死神・初登場シーン撮影(4)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
今夜のシーンを撮影する高山寺の階段。
あることに気づいた。
すぐそばにある階段の方が、よりよくはないか?
あちらの方がいい絵が撮れるのではないか?
散々ロケハンをしていたのに、今さらながら迷いが生じた・・。
確かに散々ロケハンはした。
が、高山寺を決めたのは、かなり最後の時期。
他の場所に比べて、かけた時間が少なかったこと。
思い出した・・・。
(つづく)
死神・初登場シーン撮影(2)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
死神・初登場シーン撮影(1)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
高山寺は会津川のそばにある。
田辺市で最も大きなお寺のひとつ。
学者の南方熊楠、合気道の創始者・植草盛平らの墓もある。
(高山寺の写真と解説=>http://t-ota.blog.so-net.ne.jp/2009-01-16-2)
駐車場にロケバスや機材車を止めて、ロケ現場に機材を運ぶ。
ナイター(夜間撮影)なので、多量の照明機材が必要。
照明部は3人。重いライトを降ろし、運ぶだけでも大変。時間がかかる。
(つづく)
死神はアナログで!(9-終)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
それを実践する上で大切なのは、演じてくれる俳優。
探すのが大変だった。
その話は以下のチャプターに詳しく書いている。
死神さんを探せ!編=>http://t-ota.blog.so-net.ne.jp/2008-02-08-4
こうして、僕が毎回欠かさずに見ている劇団・唐組。
その前進である状況劇場出身の俳優・奈佐健臣さんが決まる。
先の美香(東亜優)が連れ去れるシーンでは、人間とは思えない存在感を発揮してくれた。
その死神の初登場シーン。今夜の撮影だ。
(つづく)
死神はアナログで!(8)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
死神はアナログで!(7)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
どの作品もCGどころか、VFXは一切使わず、生の人間が演じている。
「幕末純情伝」に至っては、セットさえ使っていない。
そこから感じたのは、今の時代に一番感動するのは、
人と人との熱い芝居ではないか?
それなら今回の映画「ストロベリーフィールズ」でも、人に芝居をさせよう。
CGを使わず、死神は俳優に演じてもらう。
そういう発想だった。
(つづく)
死神はアナログで!(6)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
もうひとつ。ここ数年感じていることだが、
デジタルよりアナログの方が心に伝わるということ。
デジタル技術のCGで、物凄い怪物を描くハリウッド映画。
見た目は本当にすごい!!
ただ、それら映画より、舞台演劇の方が感動することが多いのだ。
劇団・新感線の「阿修羅城の瞳」「アテルイ」本当に凄かった。
キャラメルボックスの「ブリザードミュージック」「流れ星はいつも一人」等。泣きながら見た。
つかこうへいの「幕末純情伝」(広末涼子、筧利夫)理由が分からない感動がこみ上げた。
そして毎公演必ず見ている唐組。この撮影が始まる直前の「紙芝居の絵の町で」も心が震えた。
(つづく)
死神はアナログで!(5)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
また、それを見送る夏美やマキたちも、1人芝居する相手役を見れば
「悲しい・・・」というより、いない相手と格闘する姿が、「こっけい」に見えるのではないか?
ホラー映画。映画館で見ると怖いシーンも、現場では大爆笑ということがある。
多感な10代。現場で笑わせてしまうと、集中力を失い、芝居レベルも下がることが多い。
それなら、俳優に死神を演じてもらい、実際に少女たちを連れ去る。
そのことで悲しみをリアルに、俳優たちに感じてもらう。
それによって芝居に集中してもらおうと考えたのだ。
(つづく)
死神はアナログで!(4)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
単にいるはずのないCGキャラと、会話するだけの芝居ならいい。
が、今回の死神は少女たちを連れ去る。
その「悲しさ」が映画としての見せ場。
そんな大切な場面。10代の女優が死神がいると想像して、腕をつかまれた演技をして
「行きたくない!」と叫ぶのは、無理があると考えた。
演劇経験の少ない子たちが、実際にないものと対応しながら、覚えた台詞をいい、芝居をするのは 厳しい。
(つづく)
死神はアナログで!(3)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
同じように、その物語を描く上で最良の方法論を選ぶ必要がある。
だとしたら、今回の死神はどう表現するべきか? 考えた。
CG使用も考えた。実際にありえないもの(怪物、怪獣等)をリアルに描くには効果を発揮する。
だが、撮影現場で問題があるのだ・・・。
CGで描くキャラクターは、撮影のあとにコンピューターによって作られ、映像に書き込まれる。
つまり、撮影現場で俳優は実際にいない怪物と、芝居をせねばならない。
そこに誰かがいると想定して、一人で会話したり、戦ったりするのだ・・・。
(つづく)
死神はアナログで!(2)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
「予算がないから、死神をCGにできないんだろう?」
という映画人も何人かいた。
でも、その指摘はおかしい。なぜ、CGありきで発想するのか?
