メインロケハン終了(下)美しい田辺の風景 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
そしてスタッフにも、晴れた本当に美しい「田辺の風景」を見てほしいと思っていた。
何より、天神崎の夕陽はナマで見てほしかった。雲のかからない、真っ赤な太陽が視界いっぱいに広がる海に沈むのを見てほしかった。
それが果たせたのも嬉しい。満足いく、ロケハンとなる。
これで帰京。
ではなく、行くところがある。東京に戻る途中に2カ所、大切な寄り道をする。
ひとつ目は、映画「ストロベリーフィールズ」の主人公・いちご四人娘の最後の1人。美香役のオーディション。
その後、マキ役の、あの子と初めて対面する!
期待の天才少女・谷村美月である!
<つづく>
(「ロケ地田辺市篇」終了。次回から「美香役を探せ!篇」に突入だ!)
メインロケハン終了(上)懐かしい田辺の風景 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
本日で映画「ストロベリーフィールズ」田辺ロケハン、終了。
天気にも恵まれ、予定した場所を全てまわることができた。
通常、ロケハンでは雨が振っても時間がないと、監督は晴れを想像して撮影場所を決定せねばならないこともある。
製作部が「この場所。晴れてると景色がいいんですよ!」とか言っても、雨で視界ゼロだと想像もできない。だが、時間がないので、監督はそれを信じてOKとかいうこともある。
が、今回は僕自身が5年前から自腹でロケハン。それぞれのロケ地が晴れ、雨、雲り。という天気というだけでなく、春、夏、秋、冬。さらには朝、昼、晩と、あらゆる時期、季節、時間帯をチェックしている。
僕のみならず、カメラマンのSさんも全て把握している。1年前から、何度も田辺へ来てもらって、春、夏、秋、冬を全て見てもらった。
業界の友人には「執念」とか、「やり過ぎ」とか言われる。が、「晴れを想像して、ロケ現場決定・・」なんてことは、やらずに済んだ!
素晴らしい映画を作るための、新たな1歩。
<つづく>
ロケハンの意味(下)映画は現場で作ってんだ! 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
そんな「踊る!大捜査線」の名台詞。映画の現場でよく聞く。
ロケハンに関しても、そのスタッフの言う通り。単にロケ地を見てまわるだけではない。監督とスタッフの重要なコミニュケーションの場。夕食を食べるときでも、意思疎通をする重要な機会。
東京に戻れば監督には、さまざまな作業が待っている。スタッフとじっくり話せる時間は余りない。次、会うのは撮影ということもある。
ロケハンで、宿を共にし、食事をし、ロケ地を巡ることは、互いのカラーや意識を理解し合うための、貴重な時間。
さらに、今回の「ストロベリーフィールズ」では「お仕事」としての撮影ではなく、
「まず、スタッフに町を好きになってもらう!」
ところからスタートしている。
場所の由来や歴史。思いを語りながら、ロケ地を紹介した。もし、その話のように会議室から何度も電話をかけて来て、ロケハンを中断させるような奴がいたら・・。
目先のことしか考えず、自分の趣味を押し付けて来るPがいたら・・・。
それは映画を潰そうとするのと、同じ。
作品クオリティを下げようとするのと、同じ・・・。
問題ある日本映画が多いのは、そのせい。残念だが映画界では、その種のバカなPがよくいる。現場が素敵な作品を作ろうと努力しても、上にいるPがそれを邪魔する。
今回の作品にも、そんな人がいる!とは言わないが、そんな奴が映画スタッフの邪魔をし続ける。
映画作りも、警察機構も、上がバカだと、下が苦労する。映画は会議室では作れない。現場で作るものなのだ。
<つづく>
ロケハンの意味(中)映画は会議室で作ってんじゃない!2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
思い出すだけでも、腹が立つという感じ。そのスタッフは話を続ける。
「そのPは現場の邪魔をしていることが、分かってねえんだよ。映画作りは会議室でやるものだと思ってやがる!
監督との話を聞いてると、シナリオの問題点というのも、自分の趣味を押し付けたいだけ。そんなことをロケハン中に電話してくるな。東京に帰ってから話せてんだよ!
Pである自分が言えば、スタッフは何でもいうこと聞くって。勘違いしてやがるタイプ。よくいるんだよぉ。若造のくせに、デカイ顔して命令する奴がぁ。
ロケハンの妨げになってることも、分かってねえ・・。映画は現場で作ってんだょ! 監督の携帯を奪って『会議室から命令してくるな!』って言ってやろうか?と思ったよ。そんな奴が、いつも現場を邪魔して、映画をダメにするんだよなぁ・・・」
皆で袋にしてやろうか? と相談さえしたという。少々、荒っぽいが、彼は正しい。映画は現場で作るもの・・・。
「映画は会議室にいる奴から、あれこれ指図されてやるもんじゃねえんだよ!」
何だか、聞いたことのあるセリフ・・。
<つづく>
ロケハンの意味(上)スタッフの怒り! 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
以前にも書いたが、映画というと一般の人はどうしても「撮影」が「映画作りの全て」と思いがち。
だが、「撮影」も長い長い映画作りの「一部」でしかない。今回のようにロケハンは俳優が参加せず、派手さはない。が、時間をかけしっかり行うことが、素晴らしい映画を作る上でとても大切。
「そのロケ地で、どのような撮影を行うか?」
監督からスタッフに伝える。「機材、美術、小道具、大道具、他に何を用意すればいいか?」各自、考える。
とても、とても重要なプロレス。なのに疎かにされることが、しばしばある。参加したベテラン・スタッフが経験談を話してくれた。
「以前の作品なんだけど・・地方でロケハンをしていると、東京にいるプロデュサーが監督に電話してきて、30分も、40分も話し続けるんだよ!
