役に合わない俳優を推薦するP・Ⅱ/2005年7月 [第24章 最終決戦!篇]
何かおかしい・・・。そのプロデュサーはシナリオを理解して、俳優を推薦しているとは思えない。
そんなとき、気付いたことがある。彼が持って来る俳優の所属事務所は、全て同じところ・・・。
「この役にピッタリ!」と思った俳優が、たまたま全て同じ事務所に所属していたのだろうか? 大きな事務所で、いろんな人材を取り揃えている会社もある。
が、候補に上げる俳優の全て、十人以上が同じ事務所なんてあり得ない。むしろ、Pはその事務所から、候補者を選んでいると考える方が正解だろう。
では、なぜ、彼は同じ事務所から俳優を選ぶのか? もし、彼がそこの社員とかマネージャーなら分かるが、別の会社の社員プロデュサーである。
答えは業界の友人が、教えてくれた・・・。
<つづく>
役に合わない俳優を推薦するP/2005年7月 [第24章 最終決戦!篇]
これは以前の話だが、ある仕事でこんなことがあった。
プロデュサーが次々に、俳優のプロフィール(経歴書)を持ってくる。
「この子はA子役にピッタリです」「僕はこの俳優がB男役に相応しいと思います」
そう言うが、どれも役のイメージとはズレている。残念ながら採用できない。「もしかしたら、いいかも・・」という予感さえ感じない。
でも、彼は次々にプロフィールを持って来て、「演技力があっていいんですよ」「この俳優はこれからブレイクしますよ!」とか、薦める。
その内に、ズレているどころか、明らかに役とは違う俳優を候補に上げ出す。
「1度、会ってほしい!」と粘るので会うと、俳優の卵以前の素人。挨拶さえまともにできない子だったりした。
何かおかしい。シナリオを理解して、俳優を推薦しているとは思えない。そんなとき、あることに気付いた・・・・。
<つづく>
キャスティング問題/2005年7月 [第24章 最終決戦!篇]
本来、キャスティングとはいうのは、役に合った俳優を選び。ルックスや演技力を考えて決定するもの。
知名度というのも大切。だが、あきらかに合ってない俳優を人気があるからと、キャスティングしてしまうことも少なくない。
「この人はお父さんというキャラじゃないだろう?」と、いう俳優を選んだり。「この2人は恋人にはならないだろう?」というカップルだったりするのは、そんな背景がある。
人気俳優が出た方が、映画は話題になりやすいが、肝心の映画を見たとき、しっくりこないようでは意味がない・・・。
<つづく>
有名女優さんの事務所より返事!/2005年7月12日 [第24章 最終決戦!篇]
依頼した有名女優さんの事務所より、連絡。
「太田さん! いい話しですねーーー!」
社長(女性)は「ストロベリーフィールズ」のシナリオを読み、大感動。泣けたとのこと。
「送ってもらったビデオで田辺の風景を見て、ここでこの物語が展開すると思うと余計に感動しますね。事務所的にはぜひ、ぜひ! 春美役をやらせてほしいです」
とのことです。あと、本人が読んで気持ちを聞き、結論を出したいとのこと。
それと、いくつかの役で、事務所的に推薦したい役者がいるので、プロフィールを送らせてほしいとのこと。
かなり、気に入ってもらったようだ! よっしゃー!
<つづく>
ある有名女優に出演依頼! /2005年7月 [第24章 最終決戦!篇]
ようやく、キャスティングがスタートしたことで、僕が一番出演してほしかった俳優さんにまず、アプローチした。
2年前のドラマでご一緒した女優さん。撮影中に「ストロベリーフィールズ」の春美は、この子しかいない!と感じた。
通常、出演依頼は制作会社を通して、所属事務所に連絡する。
が、先方の社長もよく知った方。僕の思いを伝えるためにも、自身で電話した。
そして、その女優さんへの手紙と共に、シナリオ、町の写真、田辺ビデオをお送りする。
彼女は今やドラマだけでなく、バラエティ番組でも大活躍。誰もが知っている女優。
果たして、僕の映画に出演してくれるだろうか?
