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第26章 殺されてもやる!篇 ブログトップ
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副業の5万円。製作費に!/2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 先日、俳優さんからもらったリストで、片っ端から企業を当たる。

 が、もともと、マイナーな地方ロケの上にファンタジーという内容が災いして、評版がよくない。或いは、投資を決めるには時間がかかるといわれる。

 秋までには撮影に入らないと、企画自体が潰れてしまう。何か月も待つ余裕はもうない!

 友人、知人にもメールや電話で連絡。投資してくれる企業はないか? 聞いてまわる。

 と、以前に仕事をした40代の俳優さんからメール。

 「俳優業だけでは食えず、別に副業をしています。先日、予定外の仕事があり、収入がありました。5万円ほどですが、もしよかったら製作費の足しにしてください。
 
 これは私を出演させてほしいということではありません。シナリオを削減、役を減らしている話も聞いています。
 ただ、この1年ほど、太田監督を見ていて、何とか『ストロベリーフィールズ』を完成してほしいと思えるからです。頑張って下さい!」

  涙が出た。彼も決して裕福な生活をしている訳ではない。なのに・・胸に染みる。返事を書いた。

 「最後の最後まで投資が集まらなければ、お願いするかもしれません。が、本当に最後の最後まで、お願いしてはいけないお金だと思います。
 今は、そのお気持ちだけ。ありがたく頂いておきます」

<つづく>



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巨匠も越えた危機Ⅱ /2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 大林監督は地元の協力を得て「転校生」の撮影を完了する。

 映画にクレジットされた大手企業は、撮影後に参加したもの。こうしてあの名作「転校生」は完成した。監督はこう話してくれた。

 「もし、あのとき諦めていたら、のちの尾道シリーズはなかった。そこからデビューした俳優たちも、今がなかったはず。今の自分もいなかったかもしれない。
 だから、諦めてはいけない。映画には多くの人の『人生』がかかっているだよ」

 「転校生」も「ストロベリ−フィールズ」と同じ、危機的状況に見舞われていたのだ。巨匠はそんな困難を越えて来た・・・。

 僕も、負けてはいけない。必ず撮影まで行き着かねばならない。そう思えた・・。

<つづく>


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巨匠も越えた危機/2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 久々に大林宣彦監督をお訪ねする。

 投資会社が撮影直前撤退した事情を話す。と、監督は優しい顔で頷き、こんな話をしてくれた。

 実はあの「転校生」でも同じことがあった。スタッフがみんな尾道に行き、撮影準備をして、あと監督の到着を待つだけの時期。そのときになってスポンサーが降りると連絡がある。

 稀ではあるが、映画作りにはそういことがある。そしてたいていの作品は撮影中止になり、製作中止になって終わる。

 でも、大林監督はこう考えた。映画を潰す事は、それに関係する多くの人たちの人生を潰すことになる。絶対に中止しない!

 そう言って、製作費のないまま尾道へ向った・・・。<つづく>


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ある俳優からの応援/2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 少し前にシナリオを短縮したとき。2人のキャラクターを切った。架空の人物とはいえ、この5年間付き合ってきた人たちだ。今も胸が痛む。

 その内の1人が鮭山先生。モデルがいた。俳優なので、その人に演じてもらおうと思っていた。

 役がなくなったので、依頼することができなくなる。そんなとき、彼と久々に会った。事情を話すと、「自分をイメージして役を書いてくれただけでも嬉しいです」と言ってくれた。

 そして、撮影直前に投資会社が撤退したことで、製作さえも危ぶまれていることを伝えた。

 「僕が出られなくても、せめて映画を完成してほしいです! がんばってください」

 そう励まされた。翌日、彼からメールが届く。
 
 そこにはいろんな会社の名前がリストアップされていた。

 「アルバイトでビデオ会社のスタッフをすることもあり、映画に投資する会社の情報が入って来ます。もし、監督の参考になれば・・とリストを作ってみました。応援しています」

 彼の役を切ってしまった僕なのに・・・ありがたい・・。

<つづく>


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投資会社見つける!でも、/2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 製作費。残り3分の1を出せる会社を見つける!

 多少の条件はあるが、悪い話ではない。

 早々に連絡。が、すでに投資している会社が「あそことは組みたくない!」と言い出す。

 この絶対絶命の危機に、何をいうか!