監督が忙しいからと電話を切っても、またすぐ掛けて来る。そのたびに1時間近くもロケハンが中断。スタッフは電話が終わるのを待たされ、仕事にならない・・。
シナリオがよくない、今すぐに直せ! と言ってるみたいでさあ。監督はシナリオも担当しているんだけど。旅館へ帰って書き直せ。ロケハンはスタッフだけに、やらせろとか言ってる。
全然、分かってねえんだよ! ロケハンの大切さがよぉ!」
スタッフの憤りは続く・・。
<つづく>
ロケハン/梅工場(下) 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
ロケハンでは、いつも応援頂いている中田専務さん(当時、現・社長)が自ら工場を案内して下さった。感謝。
倉庫からの移動中。ロケ地である田辺感を伝えるための「梅干作戦」が好評、というお話をする。
「梅干の御陰でスタッフは皆、田辺の町を感じてくれたようです。俳優さんたちにも食べてもらおうと思うんです!」
そう話していると、中田さん。いつもの優しい笑顔でこう言ってくれた。
「だったら、俳優さんへの梅干。全部プレゼントさせてもらいますよ!」
高価な梅干を大量に頂いた。毎回、自腹で買って、皆に配っていたので僕個人としても大助かり。
いや、そんなことより、頂いた梅干の御陰で俳優たちは「田辺感」を摘めるはずだ。
そして今回の映画「ストロベリーフィールズ」で、素晴らしい演技を見せてくれるはず!
中田さん。感謝しております!
<つづく>
*御陰さまで、この「映画ストロベリーフィールズの製作日誌」のアクセス総数が昨日、8万件を越えました。応援、ありがとうございます!*
ロケハン/梅干工場(上) 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
映画「ストロベリーフィールズ」メインロケハンの話に戻る。本日は前回お話したばかり中田食品さんの工場。
日本でもナンバー1の梅干会社だ。漬け物業界でも、トップクラス。
梅工場見学から何度もお邪魔しているが、今回はスタッフを連れての訪問。まずは上秋津にある旧工場。
ここはすでに使われていないが、昭和40年代の趣きが残る素敵な建物。
新工場は巨大でモダンな建物。おまけにハイテクで素晴らしいのだが、「ストロベリーフィールズ」の時代設定は昭和40年代。表のシーンはこちらで撮影させてもらう。
そのまま移動。車で高速を走り、新工場へ。
広大な敷地の中にある新工場は、まるでシリコンバレーのコンピュターファクトリー。その奥にある巨大な梅干倉庫で、撮影させて頂く予定。
まるで映画「レイダース失われたアーク」のラストシーンに出てくるような、大きな倉庫。映像的でとてもいい感じ。
ここで、いちご四人娘の一人。美香の父が働いているという設定。幽霊になった美香が訪ねて来るが、父はそれに気付かない。何も話せない親子の再会。という場面を撮影する。
天井まで積み上げられたタンクには、梅干が漬けられている。その香りが倉庫中に漂う。そこで撮影できることは、地元感、リアリティ、臨場感が抜群に出る。
今から撮影が楽しみ!
<つづく>
*御陰さまで、この「映画ストロベリーフィールズの製作日誌」のアクセス総数が本日、8万件を越えました。応援、ありがとうございます!*
梅干の勉強(4)梅干食べてシナリオ執筆! 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
梅干作りを実際に見せてもらったことで、梅干の奥深さを知る。それぞれの梅干の特長を理解。職人さんの愛情を感じた・・。
それを踏まえてシナリオ書くことで、リアリティが生まれ、物語にも奥行きができるはずだ・・。
中田食品さんで作る梅干「本造り」を食べて、もの凄いしょっぱさ!を実感。
梅干ひとつで、どんぶり飯が一杯食べられることを理解。その味こそが昔ながらの梅干であり、日本人の知恵がある。
それを作るマキのお父さんとは、どういう人か?
僕の中で「ストロベリーフィールズ」の世界観が、さらに明確になった。そうやって梅干を食べながら、シナリオをリライトして行った・・・。
<つづく>
梅干の勉強(3)梅干と梅酒の生活から始める 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
見学を終えてから、工場内にある売店を訪れる。中田食品さんが出している梅干全種類と梅酒を買った。毎日食べて、それぞれの違いを勉強だ。
酒を飲むときは、焼酎の梅割り。そして梅酒。「樽」というブランドが最高。まるで梅干のVSOPだ。
そこからマキと鉄男が、隠れて梅酒を飲んだエピソードを考えた。
そうやって毎日、梅干と接していると、マキや美香の父が、身近に感じられて来る。その上で、「ストロベリーフィールズ」のシナリオを直す・・。
映画で具体的に、梅干を説明するシーンはない。でも、それを知って書くのと、知らないで書くでは、大きく違ってくる!
(つづく)
梅干の勉強(2)梅干工場見学! 2005/9/4 [第十一章 ロケ地・田辺市篇]
お邪魔した中田食品の新工場には、見学コースがある。
2階の廊下から大きな窓をのぞくと、1階にある作業施設がよく見えるようになっていた。
梅を洗う過程、梅を漬ける過程、梅に味をつける過程。
天皇陛下も見学されたという、大掛かりな工場だ。そこで小さな梅干一粒には、多くの職人さんたちの「苦労」と「努力」が込められていたことを知る。
何より案内してくれたKさんの、梅に対する愛情の深さを強く感じた。梅干を説明する、その言葉の一つひとつに優しさがあふれている。
まるで自分の娘のことを語るようで、出荷は嫁にやるかのようだ。
映画も子供を生み、育てて行くのに似た作業。そこに必要なのは、物語の題材への、撮影する町への、出演する俳優への愛情。
「映画作り」も「梅干作り」も同じだと痛感する・・。
<つづく>