解答です! アストロ球団並? 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
前回の問題・・・。
最初、「ストロベリーフィールズ」理沙役の芳賀優里亜、面接。
次に、鉄男役の波岡一喜君との面談。
さらに、シナリオのリライト。田辺ロケハン。
そして理沙の取り巻きオーディション。
さらに鮭山先生と用務員さん探し。
以上のことがらで何日経過しているだろう?
答え。
芳賀さんとの面接。その日のブログを見てもらえば、日付が書いてある。
2005年8月30日。
そして、用務員役の古本さんが決定したのが、2005年9月1日!
つまり、8月30日、8月31日、9月1日、
答えは3日。
しか経っていないのである。
その間にエピソード数にして、65回分の日記が存在する。毎日、読んでいても、1か月分の話かと思った方もいただろう。
でも、たった3日。その3日間。72時間で、あれだけの展開があったのである。映画作りとは、こういうもの。監督業とは、それをこなさねばならないもの。
自分で振り返っても、ちと驚いた。
思い出したのが、昔、少年ジャンプ」に連載されていた「アストロ球団」という漫画。
6年も続いたのに、野球の試合がたった3つしか描かれていない。というのも、1試合を描くのに2年ほどかかる漫画なのだ。
もちろん、基本は1試合は9回。なのに、2年近くも試合している。このブログも何だか、その乗りだなあ・・と思えたり・・。
さて、ようやく、次回から、メイン・ロケハン2日目の話に入る!
<つづく>
ここで問題!あれから何日経ったでしょう? 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
この「ストロベリーフィールズ」製作日誌。
毎日読んでくれている読者の方なら、映画作りとは「いかに時間と労力がかかるものか?」分かってくれたと思う。
映画というと「撮影」と思いがちだが、その撮影までにさまざまな仕事があること。むしろ、映画製作においては「撮影」は極々一部であること。実感してもらえたと思う。
そんなことを、さらに実感してもらえる事実。
ここしばらくのブログを思い返してみてほしい。東京で、理沙役の芳賀優里亜の面接の話を書いたのを覚えているだろうか?
あのあと、鉄男役の波岡一喜君との面談。
シナリオのリライト。
東京から田辺に移動して、ロケハン。
そして理沙の取り巻きオーディション。
さらに鮭山先生と用務員さん探し。
そこで問題! 以上の出来事で、何日経過しているだろうか?
エピソード数にして、65回分。
さあ、分かったかな? 答えは次回!
<つづく>
用務員・古本役を探せ!(4)2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
垣内さんは接客業をする上で、事実や内容、問題点を明確で分かり易い言葉で相手に伝える技術が 必要だったはず。
でも、単に分かり易すいだけの表現すると非常に機械的で、ロボット的な対応になってしまうことが多い。
なので、やり手の営業マンというのは「気持ち」や「心」を込めて表現をする。「情熱」「やる気」「優しさ」をも伝える。
さらに相手の気持ちを敏感に悟り、自分の思いを表現。それによって、お客は営業マンの熱意に打たれたり、優しさを感じて、信頼感を持つ。交渉もうまく行く。
多分、垣内さんはそんなお仕事の中で、気持ちを言葉で表現するという高度な技術をマスターしたのだ。俳優と同じ「表現法」を会得していたのである。
今回、台詞を読んだときには、いつもの「熱意」や「やる気」ではなく、逆の「やる気のなさ」「諦め」を無意識の内に言葉に込めたのだと思える。
そう考えると、見事な台詞回しの背景が理解できる。こんな方がいるなんて、やはり田辺の演劇層は厚い!
こうして用務員・古本役も決定した! さて、残るはロケハンである。
<つづく>
用務員・古本役を探せ!(3)2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
「今までに演劇経験は、ないんですよ・・」
垣内さんはそう言う。が、全く演劇をしていない人が、バック・グラウンドまで感じさせる見事な台詞を言えるはずがない!
とにかく、用務員役は垣内さんに決定!
だが、なぜ、あんな風にできるのか? 理由が知りたい・・・。 質問した。
ーー学生時代に演劇部だったんでしょう?
ーー社会人になってからも、忘年会で余興をよくやっていますよね?
