死神役オーディション(2)顔なし、台詞なし、 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
そして、確かめておかねばならないのは、あの2つのこと。
「台詞がない」「顔が写らない」
この2つは俳優にとって、本当に辛いこと。それでも本当にOKか?
事前にはそう聞いていても、実際に俳優さんに会って聞くと「聞いてないよ!」ということがある。が、その方は大きく頷く。
「はい。全然こだわりません。顔が出なくても、台詞がなくても平気です。むしろ、その中で、表現することは挑戦であり、自分が追求するテーマです!」
ザ・役者だ!! 嬉しくなり、超大変なお願いした。
「シナリオの中のどのシーンでもいいので、死神の場面を演じてもらえませんか?」
でも、台詞がないし、表情を作ることもできない。さらに・・・。
「どのシーンを演じたか?は、言わないで下さい!」
と付け加えた・・・。(つづく)
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!
死神役・オーディション(1)「毛利元就」の忍者 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
見るからの背が高く、存在感がある。プロフィールの写真より、ずっと力強く、迫力もある。
「普通の人じゃない。何か邪悪なエネルギーを放出している・・」
という感じ。 でも、まさに僕が望んでいた条件である。衣裳を着なければ怪しい感じがでないのでは弱いのだ。早速、お話を伺う。
状況劇場時代の話。ちょうど、根津甚八さんが辞めたあとで、小林薫さんが活躍するころに在籍されたとのこと。佐野史郎さん。六平直政さんとも同じ頃。
そして退団後は、1人芝居を続けながら、NHKの大河ドラマ「毛利元就」に出演。ほとんど台詞のない忍者の役を演じたと聞く・・・・。
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!
死神さんを探せ!(6)劇団・唐組!!! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
ワクワクしていた・・・・。
そんな素敵な俳優さんがいるなんて! さらに、小川Pは言う。
「電話で先方と話していると、太田監督が要望していたことと同じことを、何も言わないのに、バンバン話してくれるんですよ!
ただ、やはり、元・劇団の人だし、顔を出さないというのはダメかな?
そう思って聞いてみると、全然問題ない!て言うんですよ。1度、来てもらいましょうか?」
ぜひ、ぜひ、ぜひ!今すぐ会いたい!
こちらから会いに行きたい!
と思いながら、プロフィールを見る。
写真を見る限りでは、まじめそうな方。
40代。背も高い。何より状況劇場(現・唐組)出身というのがいい!
その後、何人か背の高い俳優さんも候補に上がる。
が、先の方がどうも気になる。話を聞いただけでもう最高。何より志しが素晴らしい!!!!
そして数日後、死神候補の俳優さんが、事務所にやって来た!
(つづきは、またすぐ!)
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!
死神さんを探せ!(5)状況劇場! 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
ラインP(プロデュサー)の小川さん。笑顔でこう言う。
「監督! 死神役候補のいい俳優。見つかりましたよ! 元・状況劇場の役者さんです!」
なにーーーーーーーー!状況劇場ーーー! 僕の大好きな劇団だ!
天井桟敷は考えていたのに、なぜそちらを思い出さなかったのか!
数ヶ月前にも、公演を見たばかりである。小川さんの説明が続く。
「その人。今は退団して1人芝居とかをしているそうなんですが、背が高く、奇妙な役にチャンンジするの、好きなんだそうです。
NHKの大河ドラマも『毛利元就』とかに出演しているんですが、忍者の役で台詞なし。普通なら嫌がるんです。
が、そういう役に挑戦するのが、ライフワークなんだそうです・・・」
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!
死神さんを探せ!(4)前衛芝居? 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
ところが、その手の方々はさまざまなスケジュールが入っていて、3週間近くの撮影に参加できる人がいない。
仕事がなくても、ヨーロッパ公演のためにアルバイトして、お金をためているという。
休めないので、「とても興味はあるんだけど・・」と断る人もいた。
どうすればいいのか?
考えて考えて、前衛芝居をする劇団を思いつく。昔でいえば寺山修司が主催した天井桟敷のような。
そんな劇団員であれば、怪しい芝居ができるのではないか?
ライン・プロデュサーも小川さんも、同じ考えだった。
彼はスタッフ内で、最も「ストロベリーフィールズ」の世界観やテーマを理解してくれている人。死神さん探しでは、特に助けられている。
その彼が1枚のプロフィールを差し出し、ニヤリと笑った・・・。
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!
死神さんを探せ!(3)舞踏家? 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
次に考えたのが、舞踏家。
前衛の舞踏をやっているような人たち。実は死神のイメージの元となったのは、前衛舞踏家の田中泯さんである。
もう、20年以上前になるが、京都・延暦寺の僧侶によるお経をバックに、田中さんが踊るというイベントがあった。
その撮影を担当させてもらったのだが、素晴らしかった。
まるで悪魔と神の戦い。
30分に渡って、打ち合わせなしに踊る田中泯。数十人の僧侶たちによるお経の独唱。
歌舞伎でもない、狂言でもない、観客を圧倒する神がかりな力が溢れる。
和洋の違いがあるが、ベルイマンの『第7の封印』がダブる。
その田中さんのイメージが死神のベースとなった。(その後、田中泯さんは山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』に出演)
そんな感じを持つ舞踏家にお願いしたいと考える。演じるよりも、「舞う」に近い動きがほしい・・・。
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!
死神さんを探せ!(2)巨体の俳優? 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
そこで体が大きい俳優さんを探す。これなら、演技の方もOKだ。ところが、また別の問題が出て来た。
「死神の顔は見せない」という設定。台詞もない。それにより不気味さを演出する。が、その2つは俳優にとって、凄く淋しいものなのだ。
台詞があるからこそ演じがいがある。顔が見えるからこそ、自分が演じていることが観客に分かる。台詞が1行削られるだけでも、俳優はショックを受ける。とても大切なもの。
顔が映るのも同じ。俳優の「やりがい」を2つとも奪われるのが死神役。
何人かの俳優からノーと言われる。中には「顔が見えるならやってもいい」という人もいたが、もし、死神の顔が見えるとしたら、高貴さと力強さが必要。
その体の大きな俳優さんは、かなりイメージが違うので断る。どんどんと候補者が消えて行く・・・。
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!
死神さんを探せ!(1)プロレスラー? 2005/9/5 [第十五章 死神を探せ!篇]
いよいよ、キャスティング大詰め。だが、難しいのが死神役。
映画「ストロベリーフィールズ」は、事故で死んだ高校生マキ(谷村美月)、理沙(芳賀優里亜)、美香(東亜優)の3人が幽霊になって、この世に戻ってくる物語。
だが、タイムリミットを過ぎると死神が迎えにきて、あの世の連れて行かれる。その死神を演じる俳優を探している。
単に怖いということだけではなく、実在しないキャラを実在させるための「リアリティ」も必要。そのための条件を考えた・・。
まず、背が高いこと。大きさによる圧倒観を出したい。そこで元・プロレスラーを考えた。
が、問題に突き当たる。レスラーは確かに大きいし、強そうに見える。肉体的な圧倒感はあるが、やはりレスラーを感じさせてしまう・・・・。
そこに立っているだけで格闘家。神秘性や神がかりを感じさせることは難しい・・。
また、彼らはアクションは得意だが、演技が苦手。死神は台詞がないので、ちょっとした「動き」や「リアクション」で意思を表示する。
その種の経験がないレスラーに、高度な意思表現を求めるのは厳しいものがあった・・・。
<つづく>
*映画「ストロベリーフィールズ」クランクインまで、あと12日!