 お前ところを外して、先方を入れてやろうか!とさえ思う。

 その会社は切り札として置いておき、別の会社を探す。

<つづく>


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信頼と疑惑 /2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 応援してくれている社長を訪ねる。今度は、僕の方が信頼されなかった。

 「なぜ、今になって製作費の3分の1がなくなるの? 何で、その会社が投資しなくなったの?」

  そう聞かれた。説明すると、社長は首を捻る・・。

 「それは変だ・・・怪しい。何か、あるんじゃないか?」

 映画界では、信じられないような酷い話がある。ダマされる会社も多い。詐欺スレスレのこともある。いや、詐欺そのものというのもある。

 社長は非常に慎重。同席した別の社長にも意見を求めてくれた。が、皆、首を捻る。

 「監督とは付き合いも長いし、信頼もしている。でも、何か引っかかるものがある。その手のものには手を出さない方が安全。今回は応援できない。別の機会にまた仕事しよう!」

 僕が先方にヤバさを感じるように、こちらが信頼されない事も多い。でも、時間がない。何とかせねば・・。

<つづく>


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危ない会社/2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 友人の紹介で、あるビデオ関係の会社を訪ねる。

 社長に会って、話を聞いてもらう。

 「太田監督の情熱が伝わって来る。シナリオもざっと読んだだけだがよく書けている。どうかな? うちの会社に仕切りを任さないか? 足りない額は何とかする」

 細かい条件を聞いた。そして、制作の方向性を質問する。

 んーーーーーー、いい話のようでいて・・怪しい・・・。何か引っかかる。

 今までも何か引っかかることがあるときは、必ずあとでトラブルとなる。最初は好意的でも、都合が悪くなると性格が変わる人もいる。が、その手の人は最初に必ずアレ?と思う。

 特にこの業界は、危ない人が多い。口八丁の社長もたくさんいる。うさん臭い連中がゴロゴロしている。

 残りの額を早く集めないといけないが、判断を誤ってはいけない・・・。

<つづく>
 
 


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営業は続く! オタクの特長/2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 友人の分析は続く。

 「プロデュサーというより単なるオタクだよ。オタクの特長は自分のことで精一杯で、他人のことを思いやる余裕がない。自分を中心にしか考えられない。

 だから、すぐに自分の好みを主張する。身のまわりのこと(姉)が基本になってしまう。

 社会や報道を見ていれば分かりそうなことでも、想像力が欠如しているのでリアリティを持って見れない。それでいて、自分は優れていると思いがちだね。

 他のプロデュサーは皆、死神や幽霊にリアリティを感じないというんだろ? なのに、姉ちゃんにリアリティないなんて、アニメおたくだよ。リアルな人間より幽霊が分かり易い。

 あとマザコンも少しあるかも。結婚しても嫁に対して『ママの作ったみそ汁の味と違う』なんて平気で言う奴いるんだよ。
 シナリオ読んで、『うちの姉はこんなに酷くない』というのと、感じ方が近いような気がするなあ〜」

 確かに・・・。まともに相手にしてられないので、パスして次の営業先にへ向う。

<つづく>


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営業は続く! オタク?/2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 「あと、主人公のお姉さん。かなり変ですよね? あんなに妹をいじめる姉なんていないでしょう? リアリティがない。僕も姉がいますけど、あんなじゃないですよ!」
 
 ため息が出る。これがいい大人の、プロデュサーが言う事か? ニュースを見れば、親が子を虐待して殺してしまう事件が頻繁に報道されている。
 学校でのイジメも大きな問題。兄が弟を殺してしまった事件が、つい先日もあった。

 そんな社会状況を知らないのか? それも自分の姉と同じじゃないと、ドラマにリアリティを感じることができないのか?

 犯罪に手を染めるサラリーマンのドラマを見て、「うちのオヤジは、ああではないからリアリティがない!」というのだろうか?

 んーーーーー、こんな人も存在するのだと思え、ビックリ。後日、友人に話すと、こう言われる。

 「その人は、俗に言うところのオタクじゃないかな? アニメ好きのオタクが勘違いで映像関係に就職するのは、よくあることだよ・・・」

<つづく>


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営業は続く! 変なプロデュサー /2005年8月 [第26章 殺されてもやる!篇]

 ある映像関係の会社。プロデュサーがシナリオを読んでくれた。担当者は30代の若い男性なので、期待!

 後日、感想を聞きに行くと、こう言われる。

 「シナリオの冒頭はモノローグで始まりますよね? でも、僕はモノローグ。好きじゃないんですよね〜」

 第一声がそれ・・・呆れた。業界で働く者なら、まず客観的に作品を理解することが大切。その上で批評。自分がどうこうより、観客がどう思うかを考えるのがプロだ。それをいきなり「僕は好きじゃない」と言い出す・・。

 「このシーンは、モノローグでない方がいいんじゃないですか?」

 これは分かる。芝居や映像で語った方がいいというのは、ひとつの提案。だが、彼は「僕は好きじゃないですよ」という。

 自分の趣味を主張しているだけ。素人が「あの映画は嫌い」「あの俳優は好きじゃない!」というのはOK。
 しかし、映像の仕事をしているのなら、最初に自分の趣味を上げない。プロとしての自覚がないと思える。

 「僕はモノローグ好きじゃないから、外してもらいますよ・・・」

 と言う意味なのか? だが、彼の趣味を満足させるために、シナリオを書いた訳ではない。この人と話しても無駄かな?と思えたが、最後まで感想を聞く。

 「あと、主人公のお姉さん。かなり変ですよね? あんなに妹をいじめる姉なんていないでしょう? リアリティがない。僕も姉がいますけど、あんなじゃないですよ!」

 はあ〜? 何ですか、それ?

<つづく>


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