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第十五章 死神を探せ!篇 ブログトップ
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映画「ストロベリーフィールズ」決定キャスト紹介続報 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]

 映画「ストロベリーフィールズ」のいちご四人娘らメインキャラ、以外の登場人物を紹介。

この面々をクランクインまでに探し、決定せねばならない。


夏美の母・・・夫に死なれたショックを今も引きずる。


夏美の父・・・病気で数年前に死去。


マキの父・・・アル中で町の嫌われ者。でも、腕のいい梅栽培者。


マキの母・・・・夫に愛想をつかし家出。行方不明。


裕子先生・・・生徒に理解はあるが、長塚先生に逆らえない若手教師。


長塚先生・・・・厳格な教師。学年主任。


死神・・・・・奈佐健臣!11131986.jpg


<つづく>

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと13日!





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死神役オーディション(終)大決定! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]

 その素晴らしい俳優さん名前は、奈佐健臣!

 しかし、あの天下の唐十郎の状況劇場で地獄の稽古してこられた方なら、そのくらいの演技。御茶の子さいさいだったかもしれない。

 が、僕としては、この人なくして死神はあり得ないと感じた。

死神B.jpg

 通常は、オーディション終了後。再検討。他の俳優さんとも会ってから、1人を選び、事務所を通してお願いする。
 このときも、他に数人の候補がいて、順に会う予定だった。

 が、もし、そうやって数日を過ごしている間に、奈佐さんが別の作品に決まってしまったら・・・。
 そう思ったら、いてもたってもいられない。小川Pに小声で言う。

 太田「今、決めちゃって・・いいですかね?」
 小川P「へ?」

 太田「まずいですか?」
 小川P「いや、監督がそう思うならいいですけど?」

 太田「では、奈佐さん。死神役。お願いします!」
 奈佐「・・・・・・・・・?」

 奈佐さん。「は?」という顔をしている。あとで、いろんな仕事をしたけど、こんなことは初めてと言われた。僕も初めて。

 こうして、一番難しいと思われた死神役。長い長いドラマを経て、決定したのである。!

 
<つづく>

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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死神役オーディション(10)本物の俳優! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]


 その演技は、完全ではなかった。

 が、それは理解できた。それも100%でないのに、伝わった。だから、迷う事なく「違う」と思った。

 「あのシーンかな? それならいいけど、このシーンなら少し違う」

 という印象ではない。間違いなくあのシーンだ! と全く疑うことなく伝わっていた。

死神A.jpg

 その上、彼自身もその演技が完全でないことを察知して、自身で再チャレンジ。

 そして、次には文句の付け用のない表現を見せたのである。

 この世界。本当に凄い人がいる!

 どれだけ説明して、コミニュケーションをして、何度も仕事をしても、本当に意図を理解できない人も多い。が、ものの数分で、全てを理解する人もいる。

 三船美佳さんもそうだった。

 長年の親友にでも伝わらないことが多いのに、自分が求めるものを数分で理解し、表現してくれる。

 そんな、ずば抜けた本物の人々がいてこそ、本当に素晴らしい作品ができるのである。

 その死神候補の俳優さんにも、そんな資質を感じた・・。

<つづく>

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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死神役・最終オーディション(9)間違いなくあの場面! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]


 何が凄いのか? 死神の登場場面は、たくさんある。

11648429.jpg

 夜の階段で初登場するところから、美香、理沙、マキと連れ去る場面。

 それぞれの中にいろんな動きがある。その中のひとつだけを、彼は選んで演じてくれた。

 その瞬間。僕は「少し違う・・」と思う。

 そのときは「違う」ということが意識の大半を占めていて、彼の本当の凄さを感じていない。本当の凄さは何か?

 数々ある死神のシーンの中、振り向いただけで、どこのシーンかを伝えていたのである。

 振り向く演技は、何度かある。

 が、その表現は間違いなく「美香が連れ去られるとき、マキに引き止められて振り返った場面」であった・・・・。

<つづく>

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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死神役オーディション(8)状況劇場の実力! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]


 まずは、状況説明だけを書く。

死神1A.jpg

 その俳優さんは、いきなり振り返り、背後を睨みつけた。僕は声には出さないが、

 「少し違う・・」

 と思う。 直後、彼は僕のリアクションを見る事なく、

 「違います・・もう1度・・」

 と言って、また前を向いて、振り返った。

 「これだ! 凄い!」

 圧倒的な迫力。気品。力強さ。死神の条件の全てがそこにあった。 さすが、唐十郎主催の状況劇場の元・劇団員!

 が、これでは意味が分からないかもしれない。以上の文をもう一度、読み返してほしい。

 僕もその瞬間は気付かなかったが、もの凄い事実がそこにある・・。

<つづく>

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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死神役オーディション(7)5分後 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]


 スタッフルームで打ち合わせをしていると、小川プロデュサーが顔を出す。

 「監督。準備できましたけど?」

 再び、応接室へ。先の俳優さんはすでに立っていた。

 先に話していたときは違い、すでに悪の空気を発し、彼のいる空間がすでに魔の世界となっているかのようだ・・。

死神3.jpg

 これから死神が登場する「ある一場面」を演じる。

 が、それがどのシーンなのか?

