序章/2001年春・戦いの呼び声 [第1章 挑戦スタート篇]
映画「ストロベリーフィールズ」。
僕が脚本、監督を担当する初めての劇場用映画だ。
でも、製作費も集まっていないし、制作会社も決まっていない。
スタッフも俳優も集まってはない・・・。ただ、ロケ地だけは決めている。
わが古里、和歌山県田辺市である・・・。
奈良、京都のような歴史のある街ではないけれど、
狭い路地に板塀、瓦屋根の古い日本家屋が続く、美しい町。田辺銀座、屋敷町、扇ヶ浜・・。
だが、それがいかに素晴らしく、美しい場所であるかを知ったのは、
アメリカの南カルフォルニア大学・映画科に留学したときのこと。
ニューヨークやロサンゼルスにはない、日本人の「優しさ」や「懐かしさ」があることを知る。
いつか故郷・田辺で映画を撮りたい・・。それが僕のテーマになった。
帰国後、何年かかかり監督となった。
といっても、超低予算の深夜ドラマやVシネマばかり。業界最悪と言われる会社ばかりで仕事をした。
「感動的な作品を作ろう」と誰も思っていない。頑張れば頑張るほど、借金が増える。
「あいつはギャラが安くても、手抜きしない・・・」
そう思われて、よりキツく、より安く、より酷い仕事が来るようになった。
「一体、僕は何をしているのか・・・・」
葛藤の日々が続く・・。これが夢に見た監督業か?
夢を売る仕事なのか? 悩んだ末に、決心する・・。
「どうせ厳しい仕事をするなら、本当に自分がやりたい作品を作ろう!」
依頼される仕事は全て断り、執筆。
前々から考えていた物語をシナリオにした。
タイトルは「ストロベリーフィールズ」。青春ファンタジーである。
ロケ地はもちろん、田辺。
しかし、大きな壁が次々に立ちはだかった・・・。
(つづく)