2003年3月22日 尾道ロケハンの旅・XV /さらば尾道 [第4章 尾道ロケハン篇]
再び、自分らしい場所を探す。一番、重要なのは夕陽だ。主人公の1人理沙が悲しいとき、淋しいとき見つめる夕陽。
これにはこだわりがある。山やビルではなく、海に沈む夕陽を撮りたい。
だが、尾道でそれを見つけるのはむずかしい。理沙の夕日はどこにあるのか? 悲しいときに行く場所はどこなのか? 尾道正面にある向島にも渡って、夕日を探し歩いた。でも、見つからない。
ただ、向島ではいろんなものを見つけた。大林映画ではない太田映画の要素。それをどう組立て育てて行くかだ。まだまだ、素敵な風景があるはずだ。
一度は田辺でイメージした物語だが、それを何とか尾道で構築しよう。
大都会を舞台にするのではない。田辺と同じ懐かしくも美しい町・尾道で撮影するのだから、絶対にできるはずだ。
町が一望できる大きな岩の上に、東京から持ってきた砂時計を並べる。
「ストロベリーフィールズ」で最も重要な小道具の1つ。マキ、理沙、美香の3人がこの世にいられる時間を知るための砂時計。
それを尾道の町が見える岩の上の置く。ここから新しい「ストロベリー」が始まるのだ。
今夜のバスで東京へ戻る!12時間の長旅。また、ロケ場所を探しに来る。それまで、さらば尾道の町・・・。(つづく)
2003年3月22日 尾道ロケハンの旅・XIV 夕陽 [第4章 尾道ロケハン篇]
朝、8時から歩き続けて現在7時まで!ときどき休憩したとはいえ、尾道の町を11時間も歩くと、さすがに疲れた!膝が笑っている!
様々な場所を見たが、本日は「ストロベリー」のロケ出来る場所を探した。夏美の家、夏美の学校等は何とかなる。
が、理沙が淋しいときに見つめる、夕陽だけが見つからない。
尾道には素敵な場所がたくさんある。しかし、海に沈む夕陽だけがなかった。夕陽は海ではなく、向いの四国や島の後に沈むのである。
或いは工場。或いは建物。僕が探した限りでは、そうだった。
最後は夕日に向かって走った!沈むまで探し続けた。でも、理沙の場所は見つからなかった・・・。(つづく)
尾道ロケハンの旅・「ふたり」の坂道 /2003年3月22日 [第4章 尾道ロケハン篇]
本日、尾道ロケハンの最終日。また、町を徹底的に歩きまわる。「ふたり」のロケをしたお寺を見つけた。
映画で見るより大きく豪華。ここで石田ひかりがピアノを弾き、尾美としのりが花束を持って見守るシーンが撮られたのだ。
その帰り道に同じく「ふたり」のオープニングとエンディグに使われた坂道を見つけた。これは感動。ここでお姉ちゃんが事故死するのだ。
いけない! ロケ地巡りではない。「ストロベリー」のロケ地探しだ。
しかし、大林映画を撮った場所はもの凄い大林パワーが溢れていて、どう撮っても蹴散らされてしまう。
変な表現だが、過去の名作をリメイクしても絶対に勝てないということがある。
技術も、製作費も、数段アップしているのに、過去の作品に勝てない。理由は「思い」だろう。ネームバリューがあるからと、リメイクするだけではダメ。
その作家の思いがオリジナルには勝てないのだ。
それと同じことが大林映画ロケ地では起きる。生まれ育った大林監督の思いを越えない限り、映像で越えることもできない。
映画を見て観光で来ただけの憧れでは、絶対に勝てない・・・。でも、それを探さねばならない!(つづく)
2003年3月22日 尾道ロケハンの旅Ⅻ /ビデオ [第4章 尾道ロケハン篇]
ホテルの部屋で「時をかける少女」のビデオが見れると分かり、早々に再生。
だが、ファン心理はすぐに消え、大林監督の力量に圧倒された。
今日も歩き回った尾道の町が、映画になるとこうなるのか・・と思い知る。実際の尾道も素敵な町だ。が、大林映画に出てくる尾道はまた別の尾道なのである。
それはもうファンタジーと言えるほど。この町で生まれ育った大林監督が、町を知り尽くした人だからできる業だと思える。
俳優を演出するのも同じ。魅力あるが、もの凄く難し名優がいる。その人を使いこなせるのは、その俳優を知り尽くした演出家だけ。ロケ地にも同じことがいえそうだ。
しかし、この町で撮らなければ「ストロベリー」は映画として成立できない。そして、大林映画に負けない素晴らしい作品に仕上げないと、ヒットさせられない。
次回の田辺ロケも夢と消える。何としても、自分なりの尾道を探さねばならない。(つづく)
尾道ロケハンの旅・ホテル? /2003年3月22日 [第4章 尾道ロケハン篇]
昨夜の貞子の宿はさすがにキツかった。ホコリと花粉と悪夢でほとんど寝られず。別のところを探すと、わずか千円ほどの違いで駅前のビジネスホテルがあった!