<つづく>
「ストロベリーフィールズ」あらすじ紹介Ⅱ/2007年7月 [第24章 最終決戦!篇]
高校生の夏美。父の形見である8ミリカメラで、風景を撮るのが趣味の淋しい17歳の少女。
いつも姉・春美にいじめられている。その夏美の協力で、幽霊の3人は最後の思い出を作ろうとする。
学級委員の美香。憧れていた上級生に恋の告白をしようとする。
成績はいいが影番の理沙。寂しいとき独りで見ていた夕陽を見たいという。
そして、けんかっ早い柔道部のマキ。離ればなれの母親に会いたいという。
だが、タイムリミットがあった。死んでから48時間が経つと、死神が彼女たちを連れに来る。
死んだ時間はそれぞれに違い、最初は美香。次が理沙。そしてマキの順番であることが分かる・・。
果たして、マキたちは最後に思い出を作ることができるのだろうか?
昭和40年代を舞台に繰り広げられる、感動と涙の青春ファンタジー・・というのが「ストロベリーフィールズ」の物語である。
<つづく>
「ストロベリーフィールズ」あらすじ紹介 /2007年7月 [第24章 最終決戦!篇]
キャスティングの話を書く上で、「ストロベリー」の登場人物が分からないと、説明しにくくなって来た。
そこでストーリーを紹介する。
昔、懐かしい町並みと、夕陽が美しい田舎町。そんな街で事故死した3人の女子高生が幽霊になって48時間だけ、この世に戻って来る。
でも、誰にも見えないし、話すこともできない。おまけに仲が悪く、生きているときは、いつもいがみ合ってばかりいた。
そんな彼女たちの姿を唯一、見ることができたは友達のいない同級生・夏美である・・・。
<つづく>
伊丹十三式キャスティング/2005年7月 [第24章 最終決戦!篇]
でも、うるさ型の母親。おとなしい神経質な息子というのも、実際にはいる。その場合は父親がおとなしい人で、息子は父に似ていることが多い。
そうすると父親が物語に登場しなくても、息子の性格で存在を感じさせることもできる。
キャスティングだけで、いろんな表現が可能。伊丹十三監督も、メイキング・ビデオの中で言っている。
「マルサの女」では脱税王の権藤という役を表現するのに、愛人役のキャスティングにこだわった。
妻、愛人1号、愛人2号。その3人を、バラバラなタイプで選んではいけない。男の趣味というのは基本的に同じで、どこか似たところがある女性を好きになる。
そこから権藤の趣味や指向性が見えて来る。というのだ。なかなか深い意図がある。
夏美の両親。先生等を選ぶ時も、その辺を気をつけて進めたい。
<つづく>
キャスティングの極意/2005年7月 [第24章 最終決戦!篇]
ただ、主役が決まらなくても、決められる役もたくさんある。
「ストロベリーフィールズ」の主人公・夏美は高校生。その子を14歳が演じようが、19歳が演じようが、先生役とか、両親役はそんなに影響がない。
その辺のキャスティングは進めて行ける。
が、別の意味で、気をつけなければならないことはある。「この子の親が、こんな感じであろうはずがない!」という俳優を持って来てはいけない。
子供が強気の場合は、親も強気なことが多い。この子にして、この母あり。みたいな。
或いは、凄く顔立ちがハッキリしている娘なのに、母が薄い顔をしているのも不自然。
アメリカでも「like father like san」ということわざがある。あまりにかけ離れていると、違和感がある。
<つづく>
ふぞろいのイチゴたち/2005年7月 [第24章 最終決戦!篇]
今回の「ストロベリーフィールズ」は女子高生の話。「ふぞろいのイチゴたち」とでもいうべき物語。
ただ、女子高生のドラマは往々にして、20才くらいの女優が演じることが多い。
僕としては現役・女子高生にこだわりたい思いがあるが、演技力等を考えると18歳、19歳という子でないとむずかしい・・ということもある。
そんなとき、主役が18歳に決まれば、他の子が同級生に見えるように同じくらいの年齢で揃える必要がある。
もし、主役が14歳なら、それに合わせる。そこに20歳代の子たちが入ると「ふぞろい」を越えて、これは中学?高校? 先輩と後輩?と戸惑ってしまう。
そのためにも、まず、主役を決めることが大切。
<つづく>