そう聞いてみたが、全てが「NO!」。今回の弁慶祭が初めてという。
理由がまるで分からない。そこでお仕事をお聞きしてみた。
いろんなことを経験されていた。 いずれのお仕事もお客と接するもの。営業で訪ねたり、店で対応したり。
つまり、仕事内容は製品を売ったり、システムを紹介したり、お客の質問に答えたりと、人とコミニュケーションをするお仕事のようだ。
それで答えが分かった・・・。
<つづく>
用務員・古本さん役を探せ!(2) 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
弁慶伝説保存会の方々にお願いして、引き続き映画「ストロベリーフィールズ」の地元オーディションをさせてもらう・・・。
鮭山先生役の選考に続いて、全員に用務員・古本役の「世の中、こんなもんや・・」という台詞を読んでもらう。
皆、それぞれに工夫して表現してくれたが、難しい。「やる気」のある役なら元気に力を入れて言えばいいが、「やる気」のなさを表現するのは大変。
が、その中に独特の雰囲気を出す人がいた。特に体が大きいとか、背が高いとか目立つ部分はないのだけど、何か惹かれるものがある。
お名前は垣内剛さん。有名俳優でいうと柄本明や米倉斉加年のような地味だが味のある感じ。
台詞を読んでもらうと、「やる気のなさ」が、人生の苦労と共にリアルに伝わってきた。
古本も若いころから「やる気」がなかったのではなく、いろんな苦労をして現在の境地に辿り着いたはず、それを垣内さんは台詞の読み方だけで表現してしまう。
プロでもなかなかいない凄腕。こんな人が田辺にはいるのだ・・が、彼はこう言う。
「実は・・・今まで、演劇経験はないんですよ・・」
嘘でしょう!!!
<つづく>
用務員・古本さん役を探せ!(1) 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
今回の映画「ストロベリーフィールズ」
何人かの俳優を、地元・田辺市で選ぼうと考えた。
そんな一人が、夏美(佐津川愛美)たちが通う学校の用務員・古本役である。
やる気がなく、何事も投げやり、先生たちの前ではそれなりに振る舞うが、生徒が挨拶しても無視するようなタイプ。
「世の中は強い者に逆らっても無駄。努力しても簡単に成功するものじゃない・・」
と思っている大人である。長塚先生や鮭山先生とは、正反対の存在。
だが、悲劇をスタートさせる重要な役である。彼が運転する車が事故を起こし、マキ(谷村美月)たちは大変なことになるのだ。
この古本役が出来る人を探すのは、かなり大変。俳優というのは、本人にないものは出ない。なら「やる気」のない俳優(?)を探さねばならない。
でも、「やる気」がないなら、演劇などしないはず。ということは、「やる気のなさ」を表現できる演技力ある人を見つけるしかない!
(つづく)
地元で俳優探し(11)弁慶軍団のリーダー 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
先にも書いたが泉さんは仕事場で皆を率いて、バリバリと仕事をするリーダー格のイメージがあった。
弁慶伝説保存会の代表であり、芝居の練習を仕切っていた。そこにいるだけで、まとめ役的な、後押し役的な存在感がある。
さらに一見、強引そうに見える泉さん。少しお話すると、実は凄く繊細で気の着く方だと思えた。
「仕事に付いて来れない人はいないか?」「皆、問題なく作業ができているか?」いつも気配りを常にして悩み、考えていると感じる。
そんな性格は見る人にも伝わるはず。その泉さんが副官的な立場で行動を共にするボスが長塚先生なら、彼がいかなる人物なのか?は自然分かってくるはず。
ドラマに登場する京子先生も、長塚先生には一目置いている。それらによって彼は「他の先生たちからも、支持される主流派」であり、「学校で実権を持つ存在」であることを表現できるのである。
