メイキングを監督した巨匠たちⅡ /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
「インディ・ジョーンズ」シリーズ。「ジュラシック・パーク」のスピルバーグ監督も実はメイキングを監督したことがある。
1980年に公開された「1941」の撮影現場でのこと。休憩時間になると、スピルバーグは8ミリカメラを持ち出して、スタッフやキャストにインタビューをしてまわったという。
セットをくまなく撮影。監督自らメイキングを監督した。休憩時間なんだから休めばいいのに、その辺がスピルバーグ。その映像は「1941」のレーザーディスクに収録されている。
僕は見ていないがDVDになるときに、特典映像として見れることを期待している。
ちなみに巨匠では全然ないが、僕の撮ったメイキングもレンタルビデオ店でまだ残っているところがあるので、よければ見てほしい。
「ルーズソックス日記」「死びとの恋わずらい・メイキング」等がある。(つづく)
メイキングを監督した巨匠たち /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
伊丹十三監督の映画をメイキングを撮っていたのが、今やヒットメーカー、「shall we dance?!」「シコふんじゃった」の周防正行監督である。
彼が撮った「マルサの女をマルサする」は抜群に面白い。それまでのメイキングはどちらかというとアイドル・ビデオに近く、主演する若手女優のオフショットを撮ったものが多かった。
(アメリカでは1970年代頃から大作映画では必ずメイキングが撮られていた。が、日本でメイキングを撮られ出したのは、角川映画の「天国にいちばん近い島」や「Wの悲劇」の辺りではないだろか?
当然、中身は原田知世や薬師丸ひろ子のアイドルビデオ。でも、当時、撮影現場を映像で見られる機会は少なく、興味深く見たものです)
が、周防監督が撮ったそのメイキングはまさに映画作りの教科書であり、伊丹監督の演出の秘密が満載されていた。
面白いメイキングを作る監督はやはり、ドラマを撮っても面白い。(つづく)
メイキングは勉強になる? /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
逆にいうと、メイキングを担当することで、その辺のことが全て見えてくるのである。カメラマンはどんな動きをするか? 監督はどのようなポジションに立ち、どんな指示をするか? 照明部は? 録音部は?
俳優は撮影前にどんな心理状態か? 撮影あとは? 休憩中は? 時間あるときは何をしているのか? スタッフは? カメラマンは? その全てを見ることができるので、メイキングはすっごく勉強になる!
昔の監督はその辺のことを、助監督を経験することで学んだ。いくら映画の本を読んでもなかなか分からない部分なので、実際に経験することが重要。
でも、僕の場合は助監督は1本しかしていない。その代わりにメイキングを担当することで、現場を勉強して来たような気がする。(つづく)
メイキングは大変? /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
以上、メイキングを撮るときの注意点を書いてみたが、気付くことがあるだろう。
メイキングを撮影するには、映画撮影の進行と、監督の意図&個性、俳優のタイプ&心理状態、スタッフの動きの全てを把握した上で、どうアプローチして、その全貌を記録するか?が問われるのである。
これは何かというと、ドラマを撮るのと同じ発想ということ。まさに監督としての能力を発揮できるか?どうか?なのだ。
映画撮影のあらゆることを知らないと対応できない。光、音、俳優、カメラ、演出、撮影現場の流れ、スタッフの動き、心理まで把握していなければならない。
とんでもなく大変なポジションである・・・。でも・・・!
(つづく)
メイキング・注意点 /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
メイキングで、大切なのは本編の撮影の邪魔をしないこと。カメラの前を通ったり、カメラに写ってしまったらアウト!
