新たなドラマの始まり! /2005年8月20日 [第一部 完結編!]
こうして映画「ストロベリーフィールズ」は5年の月日を経て、やっと撮影がスタートする。
当初、39歳だった僕は、間もなく44歳になる・・。
本当に長い長い日々が過ぎた。しかし、まだ、スタートラインに着いたばかりである。
この先、撮影、編集、ポストプロダクション。そして宣伝、公開と、まだまだ長い道のりが続く。
ここまでは、映画作りのほんの1部にしか過ぎない・・。
いよいよ、この日記も、次回から第2部がスタート。
ここまではライターであり、監督である僕の話が中心だったが、これからは多くの俳優、スタッフが登場し、さまざまなドラマを見せてくれるだろう。
主人公の夏美は誰が演じることになるのか? 僕が希望するあの2人の女優は出演をOKしてくれるのか? 鉄男は? 長塚先生は?一番困難な死神役はどうなるのか?
夕陽シーンはうまく撮れるのか? 撮影中に台風が来るとまずい! そして僕にとっても、初劇場作品。うまく演出できるだろうか?
さまざまな問題と不安を抱えてはいるが、「ストロベリー」号は間もなく船出する!
第1部 完
<第2部へ つづく!>
巨匠からの手紙 /2005年8月20日 [第一部 完結編!]
「てめえ。殴り殺してやる!」
と、怒りが爆発していた危機を斬り抜け、シナリオ直しも終わる。
今日は久々にホッとする日で、部屋の外に出て、真夏の太陽が照りつける空を見上げた。ポストを覗くと1枚のハガキが来ている。打ち上げ花火のイラストが入った絵はがき。
手書きの文字で、差出人を見ると「大林宣彦」!!
そのイラストは「転校生」で最初に撮影した尾道の花火だと書かれている。文面読むと胸が熱くなる・・・。
「映画の夢を信じる太田組の全員の情熱がきっと素敵な映画を実現し、多くの人たちに美しい人生の夢を与得る日が来ることを、信じています」
そんな内容。ずっとずっと、憧れて、映画ファンの頃から見ていた大監督が励ましのお手紙をくれた・・・・・。
この数週間の苦しかった日々を、乗り切った翌日ということもあり涙が溢れる。
大林監督を始め、多くの人々の支援、応援でここまで来る事ができた。いよいよ、撮影は9月中旬からスタートである!
<つづく>
いよいよ、製作再開 /2005年8月 [第一部 完結編!]
これでどうにか、厳しい局面を乗り切ったはず。
中身を削って、テーマを歪めて、ドラマを短くするのは簡単。でも、それだけはしてはいけない。それを回避してリライトできたか?
皆の意見を聞いていると短くしたが、ほとんど、大切なものを失わずに「ストロベリー」の世界も、テーマも、今も成立していると感じる。
まだ、時間を置いて、読み直してみないと分からない部分はある。が、何とか局面は超えたと思う。
いよいよ、来週の火曜日にはメインスタッフと共に、ロケ地である田辺市に行く。そして地元の実行委員会と全体会議である!
<つづく>
それぞれの感想Ⅱ /2005年8月 [第一部 完結編!]
続いて、助監督チーフから電話が来た。
「短くなったのに前と変わっていない。世界観も損なわれていない。問題はないと思う・・」
いつも冷静な彼が、そういってくれたので安心する。そして、いちばんうるさい関係者から電話。感想によっては、今から殴りに行くことになるかもしれない。彼はこういう。
「よくなったと思います。短い長いではなく、物語に問題があると思っていました。でも、それが解決されてよくなっています。
細かな問題はありますが、それはまだこれから直して行けばいいと思うので、全体としてずっとよくなったと思います」
そして別のPから連絡。「また、断腸の思いで切られたんだと思います・・・」そういいながら内容については、まだ問題点があるようなことを言う。
が、「何とかこれで撮り切ることができる・・・」という思いが伝わってきた。
<つづく>
それぞれ感想Ⅰ /2005年8月 [第一部 完結編!]
不安の中、第1報が来た。
シナリオの初稿から読んでいて、誰よりも「ストロベリーフィールズ」の世界を理解し、応援してくれているM子からだ。
以前のバージョンで感動して泣いたというので、短くなった今回の稿を読むと物足りないか?
或いは、「何か違う・・」と言われる可能性がある。心配しながら、メールを読む。
「出演者が少し減ったけど、前と同じストロベリーです。改めていい話だと思いました!」
嬉しい。若い女性がいいと言ってくれれば、大きな問題はないはずだ。でも、スタッフから見えるとどうなるのか?