ちょっと難しい話になった。が、そんな設定を表現するには、泉さんの存在が大いに力を発揮するのである。あとは現場での活躍を期待するばかりだ。
さて、もう一人の地元で探さねばならないのが、用務員役の古本役である・・。
<つづく>
地元で俳優探し(10)キャラの表現 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
ドラマの中でキャラクターの「背景」や「性格」を説明するのは、なかなか難しい。
主役格であれば、エピソードの中で、「立場」や「生い立ち」を紹介。家族や恋人を登場させることで伝える方法がある。
が、全てのキャラをその手法で説明する訳にはいかない。登場した瞬間に「どのような性格で、どんな立場の人であるか?」を紹介するのがドラマの基本。
「ストロベリーフィールズ」の長塚先生の場合。真面目な教師であること。押しの強い性格であること等は俳優のイメージや服装で説明することができる。
しかし、学校で主流派なのか少数派なのか? 他の先生に支持されているのか? いないのか?を伝えることはできない。
と言って、それを表現するために職員会議のシーンを作り、彼が演説して皆が拍手して賛成する場面を作るのも大変。
メインはやはり夏美(佐津川愛美)たち。全てのキャラクターを紹介するために時間を割くと、もの凄い長さになる。映画は省略の芸術とも呼ばれるくらいだ。それは避けたい。
そこで考えたのが長塚先生と常に、行動を共にする鮭山先生の存在。彼を演じる俳優の持ち味で、その背景を説明することができる。それが泉さんだ。
(つづく)
地元で俳優探し(9)長塚先生の意味 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
まず、この映画「ストロベリーフィールズ」に登場する長塚先生役から説明する。彼は夏美(佐津川愛美)が通う高校の学年主任。
規則にうるさく、生活指導にも勢力的。そんな設定だけ見ればステレオタイプの教師にも見えるかもしれないが、非常に重要な役割がある。
彼は単なる教師というだけでなく、大人の代表でもあるのだ。夏美の母は投げやりで現実を悲観する大人。マキの父は、子供に構わない仕事一筋の大人。それに対して長塚先生は子供たちに厳しい大人である。
でも、そこに悪意はなく、彼が人生で学んだ全てを教えようとする真面目な教育者だ。 言い換えるとモーレツ社員であり、頑固オヤジ。
そう、昭和40年代にはよくいたお父さんたちである。彼らは子供たちのために夜遅くまで働き、社会を支え、日本を発展させて来た。
ここまで書くと、この日記を前々から読んでくれている方は、もうお気づきと思うが、「日本人の心の故郷」について書いたテーマの一端を担うのが、長塚先生なのである。
良かれと思って頑張ってきた。日本人の暮らしを豊かにした。でも、失ってしまったものも多い。
悪意はないのに、大切なことを忘れている。子供たちに伝えるべきものがあることに気づかない。そんなお父さんを象徴しているのである。
さて、そんな設定を描く上で、もうひとつ重要なのが鮭山先生役である!
(つづく)
地元で俳優探し(8)キャスティングの奥義 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
そんなふうに見た目だけでなく、その人の雰囲気が「いかに他の役に影響するか?」もキャスティングでは大切な要素だ。
泉さんの場合。体大きく、強そうというのがまず魅力。仕事場でも仲間を率いてガンガンお仕事をされていると思えた。
鮭山先生役にはピッタリ。だが、これでは「見たまんま」のキャスティングである。この先が重要。
泉さんと少しお話すると、凄く繊細で周りの人の気持ちを非常に考える方だった。
その部分が、鮭山先生のキャラを広げ、彼の上司ともいえる長塚先生の存在も大きくすると感じたのである。
ここからが「第3の選択肢」に当たる部分。「他のキャラに与える影響」である!
