2003年7月中旬 新しい映画作り・Ⅳ [第5章 再挑戦スタート篇]
先輩は言う。
「とにかく、アポを取って和歌山県のフィルムコミッションを訪ねろ。次に地元に行って観光課を訪ねる。
できれば、D社のPも連れて行けるといいんだけど、『来年、考えよう・・』という奴じゃなあ・・とにかく、お前一人でも行ってくるべきだ!」
もともとホラードラマが終わり次第、田辺へは行くつもりだった。大林監督との約束もある。
だが、まさか、フィルムコミッションや、観光課まで行くとは考えなかったが、その方が、より地元色が出せる素敵な作品が作れるだろう。
それが最良の方法だと思える。
よし。古里・和歌山県田辺市に行くぞ!
(和歌山迷走篇に つづく)
2003年7月中旬 新しい映画作り・Ⅲ [第5章 再挑戦スタート篇]
先輩はさらなる情報を教えてくれる。
「文化庁の映画協力基金に応募するといいんじゃないか? 以前は黒澤明とか鈴木清順とかにしか援助しなかったけど、最近はそうでもない。
特に地方で作られる作品には協力してくれるぞ!」
その額は2000万円!!だが、簡単にもえらる訳ではない。さまざまな審査も必要だ。が、前回紹介した島根県で作られた「白い船」という映画もその基金をもらっている。
監督が島根出身で、島根を舞台に撮った物語。まさに僕のケースと同じ!まあ、同じだからと、同じように行くとは限らない。
が、「ストロベリー」の進め方としては、映画会社がドン!と製作費を出して作るこれまでの方式ではなく、地元の協力を得て、町の良さをアピールする作品を作る。そういう方向ではないか?と思えてきた。(つづく)
2003年7月中旬 新しい映画作り・Ⅱ [第5章 再挑戦スタート篇]
考えたこともない方法だった。だが、確かにそういう形で作られた映画がどんどん出てきている。小栗幸平監督の「眠る男」は群馬県が作った映画。
「白い船」は島根県出身の監督が、島根県のある町の全面協力で作られている。
とても感動的な作品だった。
先輩監督も、三重県で撮影。町の協力を得て、公立の中学校を借りて撮影。地元のホテルとタイアップ。
名前をチラシ、ポスターにも載せ、ドラマ内でもホテルを登場させることで、宿泊費と食事代を全てタダにしてもらったという。
地元企業がCMや広告ではなく、映画を使って地元を宣伝するという考え方だ。
女性Pの旦那に相談すると、同じことを言われた。
「宿泊費、食事代は非常にウエートを占める。数百万円になる。だから、タイアップでそれが削減できるだけで、製作側はかなり助かる。地元は町やホテルをアピールできる。
ストロベリーの場合で考えると。予算は*千万。その内半分をK社が負担するのなら、あと、残りを地元で投資してもらえれば、GOできるだろ?」
全く考えたこともなかった発想だ。希望が見えてきた。が、まだ難しい問題はある・・・・。(つづく)
2003年7月中旬 新しい映画作り・Ⅰ [第5章 再挑戦スタート篇]
さて、僕の気付かなかった方法論。新しい形の映画作り。以下のものである。ホラードラマの仕事で出会ったある先輩監督から聞いた話だ。
「今の時代、不況で企業にはお金がない。ビデオ会社もなかなかGOサインを出さない。小さな額なのに出し渋る。
太田の作品は地方を舞台にした作品だろ?だったら、ビデオ会社なんか当てにしないで、自治体の協力を得るんだよ。
観光課なんかに話を持って行けば、金を出してくれるところもある。映画を作れば町の宣伝になるからね? 尾道なんかは特にそういうことに力を入れてる。
今、地方は映画を通して「町をアピールしよう!」という動きが、急速に広まっている。地元発信の作品を作ろうとしているんだ。
あと、フィルコミッションを通せば、いろんな場所を紹介してくれるし、エキストラも集めてくれる。地方の企業とも連絡を取ってくれる。
そんな形でやった方がいいかもよ。今回の太田の映画は、そういう方法の方がいいんじゃないか?」(つづく)
2003年7月16日 春美候補の天才女優? [第5章 再挑戦スタート篇]
「この子になら、あの役が出来る!! いや、この人でないないとダメかもしれない!」
実は「ストロベリー」のある役。凄く難しくて、誰にお願いすればいいか?考えていた。その辺の女優さんでは絶対に無理。
美しくて、狂気があって、それでいて悲しい。「赤ひげ」の香川京子のような感じ。ほんとに難しい。
でも、彼女ならできるはずだ・・・。
今日からは、「ストロベリー」戦線に本格的に復帰する。何とか、来年には軌道に乗るよう、準備したい。
先はどうなるか分からないが、これを形にせずに未来はないと思っている・・・。(つづく)
