優秀な監督とは?(9ー終)妥協しない 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
「ストロベリーフィールズ」は・・。
今後も監督業を続けたくて、映画会社や製作プロダクションに対して
「予算」と「スケジュール」を守る優秀な監督であること
アピールするために作る映画ではない。
どうしても、古里・田辺市で撮りたくて始めた作品。
「親と子に伝えるべき大切なこと」をテーマとして描く映画なのだ。
そして、この映画を企画し、スタートさせたのは僕自身だ。
製作会社の評価や、テレビ局の目は関係ない。だから・・。
妥協してはいけない。
「予算」や「予定」は守る。でも、それを守るために妥協してはいけないのだ。
そんなことをしても、誰も喜ばない。
僕自身の映画なのだ。そう自分に言い聞かせる。
次のロケ場所は久々の高山寺。ナイター撮影。
日が暮れた田辺の町をロケバスは高山寺に向かって走り続けた・・・。
(つづく)
優秀な監督とは?(8)自分の作品 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
しかし、今回の映画「ストロベリーフィールズ」。
以前のドラマのように、テレビ局や製作会社から依頼されて監督している訳ではない。
僕自身が企画し、プロデュサーとして製作費も集めた。5年もかけた作品。
与えられ、頼まれた仕事ではない。どうしても作りたい映画だ。
そんな現場で
「時間がないので、長まわしで撮影しました。でも、期日内で撮り終えました」
といって、何の意味があるのか?
僕がやるべきは、観客が
「いい映画でした。感動しました!」
という作品を作ることのはずだ!
(つづく)
優秀な監督とは?(7)立場と環境 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
それが分かっているのに、多くの監督。「予算」と「予定」ばかり気にする。
理由がある。
通常、映画は会社から依頼があり、監督は雇われて映画を撮る。
次の依頼もほしい。生活がある。だから、こう考える。
「予算をオーバーして、いいものを作っても評価されない・・・」
「予算内でいいものを作るのは、至難の業だ。ギャラだって安いし、そこまでできない」
「期日内に、予算内に、そこそこの作品を作った方が評価される・・」
だから、新しい挑戦はしない。いいものを作ろうという思いもない。
そこそこのレベルのものを期日内に作って、終わりにしようと考える。
それが日本映画レベルを下げてきた背景。
そして、多くの監督が陥りやすいことなのである・・・。
(つづく)
優秀な監督とは?(6)予算とスケジュール 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
「優秀な監督」というのは、会社から見れば、
製作費をオーバーせず。期間内で撮影を終える監督。
作品レベルが高いより、予定や予算をオーバーしない方が評価される。
しかし、観客から見れば、予算やスケジュールは関係ない。
2年がかりで撮影された映画も、2週間で撮られた映画も同じ。
2億円の映画も、2千万円の映画も、大人は1800円の入場料を払う。
大切なのは面白いかどうか? 感動できるかどうか? 笑えるかどうか?
観客を楽しませてくれる映画を作る監督が、「優秀な監督」なのである・・。
(つづく)
優秀な監督とは?(5)カメラマン 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
カメラマンの三本木さん。
「引き絵」で撮っていたのを、芝居の途中から急にズーム。
「寄り絵」にしてしまう等のアクロバットな撮影までしてくれた。
こうして、12時間かかる撮影をたった4時間で終える。
数ヵ月後。その最終回がテレビ放送されたとき。思った。
「あのとき、悪魔の選択をしなくてよかった。
助監督が心配して提案してくれたことだが、受け入れていたら後悔しただろう」
次のロケ現場に行く、バスの中。
その話を思い出した・・・。
(つづく)
優秀な監督とは?(4)撮り切る 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
「日暮れまで、あと1時間。それまでに最後まで撮影するのは無理だ」
そう言われていたが、結局、全部、撮ってしまった。
でも、僕の実力というわけではない。
ひとつは俳優たちが一度も台詞を間違わず、長い芝居を見事に演じたこと。
彼ら彼女らの多くは、ドラマ初出演の子が多かった。
演技経験ありは、「太陽娘」から続投のみさっちゃん(建みさと)のみ。
なのに、全員が素晴らしい演技を見せてくれた。
そして、カメラマン。
その後も、何度も僕の作品を担当してくれた三本木さん(今回のストロベリーも彼です)
彼の見事な手腕によるところ。大きかった・・・。
(つづく)
優秀な監督とは?(3)拒否 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
僕が初監督したドラマ「風の娘たち」。12話のシリーズ。
毎週、見てくれる人がいるはず。最終話まできて「何だこれは!」と思わせたくない。
「深夜ドラマだったが、感動した・・・」
と言わせたい。それが監督の仕事ではないか?
助監督からの「悪魔の選択」提案を拒否した。
助監督さん。呆れ顔で・・
「まあ、好きにしてください」
俺は責任取れませんよという表情で去る。
よし!撮影を続ける。
(つづく)
優秀な監督とは?(2)失格 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
それができないようなら、監督失格ということになる。
なので、友人は初監督のVシネマで「悪魔の選択」をした。
大切なクライマックスシーンを長まわしで撮り、盛り下げてしまったが、
何とか完成させた。
しかし、それが正しい選択とは思えない。
監督業を放棄することではないか?
製作会社やテレビ局から、クレームがつけて来なければいいというものではない。
期日内、予算内に撮り上げたから、合格というものではない。
監督が一番に考えるべきは、観客のこと。テレビなら視聴者のはずだ!
(つづく)
優秀な監督とは?(1) 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
素晴らしい作品を撮ることより、期日内で撮影することが「優秀な監督」とされる。
そこで黒澤明監督を意識して完全主義で、予算も期日もオーバーしたら、
どんなに、いいものを作っても、
「あいつは無能な監督だ・・・」
と烙印を押されてしまう。だから、監督たち。最後の最後は「悪魔の選択」をして
撮影時間を短縮して、とりあえず完成させようとするのだ。
演出力よりも、時間を上手に使い。撮影を順調に進めることが、
残念ながら・・・監督にとって第1の使命なのだ・・・。
(つづく)
続・悪魔の選択(終)演出意図 2005・9・22 [撮影6日目(十四)ロケバスの中]
多くの監督は、その助監督と同じ発想をする。
今回のようなケースで、悪魔の選択をした。長まわしで撮ってしまった。
「何だこの撮影は? 全くカットを割ってないだろう!」
作品を見た製作会社から、そういわれても・・。
「演出意図です」
といえる。時間がなかったから、ああしたではなく、あれを狙って撮ったと。
そして責任を追及されずに済む。
なぜ、そんな言い訳で済んでしまうのか?
つまり、深夜ドラマの場合。いや、映画も含めて、製作者たちは
作品クオリティよりも、期日内に撮影を終えること。
予算内に収めることを、重要視するからだ・・・。
(つづく)