今回の「ストロベリーフィールズ」では、特に重要視している部分だ。
<つづく>
地元で俳優探し(7)北野武監督のキャスティング法 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
そんなふうに見た目だけでなく、その人の雰囲気が「いかに他の役に影響するか?」もキャスティングでは大切な要素だ。
以前の作品で、若いプロデュサーが言う。
「●●という俳優が、この役に合うと思うんですよ!」
何度も推薦して来たことがある。が、いずれもプロフィールの写真を見ると、見たまんま!という俳優ばかり。全部却下した。第三の選択肢である「他のキャラへの影響」を全く考えていない。
そんな目先のことしか考えないキャスティングをすると、ドラマの奥行きや広がりがなくなる。
「ソナチネ」「HANA-BI」等で、今や「世界のキタノ」と呼ばれる北野武監督。
彼がヤクザの組員をキャスティングするときの話。
「ヤクザ10人!」というと、助監督は見るからして、いかにもヤクザ!という俳優を10人連れて来た。
そこで北野監督。次からは、こう言った。
「サラリーマン10人!」
俳優が集まってから、俳優にこう言う。
「君たちはヤクザの組員の役です!」
助監督は驚いたらしい。
「今時、いかにもヤクザらしい格好をしたヤクザなんて、数少ない。なのに映画界では未だにヤクザというと、見た目分かり易いタイプを集めてしまう!」
北野監督はそういう。
非常によく分かる話。先の若いプロデュサーもそうだったが、不良というといかにも不良。先生というといかにも真面目。
そんなステレオタイプのみでキャスティングしたがる。が、それではドラマに奥行きも広がりも出ない。
演出は俳優選びからスタートしている。今回もそれに注意して選ぶ。
<つづく>
地元で俳優探し(6)俳優選び3番目の選択肢 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
俳優を選ぶときには、あまり言われない「3つ目の選択肢」がある。それは「他の役に与える影響」。
例えば「真面目なサラリーマンの奥さん役」というのがあったとする。美人で細面のイメージ。でも、美人で細面にも、いろんなタイプがある。
例えば、妻を真面目な美女にすると、真面目なサラリーマンの夫と照らし合わせて、平穏な夫婦生活を送っていると思えるだろう。
でも、美人妻でもいかにも不倫をしそうな派手なタイプにすると、夫はそのことをいつも心配しているのではないか?と想像してしまう。
観客も「妻は、他の男に走るのでは?」と考える。
あるいは金遣いの荒そうなタイプの女性にすると、旦那が真面目に働いた給料を妻が湯水のように使い、夫は悩んでいるのでは?と想像。
さらに「金遣いが荒くなったのは、夫にも原因があるのかも? 真面目に見えて実は夫に愛人がいて、それに気づいた妻が荒れているのではないか?」とか考えることもできる。
ドラマの中で描かなくても、様々な想像ができて話が盛り上がる。
また、その展開がドラマの中でも描かれれば、「ああなるほど!そうだったと思った!」と観客は納得。
あるいは、浮気しそうなタイプの女優をキャスティング。不安に思わせておいて実は夫が不倫していたという展開にして、「えーーーー? 逆なの!」と観客を驚かせることもできる。
ドラマ展開ばかりでなく、キャスティングにより物語を深くすることもできるのである。
<つづく>
地元で俳優探し(5)俳優の選び方 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
配役を決めるときに大切なのはまず、見た目。「その役に合っているかどうか?」である。
次に演技力。いくら役に合っていても演技力がないと観客がシラけてしまう。ここまでは候補の5人全てが合格である。
が、実はあまり言われない判断材料が、もうひとつある。
その3番目が決定打として、鮭山先生役は泉清さん(写真下)に決定。お願いすることにした。彼は弁慶伝説保存会ではリーダー的存在である。
が、それがあるので泉さんは「監督が気を使って、自分を選んでくれたのではないか?」と思ったらしい。
そうではない。彼が持つ、ある強い魅力が決め手となったのである。
<つづく>
地元で俳優探し(4)役は2人分! 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
彼らグループの正式名称は「弁慶伝説保存会」。皆、個性的で一目見たら忘れられないタイプばかりだ。
おまけに台詞を読んでもらっても、うまく迫力がある!
取り巻きグループの女の子たちもそうだったが、田辺市の演劇層は本当に厚く、個性と演技力を兼ね備えていることに驚かされる。
もう、誰に出てもらっても絵になるし、ドラマが盛り上がるので嬉しい困惑が続く。できれば全員に出てもらいたいところだが、役は2つ。
取り巻きのときのように増やす事ができない設定なので、苦渋の決断で2人だけを選ばせてもらう。
まず、鮭山先生役。武闘派、強面、大柄、の怖い先生である。その条件に当てはまる方は5人ほどいた・・・。
<つづく>
地元で俳優探し(3)弁慶軍団登場! 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
30—40代の男性の役。だが、その年齢の方なら、昼間は仕事で撮影どころではないことにも気づく・・。
何とか、出てもらる人はいないか? と聞いてまわると、ある方が「弁慶祭に出る人たちが、近所で稽古をしていますよ!」と教えてくれた。
それは好都合。芝居に出るのなら演技が出来るはずだし、弁慶役をするのであれば、体格もいいだろう。
ワクワクしながら、スタッフと共に稽古場に向った!
