地方の発想Ⅱ /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
それでは話が全然違っている。けど、そういう理解しかできない。「売り込みがあるのは、先方に大きなメリットがあるから!」と考える。
まさか自元に、大きなプラスがあるとは思わない・・・。
けど・・・・分かって・・もらえないものだろう・・。「映画」で「町おこし」という発想でさえ、業界でも最近になって出て来たもの・・・。
映画と関連のない仕事をする一般の人には、理解できないのが当然かもしれない・・・。
ただ、3年前から話を聞いてもらって、少しずつ理解してくれていたご老人でさえ、また否定側に戻る。他でも同じことが繰り返されていた。
このまま地元で活動を続けることに、意味があるのだろうかと思えてきた・・。(つづく)
地方の発想 /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
ご老人には地元に大きなメリットがあることを、何度も説明した。当初は分かってくれたのに、また以前と同じ批判をする。
記憶力の問題ではない。たぶん「映画」で「町おこし」をするという発想がピンと来ないのだろう。
彼が分かるのは「この若者と映画会社が、わが町で映画を撮りたいと言ってる」ことだけ。
「町で映画を撮らせてほしい。その上、金まで出せという。そんな都合のええ話はない。それならもっと、努力せんとアカンで?」そういう結論になるのだ。
(つづく)
選挙と映画は違う /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
選挙で当選すれば候補者は議員になり、権力も経済も付いて来る。でも、映画を撮っても個人も会社もほとんど儲からない。
ただ、町は宣伝になり、町おこしなる。今、多くの地方が映画を誘致し、町を活性化しようとがんばっている。映画を撮って一番プラスなのは地元。尾道や長野では自ら出資して、映画を呼ぼうとしている。
でも、残念ながら我古里にはどの会社も興味を示さない。業界中探しても、ここで撮影したいなんていう会社は皆無。
「1億円出すから撮ってくれ」と言っても、振り向くプロデュサーはいない。
でも、D社は「何とかしたい」と言ってくれている。今回は大きなチャンス。なのに、ご老人は「D社が先方に金を出せばいい」というのだ・・・。(つづく)
なぜ、分かってくれない! /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
ご老人にそう説明した。彼は言う。
「そんなに、この町で映画を撮りたいのなら・・そのD社という会社が先に、製作費の半額を出したらええんや! そうしたら、地元も考えるやろ?」
血が逆流する。何度も何度も説明しているのに、まだ現状を分かってもらえないのか? D社は本来はこんな田舎で映画なんて、撮りたくないのだ!
尾道のようなもっと有名な町で撮影したい。でも、シナリオを気に入り「何とかやりたい!」と言ってくれた。
見放してもいいだけの月日が経っているのに・・。いろんな方法を考えてくれた。
地元で製作費の半分が集まれば、あとの半分は出すと言う。大きなチャンスを提案してくれた。なのにご老人はこう言う。
「先にD社が金を出したら、どうや?」
爆発しそうになる!
でも、ご老人は映画作りというものが分からないのだ。選挙に例えることでしか、理解できない。
その構図で映画作りは、理解できない。間違った認識をしたことで、間違った答えを出している・・。
(つづく)
長年の夢 /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
映画を1本監督したからと、膨大なギャラをもらえる訳ではない。これまでかかった経費と相殺すれば残らないだろう。いや、残るのは借金だけかもしれない。
映画館で映画がヒットしても、監督には1円も入らない。本当に監督業は割に合わない仕事だ・・・。
だから、せめて、この町で、長年の夢である故郷で、映画を撮りたいんだ!
膨大な借金をしながら、断られても、断られても、お願いしてまわっている。でも、2度目に訪ねると応援してくれていた人も、トーンダウン。
東京側が盛り上っても、スタート地点に戻ってしまう。そして、またお願いしてまわる。
それでも、まだ努力が・・足りないというのか?(つづく)
地元だけではダメなんだ。/2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
また、彼の言う事を実践するなら、それこそ地元に住んで、何年もボランティア活動をすることになる。
でも、そうなれば東京での活動ができない。僕が地元で奉仕するだけでは、映画は作れない。東京にある映像系会社を、引き込まないと映画は作れない。
だからこそ、東京と地元を何度も往復。両方で協力を求めている。でも、地元に帰るときには、東京土産。東京に戻るときは和歌山土産。
交通費。資料作成の費用。シナリオの印刷。生活費を稼ぐ時間もなく、「ストロベリー」絡みでない仕事はしない。借金の山がどんどん大きくなる・・。
なぜ、そこまでするのか? それは美しい故郷を舞台にした映画が撮りたいから。それを全国の人に見てもらいたいから! それだけなのだ・・・。(つづく)
選挙と同じ? /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
以前から応援してくれていたご老人は、こう言った。
「太田さん。皆が応援してくれへんのは、何でやと思う? それは、あんたの努力が足りんせいや・・」
どういう意味だろう? これ以上、何をしろというのだ? ご老人は言う。
「これは選挙と同じや。もっと、もっと、あんたが汗をかいて皆の関心を買う必要がある。
梅の収穫時期には手伝いに来る。工場の大掃除を手伝う。無料奉仕して、皆に感謝されるようにならなアカン。
そうやって何年も皆の手伝いしたら、あんたの願いも応援してくれるようになるんや・・・」
確かに選挙のときに、候補者はパフォーマンスとして農家を手伝うことがある。議員は次の選挙のために、市民のためにいろいろとがんばる。
ご老人の言うように、僕の努力は足りないかもしれない。でも、映画作りと選挙は全く別ものなのだ・・・。(つづく)
予想もしない言葉 /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
応援してくれているご老人を訪ねる。
これまでのことを話した。10年前の映画のことがあるので、どこへ行っても「映画だけは、アカン」と言われること。
*千万出すと言ってた社長も、2度目には応援してくれなくなったこと。皆、「どうすることもできない」ということ等を報告した。
でも、東京側は少しずつ協力者が増えてきたこと。D社のPは地元で製作費の半分が集まれば、残りを出す。と言ってくれていること。大監督も応援してくれていること等を話した。
地元が動けば、東京側も動く。そうしたら映画が撮れる! 何とか、この町で映画を撮りたいことを語った。
そう話すとご老人には、こう言われた・・・。
もう聞きたくない /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
ずっと応援してくれている会長を訪ねる。
が、「力になってくれる人は皆、紹介しつくしたなあ・・」と言われる。「もう一度、最初から財界関係を当たったらどうか?」とのこと。
昨年、訪ねた方に電話。
「映画の話なら、もう聞きたないな・・」と言われる。他の方々からは「忙しいから」と断られた・・・。
(つづく)
テレビ局もダメ・・ /2004年2月 [第12章 和歌山死闘篇Ⅱ]
テレビ局から連絡がある。先日の製作支援の件について。
残念ながら、期待には添えないとのことだった。何かの形では応援したいが、現段階では無理とのこと。
東京のPにも報告。かなり落ち込んでいた。これでもう地元の支援がない限り、D社が動く事はできない・・・。
先日の衛星放送、今回のテレビ局とNGが続く。地元ですらダメなのか? やはり有名な観光地でないところで、ロケするというのは、難しいのか?
先日の若手プロデュサーや**テレビの女性Pのように、作品を理解してくれる人はどんどん増えている。
でも、和歌山ロケというのを出すと、アウトとなることが多い。残された方法は、やはり地元からの支援しかないようだ・・。(つづく)