確かに最近の映画、怪物をCGで描くことが多い。
だからといって、猫も杓子もCG。そんなのは変!
その怪物を描くに一番ふさわしい手法は何か?を考えた上でCGを選ぶのならいい。
が、最近の映画は「CG以外は駄目」という感覚に陥っている。思い出してほしい。
CGで怪獣を描いたアメリカ版「ゴジラ」より、
ぬいぐるみで撮影した日本版「ゴジラ」の方が、圧倒的に素晴らしかったではないか?
(つづく)
死神はアナログで!(1)2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
死神のことで思い出すこと。
多くの映画人。こう言った。
「死神はCGで描くんだろ?」
CG、コンピューターグラフィックスである。
「ロード・オブ・ザ・リング」「ハリーポッター」等、CGを使ってリアルなクリーチャー(怪物)を表現していた。
ハリウッド映画ではなく、日本映画でもCGを使った作品。増えてきている。
高額な予算がなくても、技術の進歩で可能になったのだ。
しかし、今回の「ストロベリーフィールズ」では、CGは使わない。
シナリオ段階から、そう宣言していた。
(つづく)
シーン14の解説(5) 死神テスト 2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
死神の撮影テストも何度も行った。
「死神は田辺市の風景とマッチするか?」
「死神は存在感がもてるか?」
「死神はどんなふうに写るか?」
「死神の動きは、どうあるべきか?」
さまざまな角度からテスト。それを撮影。検討した。
その結果。死神はカメラ位置。角度。さらに光が大きく影響することがわかる。
しかし、照明のテストまではできなかった。
それを今夜、実践するのである・・。
(つづく)
シーン14の解説(4)ホラードラマ 2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
実は今回の「ストロベリー」の前に、別の作品でも死神には挑戦している。
「ストロベリー」の準備をしているときに、手がけた作品。
原作の中から好きなエピソードを選び、ドラマ化できるというホラー番組の仕事だった。
その中に、ちょうど「死神」というのがあった。
それも西洋風の死神。僕のイメージ通りだ。
それを選び、シナリオにし、監督した。
実際にやってみると、いろいろと問題があることが分かる。
その経験を生かし、よりリアルな死神を表現するため。
テストを始めた・・。
(つづく)
シーン14の解説(3)リアリティ 2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
そんな意味で、大切なのは「ストロベリー」は「ファンタジー」であり
「ホラー」や「コメディ」ではないということ。
その観点で死神を表現せねばならない。
これが、シーン14の最も大切な部分である。
死神のリアリティを失っては、コメディになってしまうし、
「仮面ライダー」の怪人に見えては、子供向きの作品だと思われる。
そのため、衣装部、メイク部とは早い段階から打ち合わせ。
死神の衣装は、
在りものを借りてきたのではない。
素材から選び作ってもらった。
(つづく)
シーン14の解説(2)ファンタジー 2005・9・22 [撮影6日目(十五)死神の意味]
今回の映画「ストロベリーフィールズ」は青春ファンタジー。
ファンタジーといっても、妖精や恐竜が出てくるヒロイック・ファンタジーではない。
日本ではSFやファンタジーというのが、非常に根付きにくかったので
理解されにくいが、ここが大切なところである。
シナリオを書いた段階では、35歳以上の男性はほどんど理解できなかった。
女性は漫画家・大島弓子の作品を読んでいた人たちが多く、35歳以上でも
理解してくれた。
そして若い人になるほど、理解者は多くなった。
(つづく)