稽古場に入ると、十数人の男性。その何人もが大きく屈強の体つき! まさに弁慶大集合という感じだった。
こういう人たちを探していた! オーディションへの参加がゼロだったので、かなり心配になっていた。が、彼らを見ると嬉しくて、もうニコニコ。
事情をお話して、「ストロベリーフィールズ」地元オーディション・パート2をさせてもらった!
(つづく)
地元で俳優探し(2)鮭山先生と古本さん 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
男性俳優・候補は引き続き探す。
役は2つ。学年主任である長塚先生と、いつも行動を共にする武闘派の鮭山先生役。体育系で体が大きく威圧感あるタイプ。
製作費が足りなくなったとき、一度はシナリオ上でカットした役。重要なので復活させた。ただ、地元で探すことが必至である。
もう一人。探している役・・・。
主人公の夏美(佐津川愛美)の通う学校の用務員・古本役。何事にもやる気がなく、なげやりなタイプである。
分かり易く例えると、鮭山先生はジーン・ハックマンや「バック・トウ・ザ・フュチャー」のビフのようなタイプ。
古本さんはハービー・カイテル、ジョン・ハートのような地味な名脇役タイプ。
両者共に台詞があり、ドラマの上でも重要な役。演技力も存在感も必要。
それらを地元の方にやってもらうことで、より強いリアリティを持ち込み、ロケ地である田辺市の「町感」や「奥行き」をも表現したいのだ・・。
(つづく)
地元で俳優探し(1)嬉しい出会い 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
何とか、取り巻き5人組にリハーサルをして、映画撮影について勉強する時間を取りたい。
が、東京に戻ってから、やるべきことも山積み。それどころか、まだ地元でやるべきことも、数多くあった。
ロケハンも、まだまだ終わっていない。先に紹介した理沙の取り巻き5人組以外にも、田辺市在住で出演してもらうための大人の男性が2人必要。
オーディションに来てくれた20数名の内、男性は5人。役の年齢層とは一致しなかった。
が、嬉しい出会もある。
2人の若者が映画のお手伝いをしたいといって、ボランティア・スタッフとなってくれた。大前君や中尾君である。(写真は大前君)
撮影時の強い味方である。期待!
<つづく>
地元オーディション(10)厳しいスケジュール! 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
そして「天国への階段」のシーンを撮影部、照明部、美術部と打ち合わせ。
なるべく予算がかからず、それでいて幻想的な感じを出すには、どう撮影するか?アイディアを出し合い、決める必要がある。
特撮も問題。マキたちが幽霊になって帰って来る墓場のシーンは、どう合成するか? 専門家を呼んでレクチャーを受ける予定。
また、決定した役者には宿題ビデオを渡す。主要キャストは20人。1人10本として200本。1本2時間なので、ダビングには400時間かかる!
自宅でシナリオ直しの作業をしている間中、ビデオをコピー。2時間ごとにテープを取り替える。
テープ代だけでも大変なので、これまで僕が持っていた200本の映画コレクションを全部潰して、ダビング用とした。
とにかく、やらねばならないことが山ほどある。でも、地元オーディションで選んだあの5人組のリハーサルをしたい。
少し練習すれば、彼女たちの演技は飛躍的に伸び、初めての撮影でも戸惑うことなく、力を発揮できるはず・・。
なのに、時間がない。どうすればいいのか・・。(つづく)
地元オーディション(9)リハーサルの可能性 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
だが、大きな問題があった・・・。
リハーサルをするにも数日後に、僕は東京に戻らなければならない。
そしてクランクインが目前になると監督業というのは、もう寝る暇もないくらいに忙しくなる。いや、すでに数週間前からその状態だ。
おまけに今回は、僕自身がシナリオを書いている。ライターが別にいれば、リライトをお願いし、その間に他の準備ができるのだが、そうはいかない。
まだ、俳優もまだ全部決まっていない。決まった俳優との打ち合わせや、各技術パートとの打ち合わせもある。
演出部とは小道具や衣装について、昭和40年代をどこまで正確に再現するか? を伝え、彼らが調べ、探してくれたものをチェック。
