制作会社探し/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
さて、前振りが長くなったが、今回はそんな悪徳制作会社に引っかからず、映画を作ることが大切。
何より製作費は、地元の人たちが集めてくれる大切なもの。
倒産寸前の会社の借金返済に使わせる訳にはいかない。必要以上の手数料を抜く会社で、社長のポケットマネーにさせる訳にはいかない。
だが、金額的には低予算作品。名の知れたまともな制作会社が引き受けてくれる額ではない。となると、小さな会社を探すしかない。
悪い噂がなくても、阿漕な商売をしているところも多く、良心的な会社を探すのは非常に難しい。
お願いしたところが、実は倒産寸前。「ええ、カモが舞い込んで来たわ!」というところではマズい!
とにかく、スポンサーはD社と地元で行けそうなので、とうとう制作会社を探す段階まで来たのである・・・<つづく>
腐敗の背景 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
では、なぜ、そのような悪徳制作会社がはびこるのか? そこには映画業界のシステム問題がある。
先にも説明したが、最近の傾向はスポンサーが集まり製作委員会を作るところから映画製作が始まる。
そこで集められた資金を制作会社に預けて、映画を作る。が、映画館で興行し上がった収益が入るのはスポンサーだけ。
制作会社がどんなに努力していいものを作っても、手数料しか入って来ない。そのくせ、予算オーバーしたら自分たちの責任。すぐに負債が溜まる。
努力しても報われないなら、楽して儲けようとするのが人間。通常10%の手数料を30%にする。下請けに出してリスクを回避する。
それが制作会社が腐敗した背景。不憫な環境にあるのは分かるが、彼らのやっていることは、もうショービジネスではない。
「制作会社」という看板をかけた、詐欺師集団といえる・・・。
<つづく>
この業界・・・Ⅱ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
以上、例を上げたように、映画の世界では未だに戦後の闇社会のようなことがまかり通っている。
理由は全て同じ。制作会社が金に困っているから。誤摩化し、ダマし、隠し事をせねば、会社が成り立たないのである・・・。
ただ、極めて悪質なところは「あそこはギャラの払いが悪い!」と噂になり、スタッフも俳優も集まらなくなる。
それでも素人同然の連中を雇って作品を作り、さらに粗悪なドラマを作り続ける。
そうやってスポンサーからの仕事も来なくなり、やがては潰れて行く。この世界ではよく聞く話。
でも、「えー、まだあの会社。倒産してないの?」ということもあり、そんな輩でも生き延びて行けるのも、この世界である・・・。
<つづく>
この業界・・・/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
いろんな悪徳制作会社を紹介したが、もちろん品行方正に仕事をしている会社も多い。それでいて良質な作品を作っている。
が、先に上げたような会社もかなりある。僕も何度もそんな会社に遭遇してきた。
仕事をしたのにギャラを払わない。「金はないんだよ!」と開き直る社長。仕事が終わってから、決めてあったギャラを下げてくれと言い出すプロデュサー。
あるときは、仕事を頼まれて何週間も待っていたのに、知らぬ間に別のスタッフが作業していたこともある。
連絡も来ない。待ちぼうけの上に、待っていた間の収入もなし。会社に火をつけるぞ!と思ったものだ。
まともな企業で働いていたら、あり得ないことばかり・・・。会社もいい加減だが、社員も常識が欠如している。いい加減。誤摩化し。ルーズ。適当。情熱なし。
そんな制作会社で働いたために、その月の生活ができないことが何度もあった。結局、サラ金から金を借りることになる・・。
<つづく>
自転車操業Ⅳ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
それらは、月末払いと言っておき、期限が来ても支払わない。
