2002年9月28日Ⅲ 過去の価値観 [第2章 東京・営業篇]
でも、なんで、そんなことが言い訳として通用するのか?
「あのブレイク中の女優が主演で、コケたんだから仕方がない・・」
「100万部売れた小説が原作で、不入りならしょうがない・・」
それは映画界の古い体質が関係する。その昔、映画作りはスターシステムだった。片岡千恵蔵や市川雷蔵が主演ならば、高倉健や勝新太郎。
石原裕次郎や赤木圭一郎の映画なら・・・と、観客はスターを見に映画館を訪れた。作品の中身より、まずスターだったのである。
が、もう20数年ほど前から、いくら有名な俳優が出演しても映画はヒットしなくなっていた。観客もスターを見るのではなく、作品の中身で映画見るようになったのである。
なのに映画界の人たちは、未だに過去の価値観から抜けられない。だから、企画を持ち込むと必ずこう言われる。
「有名タレントのスケジュールでも押さえ来たら、考えてやるよ?」
「今旬の俳優Tを口説いたら、1億出してやる!」
映画界のPがいう決まり台詞である。面白い企画でヒットを飛ばそうと思う人は限りなく少ない。
しかし、そもそも有名俳優のスケジュールを押さえるのはPの仕事。それを企画を持ち込んで来た監督に言ってどうするのだ? 社内で企画を通すのがPの力量。それを外部の人間に頼ってどうする?
でも、それが今のサラリーマンPたちの姿。皆、自己保身が第一。そんな人たちを相手に、ベストセラー原作でもなく、有名女優の出演も決まっていない「ストロベリーフィールズ」の企画を通すことは限りなく不可能に近いと思えて来た。
業界の友人たちが「どうせ、無理だよ」という理由も分かってきた。けど、負けない! 必ず形にして見せる! また、本日より営業を始める! (つづく)