また、カメラ・ポジションはスタッフの邪魔にならないところを、選ばなければならない。といって全く邪魔にならない場所からは、いい絵が撮れない。そこが難しいところ。
そのためには、シナリオを読み込み、監督の個性を理解し、スケジュール表を把握、次に撮影されるシーンの本編のカメラポジションを事前に予想する。そこから撮られる映像を想像。
その撮影風景を見せるのに、一番適した場所を探す。同時にそこにいても、他のスタッフの邪魔にならないポイントを、撮影前に察知。早めにその場所に入りカメラを構えることが大事なのだ。
本編のカメラ、照明、等が全てセッティングされてから動いたのでは、もうその場所には入れないこともあるのだ。先を読んで行動しないと、肝心なシーンを撮影できないことになる・・・。(つづく)
メイキング・インタビューの注意点Ⅱ /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
入れ込むタイプの俳優さんの場合は、撮影に入ると戦闘態勢に入り、近寄れなくなる人もいる。そんな人の場合は、撮影初日にインタビュー。
逆に「全部終わってからが、安心して答えられる」という俳優もいる。でも、終わると実感がなくなり、現場での苦労が言葉に出なくなる人もいる。
その俳優の性格やタイプに合わせて、一番リアルな言葉を引き出せるタイミングを狙うことも大切。
以上の点を検討して、インタビューをお願いせねばならない。音に関しては、そんな要因も含めて考える必要がある。結構大変でしょう?(つづく)
メイキング・インタビューの注意点Ⅰ /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
撮影中に俳優さんに「別の場所へ移動してほしい」なんて言ってはいけない。
インタビューの間に出番が来てしまうと、本編の撮影がストップしてしまうからだ。
また、マネージャーのガードが固く。「そんなことは、事前に言っておいてもらわないと!」と叱られることもある。さらに、以下のことにも注意する。
その俳優の出番が何日あり、どの日の撮影が比較的楽か?
どのシーンの撮影場所がノイズが少ないか?
新人ならどの撮影何日目で、現場に慣れ余裕が出てくるか?
その日の体調はどうか? 調子が悪いときには芝居だけで精一杯。俳優さんはもの凄く繊細な方が多い。
おまけに、もの凄く神経を使う仕事。インタビューひとつでも、凄いプレッシャーをかけることになるので、お願いするタイミングは慎重に考える。
さらに・・・。
(まだまだ、つづく)
メイキング・「音」について /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
人間の耳は優秀なので、さまざまな雑音の中でも相手の声を聞き取る。
が、マイクというのは、基本的にまわりの音を同等に録音してしまう。おまけにメイキングは、ドラマの撮影のように録音班がいない。カメラについたマイクで、音を拾うことがほとんど。
そのため、スタジオの片隅で俳優のインタビューしたが、あとで再生すると、まわりのノイズで相手の声が聞き取れないということがある。
と言って、静かな場所へ俳優さんに移動してもらい、インタビューするのも大変。1秒を惜しむ撮影現場。時間が取れないことが多い。
また、現場で「一言下さい」というのはまだ出来るが、インタビューということになると、さらに大変なことが増えるのだ!例えば・・・。(つづく)
メイキングについて・光 /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
インタビューで気をつけねばならないのは音と光。
光はご存知の通り。最近のビデオカメラは優秀なので暗闇にも強くなっているが、
やはり光は意識して撮影する。
基本的にメイキングカメラ用のライトはない。映画撮影ように焚かれたライトの光を利用して撮影する。
が、それをうまく使わないと、女優さんの顔が凄く怖く写ってしまったりする。ドキュメンタリーとはいえ、それはまずい。やはり、女優さんはきれいに撮ることは大切。
ただ、明るく撮れば見易いが、そればかりだと絵として退屈してくる。なので、
わざと逆光で撮り影絵のような映像を作ったりして、アクセントを付けたりもする。
また、白熱球と蛍光灯は目で見ると似ような光を発するが、ビデオで撮ると全然色が違うので、そのたびにカメラを調整しないと上がりを見て、ビックリということになる!(つづく)
メイキングって何?Ⅱ /2003年11月 [第10章 メイキング監督篇]
メイキング班は通常1人。自分でカメラをまわし、自分で演出する。
演出といってもドキュメンタリーなので、被写体に対して指示するのではなく、カメラ位置を決めたり、タイミングをみたりということ。
基本的には撮影風景を撮影するが、俳優やスタッフへのインタビューもする。そうやって、映画がいかにして作られて行くか?を紹介するのが基本。
他にはアイドル女優が出ているときは、「映画」の作られ方よりも、そのアイドルの素顔や苦労、葛藤などに焦点を当てる。
映画ファンには先の方法論が喜ばれるが、アイドルメインの映画だと、ファンが彼女たちの素顔を見たがる。
その作品の観客がどんな人たちなのか? も頭に入れてメイキングを撮ることが大切。さらに・・。(つづく)