問い合わせがあっても、いろんな言い訳をつけて、払わない。担当者がいないとか、居留守を使って答えない。
そして次の作品でまた、同じことをする。
前回未払いのギャラを払うために、新作のスタッフには月末払いとウソをつく。前回のスタッフでも、問い合わせをして来ない人や気の弱い人のギャラは踏み倒す。
一般企業でもよくある、倒産寸前の自転車操業状態。
そんな制作会社がたくさんある・・・。
<つづく>
自転車操業Ⅲ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
その制作会社には巨額な借金がある。早急に返済せねばならない。事務所代。社員の給料。現像所への支払い等。
そんなとき、持ち込まれたのが2千万円くらいの小品映画。が、相場の10%の手数料を取っても、200万円。借金返済には焼き石に水。
それでも「脚本がいいですね〜ぜひ、我が社でやらしてください!」とか言って受ける。もちろん、でまかせ。まともに映画を作る気持ちはない。
出来る限り金を抜くことが目的。契約があるので、映画は完成させる。が、現場費のみで撮影。残り50%以上を全額を借金返済に当てる。
だから、撮影が済んでから払う人件費。スタッフ&キャストのギャラはその時点ではもうないのである・・。
<つづく>
自転車操業Ⅱ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
が、スポンサーとの契約がある。
例えば、その作品は1億で制作とする。それをオーバーしたら、制作会社の責任。赤字分は自腹となる。
大きな借金ができる。その分は、次の作品で取り戻さなければならない。
そうなると、どんな作品でもいい。金のあるスポンサーから仕事をもらって、借金返済を試みる。
でも、美味しい話はやたらとない。2千万円くらいの小品の仕事が持ち込まれた・・。そんなとき制作会社はどうするのか?
<つづく>
自転車操業Ⅰ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
また、別のパターンもある。先に紹介したのは、楽して大儲けしようという会社。
それとは別に、騙してでも金を取らないとならない状況の制作会社もある。
映画は水物。撮影中に台風が来たり、事故が起こったりすると製作費は超過する。
いくら金がかかっても、完成しないと資金を回収できないので、追加費用を払っても撮影を終えねばならない。
<つづく>
映画製作の裏・Ⅱ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
さらに、阿漕なところもある。
最初に制作を引き受けたA社のプロデュサーが、孫請けのC社にラインプロデュサーとして雇われて、高額なギャラを取るというやり方。
つまり、二重取り!
こうしてスポンサーが出した製作費は、何もしない会社にどんどん抜かれる。やはり貧しい映画しか作れない・・。
現場スタッフは仕事がキツくなるだけで、ギャラは下がるばかり。結局、皆「やる気」と「情熱」をなくすのである・・・。<つづく>
映画製作の裏 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
こんな会社もある。制作会社のA社。スポンサーから5千万円の製作費を渡され、映画制作を引き受ける。
が、A社は実際の制作は行わず、受け取った額から1千万円を手数料として抜き、4千万でB社に下請けに出す。
そのB社も1千万を抜き、さらに孫請けのC社に3千万で発注。そのC社は1千万を抜いて、残りの2千万円で映画を作る。当初の製作費が半分以下になる。テレビの世界でもよくあるパターン。
結局、現場スタッフの人件費を大幅に削り徹夜続きで撮影。その犠牲の上にA社B社は何もせずに、1千万円もの手数料を取るのである。
これがもし、10億の大作なら、A社、B社の儲けは1億円を越える・・。
<つづく>
阿漕な会社Ⅳ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
では、社員には還元されているのか?
