2003年3月23日 「三毛猫ホームズ」Ⅱ [第4章 尾道ロケハン篇]
それがスタジオで撮影をしたときのこと。監督からの指示はすでに出てスタッフがセットでカメラや照明を準備していた。
大林監督は邪魔にならないように、セットの隅にあるディレクターズ・チェアに座り、シナリオを読んでおられた。
セット内はライトが灯され明るいが、隅の方には灯りがなく薄明かりの中で監督は文字を追っていた。
これでは目が悪くなる!と、メイキング班・七つ道具のひとつ。ペンライトを取り出し、後から大林監督のシナリオを照らした。
監督は振り向くと笑顔で「ありがとう」と言い、シナリオを読み続ける。しばらくして、助監督が準備ができたことを告げに来る。
と、大林監督は立ち上がり、もう一度僕に「ありがとう」と言ってセットに向った・・・。
その「ありがとう」という言葉に、「君は暗闇でシナリオを読んでいる僕に気付き、灯りを持って来てくれたんだね? 気遣ってくれてありがとう・・」というニアンスを感じた・・・。(つづく)