幸い僕は40年代を経験しているが、若い助監督はまだ生まれてなかったりする。イメージを伝えるのは大変。
まだまだ、やることはある・・。
<つづく>
地元オーディション(8)予想以上のレベル 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
オーディションは終了。
20数人来てくれて、5人も実力ある子がいたというのは凄いこと。演劇学校でも、実力者は50人に1人いるかどうか? が普通。
これは、かなりな演劇的な土壌が田辺市にあるか? 文化レベルが高いということなのかもしれない。
ただ、気になるのは彼女たちが舞台演劇を中心に活動していたこと。映像経験がない。
同じ演技でも舞台とドラマではかなり違う。基本的に舞台は、観客に声が届くように大きな声で大げさに演じる。
それに対してドラマは、ささやく台詞もマイクが拾ってくれる。カメラでクローズアップが撮れるので、瞬きひとつで戸惑いを表現できる。その辺、5人組は未経験。
でも、あの子らなら、少しでも勉強できればこなして行けるはず。撮影前にリハーサルをし、レクチャーをしようと考え た。しかし・・・。
<つづく>
地元オーディション(7)劇団「ふたり」? 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
オーディション、ラストの2人。
1人が「夏美」と「美香」。1人が「マキ」と「理沙」を担当。指定されたシーンのセリフを読み始める。
・・・・驚愕! 役を完全に読み分けていた!
声の調子やニアンスを変えて、2人で4人分の台詞を読むこなす。まるでラジオドラマを聞いているようだ。オーディションということを忘れて、聞き入ってしまう。
2人のユニット名を「劇団ふたり」とつけたいほど!
あとで聞くと、実はこの2人、地元でも有名な熊野高校演劇部。かなりなレベルだという。
たぶん、その中でもトップクラスの2人だったのだろう。それにしても凄かった!
こうしてオーディションは終了。
水準以上の実力者が5人!でも、役は3人分。皆、甲乙付けがたい。
5人とも個性があり、可愛く、ユニークで、面白い。どう選べばいいのか?
散々考えて、全員合格!ということにした。
落とすのは、あまりにももったいない!
シナリオを書き換えて、理沙(芳賀優里亜)の取り巻きを、5人に増やすことにする。
合格者は山下遥、安達春日、満月右紗、田上絵莉香、玉置麻耶
この5人に、出演をお願いすることにした!
(つづく)
地元オーディション(6)実力者が集結? 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
あとの2人も個性があって、とてもいい!
「この3人で、決定にしようか?」
と思ったが、まだあと20人ほど。外で待ってくれている。
終わりという訳にはいかない。とりあえず、1人決定。2人キープで審査を続ける。
結局、彼女らに匹敵する人材はなかなかおらず、最後の2人となる。
ここまでは4人ずつで審査、夏美たち4人の役を演じてもらった。
「が、もう2人しかいない。どうしようか?」
と考えていると、内の1人が凄いことを言い出した。
「だったら私ら2人で、4人の役を全部やりましょうか?」
この子ら、何者なんだ!!?
<つづく>
地元オーディション(5)素人を越えた子! 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
一般オーディションの場合。遊び半分や興味本位で来る子もいる。
が、今回はほとんどが真剣。
とはいえ皆、不安顔。そんな中、1人だけ明らかに雰囲気が違う子がいた。
オーディションというより戦いという気迫。背後に青い炎が上がり、
「私を採用しないと、後悔しますよ!」
という、強い波動を出している。
プロの俳優でも、ここまでエネルギーを感じる子は少ない。
台詞を読んでもらうと、抜群にうまい。
聞くと和歌山県主催の演劇イベント「オグリ伝説」で、主役を演じたという。
「ということは県内での、トップクラスということか?」
いや、彼女のレベルはもっと上だろう。和歌山や近畿だけではなく、芸能界でも十分通用するものがある。
オーディションの最中に「ラン役は、この子で決まり!」と思った。
理沙(芳賀優里亜)の取り巻き女子高生3人組の中でも、最も重要で台詞も多いリーダーの役である。
プロフィールを見る。名前は「山下遥」。
こんなレベルの高い子がいるとは、嬉しくなる!