彼らは通常のサラリーマン以下の給料。そのくせ労働時間は1日に20時間も当たり前。家に帰ることもできない日々が続く。
M君に3万円のギャラを振込んだプロデュサーも、自分のことで精一杯。他人の事を思いやる余裕すらない。
結局、彼はその会社を辞めた・・・・。
他の社員もやる気なし、どんどん辞めてしまう。補充に未経験者を取るが、すぐに撮影現場で役立つ訳もなく、仕事を妨げる。
仕切りができてない。ギャラが安い。スタッフは手抜きを始め、貧しい映画がさらに貧しくなる。結局、ろくな映画はできない・・・。
<つづく>
阿漕な会社Ⅲ/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
結局、M君の月収は3万。抗議したが会社側は「予算がないから、ギャラはその額しか払えない!」の一点張り。
担当者は毎回、同じことの繰り返しなので感覚は麻痺。M君が今月生活できないことなんて考えもしない。申し訳ないという意識もない。
僕も似たような経験が何度もあり、屈辱を味わったことがある。
会社は事前にギャラを聞いてもなかなか言おうとせず、仕事をさせるだけさせる。そして、あとになって信じられない額を振り込んで来る。
で、その会社の社長はどうしているかというと、高価な外車に乗り、会社は大きなビルの中。家も豪邸!
<つづく>
阿漕な会社Ⅱ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
助監督のM君。撮影現場の仕事だけでは生活ができないので、編集の仕事もする。
とある会社でビデオ編集。午前中から制作会社に行き、深夜まで作業。ほぼ1か月働いてもらったギャラが3万円!
10年、20年前の話ではない。つい最近のことだ。彼は慎ましく生活しているが、どうしても家賃などを払うと15万円はかかる。なのに1か月働いて3万って何?
そこが70%抜きで有名な会社。残り30%で予算組みをすると、最後の最後に来る編集費用をどうしても残らない・・。が、編集というのは時間がとんでもなくかかる作業。
それを知りながら担当者は、M君には何も言わず仕事を頼む。そうとは知らない彼は、仕事が終わり、月末に銀行へ行って驚愕する! <つづく>
阿漕な会社 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
エンタテイメントとしての映画。芸術としての映画。大ヒットする映画を作ろう!
そう思って制作会社を始めた人たち。だが、彼らはいつしか会社存続のために、金を抜く事しか考えなくなる。
それだけではない。とにかく金儲けをしようと、70%近い額を抜いている会社もある。1億円の製作費をもらい、3千万ほどでドラマを作ってしまう。
製作費があるはずなのに、撮影現場が異常に貧しい。弁当は超簡素。食事代が出ないことも多い。
(撮影中は飯が出るのが映画界の慣習。会社員の人はいいなあ・・と思うかもしれないが、撮影は早朝から深夜まで。徹夜続きのこともある。弁当をかき込んで、すぐに次の撮影。食事を用意することが時間節約にもなる)
睡眠時間を削り、徹夜徹夜で撮影をする。なのに、スタッフはまともな生活ができない人が結構いる。ああ、僕もそんな1人だ・・。<つづく>
愛情のない映画作り/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
20〜30%の手数料を取っただけでは、やって行けない制作会社はどうするか? 超安易な方法。さらに高いパーセンテージの金額を抜く。
だが、そんなことをすると撮影現場は、修羅場と化す。作品クオリティには構ってられない。中身や出来はいいから、とにかく撮り上げよう!ということになる。
「とにかく多額の手数料を抜け!」「スタッフのギャラを下げて、会社の儲けを増やせ!」
そんな考え方が当たり前になり、映画へのも愛情もなくなる。
そんなことで完成した作品が、感動や笑いを呼べる訳がない・・。
日本映画が長期に渡り低迷。圧倒的なハリウッドの大作映画に立ち向かうこともできなかった背景は、そこにあるのだろう。
また、制作会社には金に困ってなくても、高額な手数料を取る問題あるところも多い・・・。
<つづく>
映画界の問題点 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
つまり3000万円程度の映画から、手数料を30%取ると900万円なので、あとは2100万円しか残らない。
製作費が3分の2になってしまう。3000万円で映画を製作するだけでも大変なのに、それだけ抜かれるとさらに厳しいものになる。
その額で完成させるには、人件費を大幅に安くする。撮影日数を短縮する。スケールを下げる等の対策が必要。
その先に見えてくるのはクオリティの低下である。1か月かけて撮影するべき作品を3週間で撮り上げる。
宿泊費、食費、等は節約できるが、それでいいものができることはない・・。
さらに、そのレベルの製作費では30%の手数料を取っても、制作会社に大きなメリットはない。彼らはより多額の収入を得ようとする・・・。
<つづく>
制作会社の収入源Ⅱ/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
なので社員を何十人も抱える大手は、低予算映画を請け負わない。
では、小さな会社ならそれでOKかというと、そうもいかない。
社長1人。社員1人の会社でも、500万の収入で1年かかると、1か月で約41万の収入になる。
事務所代、光熱費、経費、社員の給料を払うと、ほとんど残らないだろう・・。
社長の給料も出ないかもしれない。
では、どうするか? その手の会社は相場以上の手数料を取るのだ。20%、30%、40%・・・。
その結果。別のところに大きな歪みが出る。そこに映画界の大きな問題があった・・・。
<つづく>
制作会社の収入源? /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
そんな映画制作会社の収入源は、何か?