2003年7月16日 ホラー終了と天才女優 [第5章 再挑戦スタート篇]
昨日、ホラードラマのMA(音楽や効果音を入れる作業)が終了。完成と相成った。満足度の高い作品を作ることができた。もちろん反省点はいっぱいある。不勉強で至らなかったこともある。
けど、それは全て自分の問題。以前のホラービデオのときはPが進行の邪魔をしたり。やるべきことをせずに、それをスタッフが肩代わりしたりということが何度もあった。
僕自身が製作を担当。小道具、役者への連絡から、弁当の手配までした・・・シナリオを書く時間も信じられない期間。そんな常識以前の異常な状況があった。
それに比べると、今回はほんといい仕事だった。プロデュサーも理解ある方々ばかり。「いい物を作ろう!」という思いを感じた。前回のように「殺すぞぉ!」という人は誰もいなかった。
そして出演してくれた女優さんで、本当に素晴らしい方がいた。まさに天才女優と言える。その彼女が現場で貞子の真似をしていたことがある。それを見て、閃いた!!(つづく)
2003年7月6日 女性プロデュサーの感想Ⅴ [第5章 再挑戦スタート篇]
大島弓子の世界なら、おじさんたちが理解できないのも当然。
だが、一番映画を見る世代は10〜20代。その世代にウケている企画なのに、映画を作る側が理解できない。これが日本映画の構図だとすると、やり切れない。
でも、その女性Pからこう言われた。「ストロベリー」は素敵な作品だから絶対に形にしてほしい。旦那と一緒に応援するから!と。
そう。その旦那と翌日会うことになっていた。先日、電話で話したとき、ある質問をすると「その話はついこの間、後輩にしたところだよ!」といわれた。
かなり、詳しく話が聞けそうだ。ストロベリー戦線に復帰したとたんに、大きな展開が始まる!(つづく)
2003年7月6日 女性プロデュサーの感想Ⅳ [第5章 再挑戦スタート篇]
だから、若い女性に「ストロベリー」の評判がいいのかも? 年配の男性に理解されないのも、その辺が理由だろう。
中年の親父が大島弓子を読んで、感動したなんて話は聞かない。やはり、何を理解するにはバックグラウンドが重要なのだ。
今回の「ストロベリーフィールズ」は女子高生4人の青春ファンタジー。となると、子供時代からファンタジーに馴染んでいないと想像できない。
日本ではSF、ファンタジーというと未だに子供向きとバカにする風潮がある。
40代のおじさんは特に興味のない世界。
その上、若い人と接することがない。「最近の若い奴は訳が分からない」と嘆く。そんな男性たちがPをしている・・・。(つづく)
2003年7月6日 女性プロデュサーの感想Ⅲ [第5章 再挑戦スタート篇]
でも、やがて40代以上の男性の想像力がないだけ(!)だと分かって来る。今回のことで余計にそう思えるようになった。
要は年配の男性Pたちは若い人の気持ちが、もう分からないのだ。だから、若者にウケる映画が作れない。
彼らが「これはいい!」というものはソッポ向かれるということ。前々から聞いていた話だが、それを実感する。
逆に言うと、彼らが「ダメ」という作品は観客にウケるのかもしれない。女性Pには2箇所ばかり問題点を指摘されたが、大きな点ではない。「ぜひ、がんばってほしい!」といわれた。
気に入ってもらえた点として、彼女は大島弓子の漫画が昔から好きだということがあったようだ。
以前、先輩監督にも言われて、読んでみたが、非常に似ている。大島弓子の漫画にも幽霊ネタやタイムリミットの物語が多い。それでいて感動的。
そう考えると僕の世界観も、その手の少女漫画に近いのもかもしれない。だから、女性の方が「ストロベリー」を理解しやすい・・・。(つづく)
2003年7月6日 女性プロデュサーの感想Ⅱ [第5章 再挑戦スタート篇]
だが、その女性Pの旦那(僕の先輩)に聞くと、こう言われた。
「アイツは太田のこと。かなり評価しているよ!」
言い方は厳しいが、実力を認めてくれていたようだ。そんなこともあり、シナリオを送らせてもらった。でも、緊張。喫茶店で会うと、こう言う。
「太田さんがこんな作品を書くとは思わなかったな・・この作品ならどこへ持って行っても採用されますよ! 」
こんなに業界の人に褒められたのは初めてだった。嬉しいより驚き。10−20代の特に女の子には評版がよかったが、映画関係者の批評は最悪だった。
先日の50歳Pと同じような指摘がほとんど。
ある会社で「10代には評版がいい」というと、「素人で子供だから、何も分かってないんだよ」と言われる。
映画会社で働くベテランのPにそう言われると、反論することができなかった・・・・。(つづく)