<つづく>
プロより若い人たちの感想? /2005年8月 [第一部 完結編!]
とは言え、リライトしたばかりなので、本当に問題なく完成されているか? 自信はない。「前の方がよかった」と言われるかもしれない。
シナリオをメール添付で製作会社と、一部のスタッフに送った。意見を聞くためだ。関係者は皆、プロであり、鋭い目を持っている。が、気をつけねばならないのは、或る意味で彼らは偏っているということ。
製作部はやはり中身よりもまず、「予算内で撮り切れるか、どうか?」に気が行く。演出部は「スケジュール内で撮り終えられるか?」を考えてしまう。
スタッフの年齢層は高いので、観客ターゲットである10代の気持ちになってシナリオを読むのは、厳しいものもある。 まして50代のおじさんが「これは現代の若者が感動するいい話だ」なんて言おうものなら、まず逆の結果が出る。
おなじ意味で、完成した作品を若い観客は支持したのに、スタッフが「どこがいいんだろう?」と首をかしげることもよくある。スタッフの意見をまともに聞くことは、危険な部分もあるのだ。
そこで、ずっと応援してくれている若い友人たちにも、シナリオを送る。もちろんシナリオを読める子たちである。
俳優の卵とか、映画ファン、自主映画をする奴。彼ら、彼女らの素直な意見が実は一番参考になる。これまでもスタッフやPが批判。反対。否定しても、彼ら、彼女らが支持してくれたものは、いい結果が出た。
あとは感想を待つだけだ・・・果たして・・・。
<つづく>
奇跡のリライト/2005年8月 [第一部 完結編!]
考えて、考えて、考えて、考え抜いて、あるひとつの手段を見つけた。そして寝ないで今朝までかかりリライト。
会社側の要望を超える12pも短くした。これで製作部も安心するはず。
何よりも物語が短くなったのにテーマは歪まず、ちゃんと成立している。中身も変わらず、エンタテイメントとして機動。これは自分でもよくできたな・・という部分だ・・。
予算的には楽になり、撮影日数も短くなる。そしてある部分は今までよくなった。
そんな都合のいいリライトはあり得ないと言われそう。僕自身もそう思えるくらい。限りなく理想に近い形にした。
ただ、少し、ドラマ世界が狭くなり、空気が減った感もある。その辺が不安だが、予算削減の際によくあるシナリオ短縮でありがちな、内容をねじ曲げて、別物にしてしまい作る意味がなくなるようなことはない。
それをやっては終わりだと思うので、死守したかった。製作サイドには一番理解されないところだけど、一番大切なこと。
<つづく>
逆転の発想 /2005年8月 [第一部 完結編!]
気にかかっている、もうひとつ。
前回のシナリオ短縮。よくなったと言う関係者もいるが、実は問題がたくさん出ていた。
主要登場人物をカットした。その彼の役割を他のキャラに担わせたのだが、それがうまく行っていない。
読んでいても、あきらかにおかしい。なのに、気付く人は少ない。映像にして初めて問題を理解し、大きな違和感を感じるだろう。
修正せねば、とんでもないことになる・・・。
<つづく>
5年間の思いを捨ててはいけない/2005年8月 [第一部 完結編!]
夏美、マキ、理沙。美香。4人の少女たちの物語。
この「ストロベリーフィールズ」を作るために、がんばってきたのだ。ここまで来て、投げる訳には行かない。
大切なテーマもある。それを浮き彫りにするために、必要なエピソードがある。外してしまうと、テーマは伝わらない。
物語は積み重ね。Aがあり、Bがあり、Cがあるから、Dになる。Bを外すと、Cは成り立たない。
もうギリギリまで削った。いや、すでに必要な場面さえカットしている。もう一度、大きな月を見上げた・・・。
「おい!お月さま! これ以上何を切ればいいんだ・・教えてくれ・・・」
<つづく>
夜の月 /2005年8月 [第一部 完結編!]
あれからも悩み続けている・・・。
中身を変えず、テーマを歪めず、面白さを損なわずシナリオを10pも切れる方法などないに等しい。
どこを切っても、物語が破綻する。
朝起きてから、昼。そのまま夜まで、天井を見つめながら考えた。とても食事する気にはならない。トイレに行くときも、水も飲むときも、考え続ける。
日が暮れてから、外に出て暗闇を歩く。あてどもなくただただ歩く。
立ち止まって、街灯の下で考える。見上げると、大きな月が出ている。
今日は顔を洗ってない。歯を磨くのも忘れた。そんなことはいい。どうすれば、「ストロベリーフィールズ」のシナリオを短くできるか?