投資できるほどの大手であれば、映画の興行収入が入る。
が、基本的には手数料のみ。製作費の10%ほどが手数料となり、製作会社の取り分となる。
10%というのが業界の相場。1億円の作品を受ければ、1千万円が手数料。だが、5千万円くらいの作品をだと、5百万だ・・。
これで映画完成までに何か月も、何年もかかったら割に合わない・・。
<つづく>
制作会社とは?Ⅱ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
小さなところになると、請け負い専門。社長1人。社員1人。小さな事務所を借りて仕事をしているところまで、いろいろとある。
中には事務所さえもなく、ペーパーカンパニー。プロデュサー兼、社長。なところもある。
俳優や監督が立ち上げた製作会社。また、逆に俳優や監督が所属する会社。
形としては独立した会社ではあるが、実はテレビ局の製作部門というところまで、多種多様である・・・。
(つづく)
制作会社とは? /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
制作会社について説明しておこう。日本映画黄金時代は映画会社が映画を企画し、製作し、系列の映画館で上映していた。
が、もうかなり昔からその形態が崩れ、現在ではさまざまな会社が映画に投資。製作委員会を作り、それを制作会社が受けて映画製作をするのが主流。
その後、配給会社や興行会社を通して上映される。
その制作会社も、何十人ものプロデュサーを抱え、企画を立てて映画製作を提案。自らも何億という出資ができる大手・・。
(つづく)
さまざまな制作会社 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
これまでにも映画会社だけでなく、何軒もの制作会社を訪ねている。が、そのほとんどが和歌山ロケというだけで、拒否反応を示した。
交通費や宿泊費が多額になること。億単位の大作映画でもないこと。人気ベストセラーの映画化でもないこと。さまざまな理由で、どこも手を上げてくれていない。
また、製作会社にも得意不得意がある。特撮作品が得意なところ。大作映画がうまいところ。マニアックな作品しか作らないこと。
それらを見極めて、今回のカラーに合うかを考えることも大切。いくらOKしてくれても、H系ビデオ専門のところではアウトだ。
大きな制作会社は億単位でないと受けてくれない。*千万円単位のものではダメ。テレビ局や大手映画会社の下請けしかしないところもある。
(つづく)
魑魅魍魎の世界 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
今回の件をD社のプロデュサーに報告。とても喜んでくれた。
「このままうまく進めば、うちも動かざるを得ないでしょう! 良い感じです!」
が、これでめでたし!めでたしではない。D社側が出した3つの条件の内の1つ目を揃えるべくスタートした段階。まだまだ、これからである。
さらに、3つが揃ってD社が乗り出しても、次のステージが待っている。そこでの問題を解決せねばならない!
その1。D社は或る意味でスポンサーであり、製作そのものは担当できない。製作費を預かり、映画製作の仕切りをしてくれる製作会社を見つけねばならない。
これが非常に難題。というのも、めったなところには頼めないのだ。映画界は本当に、魑魅魍魎の世界だからである・・。(つづく)