 の説明はない。当然、台詞はなく。表情も評価には関係ない。「全ては動きだけで、表現できるかどうか?」にかかっている。

 「では、お願いします・・」

 僕の言葉を聞くと、彼は呟く。

 「行きます・・」

 と言って、後ろ向きに立つ。

 これ以下の記述。注意深く読んでもらいたい・・・。

<つづく>

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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死神オーディション(6)テストと準備の繰り返し 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]

 撮影中は、机の上では分からないトラブルが続出。演出、撮影、照明のむずかしさも分かる。

 『ストロベリーフィールズ』では和歌山県の田辺という町が舞台。

 そこに死神が似合うか? 映えるか? の問題もある。そこでまだ製作費が集まる前。撮影の1年前にテストした。
 
 今回のカメラマン・三本木さんに田辺まで行くお願い・・。

 ギャラも出せないのに、また快く応じてくれた。
 
 そして、いつも泊めて頂く、平の家さんの若旦那に(僕が)黒のシーツで作った衣裳を着てもらって、町のあちこちで撮影した。

死神2.jpg


 ここしばらく書いている『死神』シリーズのエピソード。

 添えてある白黒写真は全て、その若旦那が演じてくれた死神である。(今回のものも!)
 
 海、山、坂道、畑、住宅街、河原で、どんなふうに見えるかテスト撮影したときのものだ。

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 若旦那は背も高く、体格もいい。

 が、顔が見えなくても、動きで「優しさ」が感じられる。影のように見える死神も、演じる人の人柄がにじみ出る事が分かる。

 そうやって、何度もテスト!

 あとは死神を演じる俳優さんを見つけるだけ、となったのである・・。

<つづく>

*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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死神役・オーディション(5)会議室で映画は作れない 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]

 死神は単なる悪役ではない。そのことは散々書いてきた。

 今回の映画『ストロベリーフィールズ』の世界を、成り立たす重要な存在。

 死神がダメだと、全てが壊れてしまい、感動も伝えることもできない。

死神1.jpg

 黒澤組のスタッフの話。

 テレビドラマの時代劇でこう言われた。

 「黒澤映画のような、迫力ある馬の走りを撮りたい!」

 そのスタッフさん。激怒したそうだ。

 「馬ひとつに黒澤さんが、どれだけの年月をかけ勉強し、どう撮れば迫力ある走りが撮れるか? 

 助監督時代から研究してきたんだ。それを安易にテレビで、真似できる訳がないだろう!」

 その通り。何事もいきなりはできない。

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 死神も同じ。『ストロベリーフィールズ』のシナリオを書いたあと。ホラードラマを監督するチャンスがあった。

 その原作の1本に『死神』という話があり、それを選ぶ。前哨戦である。

 ところが、あの西洋風の死神を成立させることは、本当に大変。衣裳を見つけるだけで難航。

 いろいろと探してもらって、最も近い中世ヨーロッパの宗教関係の衣裳を発見。

 「あとは簡単だ!」

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 と思えたが、実際にそれを着て俳優さんに動いてもらうと、いろんな問題が見つかる・・・。

 机の上で考えた通りにはいかない。

 「会議室で考えていては、映画は作れない」

 と痛感した!

<つづく>
 
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!


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タグ:黒澤明
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死神役オーディション(4)判断基準 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]


 通常、オーディションというのは、シナリオを渡し、その人が候補となっている役の台詞を読んでもらう。

 その読み方によって「演技力があり、役が合っているかどうか?」を確かめる。

 台詞を読む顔つきや、表情。ちょっとしたリアクションも演技力を確認する材料となる。

 「日頃は2枚目だが、怒ると怖い顔になるな・・」

 「人を突き離すような、冷たいまなざしがいいな・・・」

 とか、そういった点を総合的に判断して、出演依頼をするか? やめるか? 決定する。
 
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 では、今回の場合はどうか? 

 死神さんは顔が写らない。

 「怖い顔かどうか?」「目が鋭いか?」「表情がどうか?」

 それは判断材料にはならない。

 また、台詞もないので、読み方で決めることもできない。

 つまり、表情でなく、台詞でもなく、目つきでもなく、衣裳もメイクもなしに、死神らしさを表現し、どのシーンを演じたか? を伝えねばならないのだ。

 これはレスラーが手錠、足錠をしてリングに上がり、戦うのと同じである・・。

<つづく>
 
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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死神役・オーディション(3)ザ・役者! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]


 その俳優さんは、沈黙し、考え始めた。急に顔付きが変わる。

 それまでは初対面で、他のスタッフにも気を使いながら話していた。

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 それが日常の仮面を突如、脱ぎ捨てて、いつものザ・役者の顔を見せたように思えた。

 その気迫。その集中力。この人は出来る・・・。

 空手の達人は日頃、さして強そうに見なくても、空手着を着ると全く雰囲気が変わる。

 剣の達人は竹刀を握ると殺気が渦巻く。

 ギターリスだってドラマーだって同じ、まだ演奏していないのに、この人は凄いと分かる。 俳優さんは言う。

 「5分ほど、時間もらえませんか?」

 僕は席を外し、スタッフルームに行って、中断していた打ち合わせを再開する。

 クランクインが近づいて来ると監督は、いくつもの仕事を同時にこなさねばならず、回線がショートしそうになる。
 
 ここで先ほどの条件を、もう一度確認しておく。


  <つづく>
 
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!

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