どこかのバカが言うように、本当に何も考えずに10ページ切ってしまうか? それでも無神経な奴なら「おー短くなったねえ? いいんじゃない」といいそうな気がする。
でも、それでは何のために、5年もがんばってきたのか?分からなくなる・・。
<つづく>
スタッフ再結集! /2005年8月18日 [第一部 完結編!]
でも、嬉しい話もあった。
シナリオ会議のあと、午後2時からスタッフが再集合。製作再開を決めたので、戻ってくれるかどうか?を聞くためだ。
ただ、製作部と撮影部はいない。「9月中の再開はない」と発表したので、撮影部は単発の仕事を入れてしまい今日は来れない。製作部は別の仕事に入り、もう戻って来れない。
それ以外、演出部と照明部が集まった。プロデュサーから話があり。撮影期間は短くなる。ギャラも安く、それでもやってくれるか?と問う。全員が了承してくれた。
短くしたシナリオに関しても、演出部チーフはこういう。
「あと10ページも切る必要はないだろう。もう少しだけ短くすれば、撮り切れる量になる。大丈夫! 中身も問題はない」
製作部の判断とはかなり開きがある。何より、チーフの言葉にはシナリオ削る作家の苦しみを理解してくれる暖かさを感じた。
とにかく、現場スタッフはやる気を見せてくれた。今日は本当に怒りが大爆発しそうになったが、スタッフに支えられる。何とか戦って行きたい・・。
<つづく>
殴ったろか!/2005年8月18日 [第一部 完結編!]
プロデュサーたちと会う。ロケ場所を集約し、リライトしたシナリオを見せる。
あれから、さらに夜間撮影のシーンを昼間のシーンに変えた。夜の撮影は昼の1.5倍から2倍の時間がかかるとされている。夜を昼に変えることで、撮影時間は短縮する。
ロケ場所も数カ所にまとめ、より短期間で撮影できるように書き直した。それでいて内容はいままでと同じにしてある。
にも関わらず、Pたちは「これでは撮り切れない。さらに10ページ切ってほしい」と言う。あるPに至っては「前と何も変わっていない!」とまで言い出す。
5年かけて完成させたシナリオをさんざん短くし、ロケ地の数を減らし、それでいてクオリティを下げないのは至難の技だ。
身を切られる思いで削り、あきらかにページ数も減っているのに「何も変わっていない」だと? あまりにも無神経な発言。「殴ったろか!」と思った。
10ページ切れと言われて、5ページ以上切った。それがなぜ、あと10ページ切れになるのか?
こちとら子供の手足を切り続けている心境だ・・。「これでは足りない。もう1本の足も切れ!」と言ってるのと同じだ!
他に方法がないから、必死で対応している。なのに、あまりにも想像力のない無神経な発言の連続。次第に殺意が増してくる・・。
<つづく>
シナリオ削減の最終手段Ⅱ /2005年8月 [第一部 完結編!]
すでにロケ場所と、それぞれの位置関係は把握している。撮影場所を集約させたり、同じ場所で2つのシーンを撮れるように考える。
意味もなく同じシーンで何度も撮影すると、映画になったときに「また、同じ場所か?」と思えるが、同じロケ地でも別の1角で撮影すれば、別の雰囲気が出る。
こうすれば1日に3シーンしか撮れないものが、4シーン撮れる。3日撮影すれば1日浮く。
また、遠い場所の撮影を近所に持って来たりすることでも、撮影日数は減り、製作費は削減できる。
これはすでに5年前からロケハンをして、撮影場所である田辺市の地理を把握しているからやれる業。
作業開始。シナリオにある場面のロケ地を全て書き出す。距離関係を確認。場所を変更していく。
1日に移動する量を最低限にして、撮影スケジュールを自分で立ててみる。それで成立するように場面を決め直す。
あと、それぞれのシーンを短くする。何とかカットできる場面を削る。こうして提案された10ページはカットできてないが、実質上は撮影し切れる量に書き直した。
<つづく>
シナリオ削減の最終手段/2005年8月 [第一部 完結編!]
シナリオを切るときの法則はまず、本論に関係のないシーンのカット。
でも、それが作品の味になっている場合もある。「太陽がいっぱい」がテレビ放送されたとき、いつもカットされる市場の買い物シーン。
なくてもストーリーは繋がるが、とても雰囲気のある場面。なくなると作品のレベルが1ランク下がる。
が、今はそんなレベルの問題ではない。枝葉のシーンはすでにカットしてある。物語を紡ぐ最低限のエピソードしか残ってない。
あとできるのは、製作的な考え方である。
シナリオ上では3シーンでも、それぞれの距離が離れていると、移動に時間がかかり、1日では撮り切れない。
それを1カ所で撮影できれば、移動の必要がなくなり、1日で撮影できる。これも経費削減に繋がる。
<つづく>
矢吹丈の気持ち /2005年8月20日 [第一部 完結編!]