貞子の宿と違って共同風呂に入る時間も決められておらず、バスユニットが着いている。もちろんベッド、テレビ、エアコン付き。ホコリや花粉も待っていない。廊下に出ればビールの販売機もある!
さらに、とどめは部屋にビデオデッキがあること。実は「時をかける少女」のVHSテープを持って来ている。それを見ることができるのだ!
尾道で「時かけ」を見るなんて、何て贅沢。そう思って早々に再生したが・・・。(つづく)
尾道ロケハンの旅・木造校舎 /2003年3月22日 [第4章 尾道ロケハン篇]
向島で見つけた木造の学校。今は使ってないという。でも、なかなか、おしゃれ。ロケ予定していた田辺の東陽中学の代わりに使えるかも?
ただ、やはり現役で使われていない建物は、何か生命力が感じられない。その意味では、現在も授業が行われている東陽中学の校舎は魅力だ・・。
とはいえ、この向島の校舎は大林映画に登場したことはない。そこが狙い目。もちろん、あえて同じロケ地で撮るという方法論もある。が、それだとパロディに見えてしまうかもしれない・・・。
また、日本人監督にはよくジョン・ウーやブライアン・デ・パルマの映画の真似をしたカットを撮る人がいるが、それはもう学生映画と同じ。
憧れだけでは、絶対に勝てない。その意識でもう監督として負けている。
別の新しさを出さねば意味がない。巨匠・大林宣彦とはいえ、こちらも監督する以上はライバル。
「これは大林さんは撮らない絵だなあ!」という映像を作らねばダメだ。
しかし、それを尾道でやるのは過酷。たぶん、大林監督が撮影したことのない場所でロケするしかないと思える・・・。(つづく)
時をかける少女・Ⅱ 2003年3月22日 [第4章 尾道ロケハン篇]
当時、僕はアメリカ映画一本槍。映画といえば「ハリウッド!」「日本映画なんてタダでも見たくない!」という発想だった。
そんな中で「ねらわれた学園」「転校生」で、大林宣彦という人は他の日本人監督とは違う・・と感じたので、新作の「時をかける少女」は注目していた。
2本立てで見たのだが、もう1本が何だったか?(「探偵物語」ではなかった)が思い出せないほどのショックを受ける。(写真下は原田知世が、お堂から落ちて来る瓦を避けたシーンのロケ地)
映画館を出てしばらく呆然としていた。泣けた!とか、感動した!というのではない、打ちのめされたという感じ。
あれほど嫌いだった日本の古い家並みが美しく、ファンタジーがそこにフィットしている。言葉にはできないものが溢れていた。
以後、大林宣彦監督というのは、僕の中で最も尊敬すべき監督となる。その大林さんの古里で、ロケ地を探そうとするのだが、足掻けば足掻くほどに自分の無力を感じて行く。
この町で大林映画に負けない作品を撮ることは、至難の業だということを痛感して行くばかりである・・。(つづく)
時をかける少女・Ⅰ 2003年3月22日 [第4章 尾道ロケハン篇]
 「ストロベリー」はいろんな映画の影響を受けていると思うが、特に大きいのが大林宣彦監督の「尾道シリーズ」だと言える。
