阿漕な会社Ⅳ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
では、社員には還元されているのか?
彼らは通常のサラリーマン以下の給料。そのくせ労働時間は1日に20時間も当たり前。家に帰ることもできない日々が続く。
M君に3万円のギャラを振込んだプロデュサーも、自分のことで精一杯。他人の事を思いやる余裕すらない。
結局、彼はその会社を辞めた・・・・。
他の社員もやる気なし、どんどん辞めてしまう。補充に未経験者を取るが、すぐに撮影現場で役立つ訳もなく、仕事を妨げる。
仕切りができてない。ギャラが安い。スタッフは手抜きを始め、貧しい映画がさらに貧しくなる。結局、ろくな映画はできない・・・。
<つづく>
阿漕な会社Ⅲ/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
結局、M君の月収は3万。抗議したが会社側は「予算がないから、ギャラはその額しか払えない!」の一点張り。
担当者は毎回、同じことの繰り返しなので感覚は麻痺。M君が今月生活できないことなんて考えもしない。申し訳ないという意識もない。
僕も似たような経験が何度もあり、屈辱を味わったことがある。
会社は事前にギャラを聞いてもなかなか言おうとせず、仕事をさせるだけさせる。そして、あとになって信じられない額を振り込んで来る。
で、その会社の社長はどうしているかというと、高価な外車に乗り、会社は大きなビルの中。家も豪邸!
<つづく>
阿漕な会社Ⅱ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
助監督のM君。撮影現場の仕事だけでは生活ができないので、編集の仕事もする。
とある会社でビデオ編集。午前中から制作会社に行き、深夜まで作業。ほぼ1か月働いてもらったギャラが3万円!
10年、20年前の話ではない。つい最近のことだ。彼は慎ましく生活しているが、どうしても家賃などを払うと15万円はかかる。なのに1か月働いて3万って何?
そこが70%抜きで有名な会社。残り30%で予算組みをすると、最後の最後に来る編集費用をどうしても残らない・・。が、編集というのは時間がとんでもなくかかる作業。
それを知りながら担当者は、M君には何も言わず仕事を頼む。そうとは知らない彼は、仕事が終わり、月末に銀行へ行って驚愕する! <つづく>
阿漕な会社 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
エンタテイメントとしての映画。芸術としての映画。大ヒットする映画を作ろう!
そう思って制作会社を始めた人たち。だが、彼らはいつしか会社存続のために、金を抜く事しか考えなくなる。
それだけではない。とにかく金儲けをしようと、70%近い額を抜いている会社もある。1億円の製作費をもらい、3千万ほどでドラマを作ってしまう。
製作費があるはずなのに、撮影現場が異常に貧しい。弁当は超簡素。食事代が出ないことも多い。
(撮影中は飯が出るのが映画界の慣習。会社員の人はいいなあ・・と思うかもしれないが、撮影は早朝から深夜まで。徹夜続きのこともある。弁当をかき込んで、すぐに次の撮影。食事を用意することが時間節約にもなる)
睡眠時間を削り、徹夜徹夜で撮影をする。なのに、スタッフはまともな生活ができない人が結構いる。ああ、僕もそんな1人だ・・。<つづく>
愛情のない映画作り/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
20〜30%の手数料を取っただけでは、やって行けない制作会社はどうするか? 超安易な方法。さらに高いパーセンテージの金額を抜く。
だが、そんなことをすると撮影現場は、修羅場と化す。作品クオリティには構ってられない。中身や出来はいいから、とにかく撮り上げよう!ということになる。
「とにかく多額の手数料を抜け!」「スタッフのギャラを下げて、会社の儲けを増やせ!」
そんな考え方が当たり前になり、映画へのも愛情もなくなる。
そんなことで完成した作品が、感動や笑いを呼べる訳がない・・。
日本映画が長期に渡り低迷。圧倒的なハリウッドの大作映画に立ち向かうこともできなかった背景は、そこにあるのだろう。
また、制作会社には金に困ってなくても、高額な手数料を取る問題あるところも多い・・・。
<つづく>
映画界の問題点 /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
つまり3000万円程度の映画から、手数料を30%取ると900万円なので、あとは2100万円しか残らない。
製作費が3分の2になってしまう。3000万円で映画を製作するだけでも大変なのに、それだけ抜かれるとさらに厳しいものになる。
その額で完成させるには、人件費を大幅に安くする。撮影日数を短縮する。スケールを下げる等の対策が必要。
その先に見えてくるのはクオリティの低下である。1か月かけて撮影するべき作品を3週間で撮り上げる。
宿泊費、食費、等は節約できるが、それでいいものができることはない・・。
さらに、そのレベルの製作費では30%の手数料を取っても、制作会社に大きなメリットはない。彼らはより多額の収入を得ようとする・・・。
<つづく>
制作会社の収入源Ⅱ/2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
なので社員を何十人も抱える大手は、低予算映画を請け負わない。
では、小さな会社ならそれでOKかというと、そうもいかない。
社長1人。社員1人の会社でも、500万の収入で1年かかると、1か月で約41万の収入になる。
事務所代、光熱費、経費、社員の給料を払うと、ほとんど残らないだろう・・。
社長の給料も出ないかもしれない。
では、どうするか? その手の会社は相場以上の手数料を取るのだ。20%、30%、40%・・・。
その結果。別のところに大きな歪みが出る。そこに映画界の大きな問題があった・・・。
<つづく>
制作会社の収入源? /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
そんな映画制作会社の収入源は、何か?
投資できるほどの大手であれば、映画の興行収入が入る。
が、基本的には手数料のみ。製作費の10%ほどが手数料となり、製作会社の取り分となる。
10%というのが業界の相場。1億円の作品を受ければ、1千万円が手数料。だが、5千万円くらいの作品をだと、5百万だ・・。
これで映画完成までに何か月も、何年もかかったら割に合わない・・。
<つづく>
制作会社とは?Ⅱ /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
小さなところになると、請け負い専門。社長1人。社員1人。小さな事務所を借りて仕事をしているところまで、いろいろとある。
中には事務所さえもなく、ペーパーカンパニー。プロデュサー兼、社長。なところもある。
俳優や監督が立ち上げた製作会社。また、逆に俳優や監督が所属する会社。
形としては独立した会社ではあるが、実はテレビ局の製作部門というところまで、多種多様である・・・。
(つづく)
制作会社とは? /2004年7月 [第18章 腐敗の構造篇]
制作会社について説明しておこう。日本映画黄金時代は映画会社が映画を企画し、製作し、系列の映画館で上映していた。
が、もうかなり昔からその形態が崩れ、現在ではさまざまな会社が映画に投資。製作委員会を作り、それを制作会社が受けて映画製作をするのが主流。
その後、配給会社や興行会社を通して上映される。
その制作会社も、何十人ものプロデュサーを抱え、企画を立てて映画製作を提案。自らも何億という出資ができる大手・・。
(つづく)