漫画「あしたのジョー」。
主人公の矢吹丈が東洋チャンピオン・タイトルマッチのため、ライト級に近づきつつある体重を、壮絶な減量の末にバンタム級に落としたエピソードがある。
なのに試合の当日の計量で、体重オーバーが発覚。試合までに、あと2キロ落とさねばならなくなる。
ジョーはサウナを借り切って、下剤を飲んで、さらなる減量。壮絶な展開だった。それを思い出す・・。
それと同じことをシナリオでやらねばならない。無謀だと感じる。だが、今の製作費で撮影に入るためには、それしか方法がないという。
ただ、中身を変えず、テーマを歪めず、面白さを損なわず10ページも切れる方法などある分けがない・・・。
単に短くすれば、中身のない別ものになる可能性が高い・・。安易な別の短編映画を撮るために、5年もがんばってきたのではない・・。
が、現在の製作費での続行を、製作部は不安に思っている。情熱も失いかけているように見える・・・。
<つづく>
さらなるシナリオ削減提案/2005年8月 [第一部 完結編!]
さらにシナリオを削減すれば、何とかなるという結論が出た。
「あと10ページ。短くしてほしい・・・」
先日の削減でも、血を吐く思いだった。それをさらに短くしろという・・。
ボクシングで言えば、体重を落としてフェザー級からバンタム級に下げたのに、さらにフライ級に下げてくれというようなもの。
そもそもが低予算で、作れるようにしていたシナリオ。それを軽量化。さらに、削減するのは、もう無謀である。
関係者の中には、「4人の女子高生を3人にして、大人の登場人物は一切なしにすればいい」という者もいる。
何をバカなことをいう・・それではもう完全に別の物語。似て非なる作品。「ストロベリーフィールズ」ではなくなる。
そんな無神経な軽減の仕方はできない。でも、主要登場人物をすでに2人も削ったあとに、何をどうすればいいのか・・・。
ボクサーで言えば、髪を切り、骨を削る。肺と腎臓をひとつずつ取れというのと同じである。でも、それをしないと、撮影には入れないのだ・・。
<つづく>
結論 /2005年8月 [第一部 完結編!]
足りない製作費の半分は、集まった。
が、製作サイドは、これ以上は、もう難しいという。
協議が続く。
その後。地元からも製作側にある大きな提案があり、続行が決定。
製作部が「現在の額で、何と撮影できないか?」製作費を計算し直す。その結果が発表された・・・。
<つづく>
中止にはできないⅡ /2005年8月 [第一部 完結編!]
応援してくれた友人たちにも、申し訳が立たない。
膨大な生活費を貸してくれ、声援を送り続けてくれた。一緒に会社まわりをし、何度もシナリオを読み、感想を聞かせてくれた。
僕が諦めれば済む段階ではない。多くの人の血と涙でここまできた。それを終わらせる事は絶対にできない・・・。
製作側とも何度も相談。何とか製作を続けてほしいと懇願。何度も頭を下げた。やめないでほしい。
「ストロベリーフィールズ」を続けてほしいと、お願いした・・・。
<つづき>
中止にはできない/2005年8月 [第一部 完結編!]
5年かかりで、製作費の3分の2は僕自身が集めた。が、撮影数週間前に、あとの3分の1が消えた・・。
なぜ、こんなことになるのか・・・。
その額を1か月以内に集めるのは、厳しかった。製作会社が足りない分の4分の1ほどを集めてくれたが、それ以上は進んでいない。
今ある額だけでも撮影は十分できるのだが、反対する会社もある。
このまま製作を中止しても、延期しても、協力してくれていた地元に迷惑をかける。いや、迷惑なんてものではないだろう。
地元で応援してくれた人が信頼をなくす。「映画だけはアカン」と誰もがいった町で、「ストロベリー」を推進してくれたのだ。
中止にすれば「やっぱりなあ。映画人を信用するからや!」と言われるだろう。今後、仕事をするのも大変になる。「中止になりました」では済むことではない。
僕が死んでお詫びしても、ダメだろう・・・。
<つづく>
製作費の4分の1ゲット!! /2005年8月11日 [第一部 完結編!]
制作会社経由で、足りない製作費の4分の1をゲットしたという連絡。
あと少し、行けそうとのこと。再開できるかもしれない!
再開の場合。8月22日にメインスタッフが、田辺で実行委員会と会う。
そして9月15日にクランクin予定だ!
神様。何とか、お願いします・・・。
<つづく>