そんな中で特に僕が好きなのは「時をかける少女」だ。1983年に公開された角川映画。大林宣彦監督、原田知世主演で大ヒットした。 (写真下はメインタイトルの通学路のシーン・ロケ地)
そのときの併映作品が、薬師丸ひろ子と松田優作が主演の「探偵物語」。角川三人娘全盛のときで、確かこの2本だてで30億円近い興行収入を上げている。
「時をかける少女」は大林宣彦監督の尾道シリーズの第2作。第1作の「転校生」を見た角川映画の社長・角川春樹さんが、「うちの知世も尾道で撮ってほしい!」と企画。
その頃、僕は21才で自主映画活動をしていた。ちょうど「ストロベリーフィールズ」の原点となる8ミリ映画「バイバイ・ミルキーウェイ」の撮影。
その完成後。今はなき名画座の高田馬場パール座で、かなり遅れて「時をかける少女」を見た・・・。(つづく)
尾道ロケハンの旅・ふたり /2003年3月21日 [第4章 尾道ロケハン篇]
向島の船着き場に「ふたり」のセットが残されていた。(写真下)本来は反対の海側にあったものをこちらに持ってきたのだ。
8年前にお手伝いしたとき、この船着き場のセットで撮影が行われていたのを思い出す。
町に入り、ひたすら歩く。途中、小さなスーパーのようなところで、サンドウィッチを買って食べながら歩く。
初日は大林映画ロケ地巡りで、楽しく町を歩いた。実は楽しさの影にもの凄い圧迫感を感じる。
本日は「ストロベリー」を尾道で撮るなら、どこでロケすればいいか?と思いながら歩いている。
と、昨日以上にプレッシャーが強くなる。どこへ行っても大林監督の巨大な幻影が現れるようだった・・・。どこで撮っても、大林映画を真似た絵にしかならない。
いや、真似ることさえできず、「これが尾道?」という映像になりそうだった。昨夜、あの安宿で夢を見た。
ビルほどもある巨大な大林監督の石像が現れて、それを見上げる僕の上に崩れて落ちて来る夢だった。
ハッと目が覚めると夜中。そのまま朝まで眠れなかった・・・。(つづく)
2003年3月21日 尾道ロケハンの旅Ⅷ /向島 [第4章 尾道ロケハン篇]
本日は尾道から海を挟んで正面にある向島へ行く。「さびしんぼう」で富田靖子が通学に使う、あの小さな船で渡ることができる。
向島は同じく大林監督の「ふたり」や「あした」を撮影した場所でもある。
ちなみに僕が参加した、福山ロケのアメリカ映画「GAIJIN/外人」の撮影後、先輩がたまたま大林組に知り合いがいたことから、同時期に撮影していた「あした」の撮影を見学することができた。
当時から憧れの大林組。大林監督とも握手させてもらい、撮影を見学。そのあと、
食事係のお手伝いをし、俳優さんやスタッフの食事を作った。
さらに出演されていたあの植木等さんと、記念写真まで撮ってもらった思い出がある。
深夜まで撮影したので、そのままスタッフと同じホテルに泊めてもらい翌朝の食事まで御馳走になった。一緒にいたスタッフはそのまま大林組に参加。
僕は次の仕事があったので東京に戻らねばならず、悔しかったのを思い出す。
そのロケ地は向島の裏側。少々遠いので、今回は行かない。東の町に廃校になった造校舎があるというので、それを探す。夏美たちの高校に使えればと考えている。
(つづく)