 小西博之さん。手術を受けた。

 幸い、何の問題もなく、手術は成功。

 胸にハート型の傷跡が残ったという。

 でも、全てうまく行った。回復も順調だった。

 そんなときに来た出演依頼。

 それが故郷・田辺を舞台にした映画だった。

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 そう、それが今回の「ストロベリーフィールズ」だったのである。

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 (つづく)


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父・博史を演じる小西博之さん(2) 2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 「昨年から、体の調子がよくない・・・」

 そう感じた小西博之さんは、病院で検査を受ける。

 病名は「肝臓ガン」。大きな手術を受けねばならない状態だった・・。

 手術は2月。その直前、小西さんは故郷・田辺に戻った。

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でも、手術のことは誰にも告げていない。

 家族と会い、友人と語らった・・。

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 そして、懐かしい風景の中を歩き考えた。

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 「ああ、もう、二度とこの景色を見ることもないのかもしれん。これが最後かもしれん・・」

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 そう思ったが結局、誰にも言わずに東京に帰った。

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 故郷の人々のこと。青春時代を過ごした町のこと。それらを胸に。

 手術を受けたのである・・。

(つづく)


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父・博史を演じる小西博之さん(1) 2005/9/20 [撮影4日目(五)夏美の家]

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 そんな父親役を演じてくれるのが、俳優の小西博之さん。

 ロケ地である、ここ田辺の出身。

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 「田辺の作品ならぜひ!」と、特別出演してくれる。

 そんな彼は少し前に大きな手術をした。

 生死に関わる大きなものだった。

 撮影前。小西さんとお会いしたとき、そのときの話をしてくれた・・。

 今回の映画「ストロベリーフィールズ」にも関係する、胸打つ話だった・・。

(つづく)


小西博之さんの記事=>http://t-ota.blog.so-net.ne.jp/2008-03-08-8

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