(つづく)
地元オーディション(4)プロ級の子! 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
「地元の人に、出演してもらいたい!」
その気持ちは強い。でも、ある程度の実力がなければ、無理には出てもらうべきではない。
話題作りのために出演してもらうのではなく、「地元感」を出し映画をよくすのが目的なのだから。
「もし、1人しか合格ラインに達しないなら、あとの2人は東京から連れて来る」
そう考え、厳しい姿勢で臨む。
最初の4人は、現役高校生2人と卒業生が2人。
自己紹介のあと、台詞を読んでもらった。
4人いるので、主人公の夏美、マキ、理沙、美香の4人が会話するシーンをお願いする。
これがビックリ!
その中の3人。抜群にうまかった。お世辞ではない。
僕はここ何年もワークショップ、演劇学校で10-20代の子たちを教えている。
その子らと比べても、トップクラスの実力。
間の取り方、言い回し、会話のキャッチボールどれも見事。皆、レベルが高い。
そして、その中でも1人、群を抜いた子がいた・・。
<つづく>
地元オーディション(3) クラスメート役 /2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
商工会議所の会議室を借りて、「ストロベリーフィールズ」地元オーディションを開催。
20才前後の若い女性が、大勢参加してくれた。
彼女たちは夏美(佐津川愛美)のクラスメートで、理沙(芳賀優里亜)の取り巻き役候補。
非常に重要な役、4シーンも出演する!
台詞もたくさんあるし、主人公たちとも絡む。かなりの実力がないと、差が歴然となりドラマが盛り下がる。
下手するとドラマが破綻する。必要な人数は3人。それを20人ほどで争う。
オーディションは、通常の形で行った。
まず、自己紹介。そしてシナリオを読んでもらう。
参加してくれたのは、コギャル風の子からまじめな女学生まで多彩。
演劇部出身から、バラエティの乗りの子まで。さまざま。
4人ずつ部屋に入ってもらい、夏美、マキ、理沙、美香の4人が共演するシーンの台詞を読んでもらう・・。
果たして?
(つづく)
地元オーディション(2)出演者募集! /2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
もちろん、「葬式」や「学校」のシーンでは地元の方々に、エキストラ出演をお願いする。でも、そういうことではない。
「地元の人にも、台詞がある役を演じてもらうことで、映画としても奥行きが出るのではないか?」
と考えた・・・。が、やはり台詞というのはある種の訓練をしないと、うまくできないもの。
これほど素人とアマチュアの差が出るものもない。 悩んでいると、あるスタッフがこう言った・・。
「地方には昔、東京で俳優をしていたとか、今も演劇活動をしているという人が必ずいる。そういう人たち、探したらどうですか?」
それはいい方法だ。地元の新聞が映画「ストロベリーフィールズ」の「出演者募集」の情報を掲載してくれた。
続々と送られて来るプロフィール。数十人の希望者があった!
<つづく>
地元オーディション(1)田辺感を出す? 2005/9/1 [第九章地元オーディション篇]
今回、ロケ地である和歌山県田辺市行きの目的は、
ロケハンだけではない。
地元でのオーディションが目的だ!
というのも・・・。
「ストロベリーフィールズ」は、念願だった故郷での映画作り。よくある観光映画で終わらせたくない・・・。
だが、地方を舞台にした映画やドラマは、単に美しい「観光地」を背景にドラマを撮ることが多い。
そんな撮り方をすると、安易な「町のPR」映画になってしまう。
町の「奥行き」や「暖かさ」が出ない。風景が美しいだけで、映画としても面白くない。
そんな映画とても多いが、そんな作品には絶対にしたくない!
旅行でも「名所」や「観光地」を見ることだけが、楽しいのではない。
「旅館の女将さんが面白い人だった」
「道を聞いたときに、親切に教えてくれた」
地元の人の「顔」や「言葉」。「人柄」が街の印象につながる。
「いい町だったなあ・・」
と思えるのは、地元の人との暖かい交流が大きい。映画も同じ、人間が大切だ。
なので、今回の「ストロベリーフィールズ」。
単に東京から俳優を連れて行き、地元の風景を借りて撮影するだけで終わらせない。
地元・田辺市の人たちにも、出演してもらう!
それによって映画に「田辺感」を出せないか?考えてみたのだ・・・。
(つづく)